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伝説の勇者じゃないのに王様に魔王倒せって言われた  作者: 伊藤 黒犬
第二部 名無し
23/34

10

「痛っ」

 着地した瞬間、手に地味な痛みが走った。点滴を強引に抜いたからか。

 幸い体の感覚はかなり戻ってきている。記憶力は怪しかったけど。


 外はいつの間にか夕方になっていた。まだ昼くらいだと思ってた。

 会場は葬式中の状態そのままになっているが、人だけがいない。きっと再び誘拐犯が来ることを恐れて避難しているんだ。誰か話を聞けるような人は……

「あ、貴女って今朝頭を撃たれてた……」

 声をかけられ振り返ると、中年くらいの黒い服を着た女性が立っていた。

 あの葬式に参加してた人だ。

「すみません、今朝の誘拐犯ってどっちに向かいましたか?」

「え? えっと、確か東の方角に……火山の方かしら」

 火山の方……そういえば山を登った時ふもとに小屋があった。そこかもしれない。

「ありがとうございます」

「え、ちょっと貴女まさか向かうつもり!? まだ体は」

 おばさんの言葉を聞き終える前に再び転移魔法を唱えた。私はすっかり人の話を聞かない体質になってしまったらしい。




 小屋の裏に着陸した。

 目の前に黒猫がいる。かわいい。

「……って今そんなこと言ってる場合じゃなかった。あの子と賢者探さないと」

「お前……来るとは思ってたが。俺のこと忘れるくらいやばいのかよ」

 立ち上がると同時に足元から声がした。

 え、今の誰? 幻聴……じゃないよね、にしてははっきりしてた。

 賢者ではないよね、賢者はあんな話し方しない。声ももっと高い。

「だ、誰? もしかしてそこの黒猫?」

「よく猫が喋ったって発想になるな……。ま、正解だが」

 足元の猫は頷いた。

 やっぱり猫だったのか。最近の猫って人語話すのか……。


 猫はしばらく考え込んでから顔を上げた。

「待て俺猫じゃねえよ! 危ねえ、本物の猫としてインプットされるとこだった」

「え、猫じゃないなら一体」

「ケットシーだ。要は魔物……ここまで言ったらさすがに思い出したか?」

 思い出す? 思い出す……魔物だから……えっと、つまり

「成程、分かった。倒せってことか」

「アホ。んな奴いるか、出会って早々倒されることを望むとかMでもしないぞ」

 違うらしい。いや、違おうと何だろうと魔物だし倒した方が良いんじゃ……? 

「お前、あの白フードのガキと賢者探しに来たんだろ」

 なっ……何でそれを魔物が知ってるんだ。

「何で知ってんだ、って顔してるな。説明はめんどくさいからとりあえず杖を下ろせ」

「う、うん」

 確かに相手は魔物だけど生かしておいた方がいいかもしれない。攻撃してこないし話は通じる、第一かわいい。

「で……もしかして二人の居場所を知ってる?」

「ああ、この小屋の中だ」

 猫は前足で小屋を指した。

「小屋の中って……まさか二人とも捕まったんじゃ」

「残念だがそのまさかだな。もう二時間近く出てこないあたりその可能性が高い」

 小屋に窓は無い。中を確認しようにもここからじゃ無理だ。

 とりあえず敵……誘拐犯を倒して二人を助け出さないと。

「誘拐犯はどこにいる? きっと集団になってるはずだから水魔法とかで……」

「いや、ほとんどはあいつらが倒したから残ってないな。ただ一人ボス的な……妙に強い奴がいる。ありゃ人外だな」

 人外? つまり美女みたいな手が付けられない最強がもう一人……

「賢者が毒魔法を使ってたが効かなかったようだ。そしたら背後から伏兵が……ってわけだ。あのガキの方は俺がここに来た時にはもう気絶してたから分からないな」

「ありがとう、じゃあ行ってみる」

 毒が効かないということはアンデットだ。多分。火炎魔法とかじゃなくて毒を使うということは殺さないようにしてたのか……なんやかんや優しいな。でもアンデットということなら迷わず手が出せる。強いというのは心配だけどそれならむしろ好都合だ。

「俺はどうせ出てっても無理だからな。つかお前も危ないと思うぞ」

 しかしこの猫、見た目は可愛いのに口調と声と表情がこれだからなんか残念だ。

「確かに私の能力じゃ危険かもしれないけど……でも助けに行かないと」

「そうか。まあいざとなったらあのハイテンションな金髪娘呼びに行くから、拉致られるのだけは注意しろよ」

 あれ、美女のことも知ってる?……まあいっか。後で尋問しよう。



 一応小屋のドアを開けようと試してみた。が、予想通り鍵がかかっていた。落ちてはいなさそうだし……いや私じゃあるまいしそんな重要な鍵を落とさないか。多分例のボス的な奴が持ってるんだ。ならやっぱりまずそいつを倒さないと。


 間違いなく私が正面から出て行って敵う相手ではない。なんせ賢者の毒魔法と言ったらかなりの水圧がある。まともに食らったら気絶くらいするはずだ。それを無傷で受け止めて見せたというなら、もう燃やすか飛ばすか凍らせる以外に倒しようは無い。飛ばすは私の風魔法だと威力が足りなくて多分無理だ。

 どちらにせよ目の前から放って一度失敗したら伏兵に襲われる可能性がある。本当は失敗するべきではないけど相手が相手なだけに不安だ。とりあえず茂みに隠れて出てきたところに火炎魔法を小屋に引火しないように放ってみよう。


 しかしいつの間に私はこんな計画的な行動がとれるように……いや、全然計画的じゃなかった。無鉄砲の極みだ。頭を撃たれた回復直後に一人で再襲撃しに来るとか……。


 そんな無駄なことを考えていたら、小屋の中から黒服姿の女性が現れた。

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