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伝説の勇者じゃないのに王様に魔王倒せって言われた  作者: 伊藤 黒犬
第一部 選ばれし魔王討伐メンバー
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07

 私の弱点と言えば。

 まあ賢者や美女と比べてしまえばほぼ全部なのだけど、一般的な基準で見れば魔力が底を尽きるのが早いことだろう。しかし魔力量と言うのは先天的に決まるものだから、こういう場合には一回の魔法に使う魔力量を減らせるようにするしかない。つまり使いまくって慣れろということだ。多分。

 知能が低いという弱点は……今は無かったことにしておこう。


 一方万能に見える賢者は

『物理攻撃を抜きにして言えば、防御が弱いことが弱点ですね』

 と言っていた。だから今日はお互いの弱点を同時に叩けるよう私が魔法攻撃して賢者が防御する形での訓練をしよう、ということになった。

 美女は特にこれと言った弱点が見当たらないので傍観席で漫画を読んでいた。

 ついでに猫はその横で睡眠不足だと言って寝てたはず。



 で、どうしてこうなった……? 


「最早ここまで来ると俺……なんか呪いでもかけられてるんじゃないか……?」

 猫はいつの間にか傍観席から引きずり出されてボロボロになっている。

 えっと、つまりこれは私か賢者がやった……と言うことだろうか。

 答えを求めるように美女の顔を見ると、彼女は親指を立てて頷いた。そうらしい。まじか、何も覚えてない。

 ていうか賢者にさっきから視線をそらされているように思うんだけど気のせいかな。

「これは一体何が……」

「あれは多分急激に魔力が減って体が驚いたんだね。普段慎重な魔女ちゃんがまるで狂戦士だったよ」

「え、私魔法使いなのに……ってそこじゃなかった。でも私の物理攻撃だけじゃこうはならないはずだよね」

「こいつが驚いて魔法放ちやがったんだよ。それも全部俺に向かって」

 猫はため息をついて賢者の方を指さした。正しくは手でさした。

 賢者はバツが悪そうに頭を抱えた。

「攻撃を受けて防戦一方なのは駄目だと叩き込まれていたもので……」

 成程、彼はやっぱり幼少期から英才教育を受けてたらしい。というかまだ視線そらされてるんだけど私本当何したんだ。




「これ、そこの冒険者一行。訓練で困ってるようじゃの」

 訓練どうしようかと考えていたら突然声をかけられた。そこに立っていたのは訓練所ではあまり見ないような……幼い女の子? 

「ガキ、親はどうしたんだ?」

 いきなり微妙に喧嘩腰な猫。

「コラ猫その言い方は無いよ、相手が子供とはいえ失礼」

「我は子供ではない! こう見えてもピチピチの十七歳じゃ」

 ほらやっぱり怒らせてしまった……いや、今のは私かもしれない。でも確かに両親はどうしたのだろうか、服装からするに貴族の娘とかだと思うけど……。

「その人エルフですね」

 後ろで賢者が呟いた。言われてみると彼女の耳は普通よりとがっている。


 ちょっと待った。エルフと言うことは……

「幼女のように見えますが大体百歳、百五十歳くらいですね」

「無礼者! おなごの年齢を予想するな!…………確かに我は百歳じゃが……」

 この子……この人随分と派手にサバ読んでた。でもその見た目で百歳はちょっとうらやましいかもしれない。しかし賢者は確かにデリカシーがなあ……

「ところでさっきの訓練見ておったぞ」

 エルフの幼女? は不意に真面目な表情になった。

 なっ……見られてたのか。まさかこの人以外にも見てた人とか居ないよね。覚えてないから何とも言えないけどなんか恥ずかしい。


「駄目駄目じゃ。あんなもの遊戯同然ではないか」

 幼女は首を振った。

「まず魔女。急性魔力欠乏を起こすほど魔力を使うでないぞ」

「やっぱり見られてたんだ……」

 急性魔力欠乏。なんか仰々しい言い方だけど医学用語か何かだろうか。

「一回一回の威力を上げることから始めた方が良い。あんな風に乱発しているだけでは何も成長せぬ」

 にしても凄い。つまりどういうことなのかはよく分からないけど、あの訓練だけでここまで分析するなんて。この人もしかして軍隊長とかそういう職に就いてる人なんじゃ……。

「そしてさっきの無礼者。魔法使いなら魔法を磨かぬか」

 次は賢者だ。

「ですが防御が弱くては攻撃を受けた際、一溜りもないと思います」

「そもそも魔法使いは防御など向いておらぬ体質が多いのじゃ。攻撃は最大の防御とも言うように、得意属性を伸ばすことが先決じゃぞ」

 賢者は少し考えてから納得したように頷いた。そうだったのか、だから私はこんなに防御が弱……いや、魔法職にしても弱すぎるか。

「それからそこの金髪の娘」

「へ、私? 見てただけだけど?」

 何故か見てただけの美女までが指さされた。

「どうも怪しいと思ったら人外の様じゃな。体に慣れておらんことがすぐわかる」

 なっ……美女は本当に人外だったのか。確かに人外じみてるとは何度も思ったし、本に載ってたどの種族にしてもおかしい所があるとは思ったけど……。

「ナ、ナナ何言ってるのおばあちゃん、私は人間ダヨー?」

「今まで隠そうとしてたならバレバレだよ美女……」

 珍しく美女が動揺している。

「おばあちゃんではない! 人間年齢で言えば三十代くらいじゃ!」

 ややこしいよ。ていうか結局それでもサバ読んでたんだ。


「と……とにかく滅茶苦茶なそち等の為に、我が特別訓練を用意してやる。感謝してついてくるがよい!」

 おばあちゃんは下を向いて顔を赤くしながら言う。




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