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伝説の勇者じゃないのに王様に魔王倒せって言われた  作者: 伊藤 黒犬
第一部 選ばれし魔王討伐メンバー
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02

 森を抜けた先にあるこの農村は城下町に近い割には質素な作りで、木でできた家や石造りの井戸、特に牛小屋から聞こえてくる牛の声なんかを聴くと農村来たぞ、という気持ちになる。旅の商人が泊まることも多いせいか店は妙に充実していて、城下町を出たばかりの新米冒険者はまずここによることで有名だ。

 だから村名はサイショの村……村長そんな適当なことでいいのか。



 美女は武器屋を眺めている。まさかその手に取っている剣を食べないよねとなんだか心配になってきた。一方私と青年は防具屋を見ている。

「絶対おかしいです。毒薬の原材料でもあるあのキノコを食べて平気だなんて……」

 青年はさっきからそればかり言っている。ところで彼は何でずっと手にカエルを持ってるんだろう。食べないよね。あ、でも食べる人もいるって昔聞いたような気が……って私は何訳の分からない予想を立ててるんだ。


 そんなことより装備を買わないといけない。いつまでも三人そろって町人服や兵士服でいるわけにもいかないし。兵士服は悪目立ちするし町人服は戦いに向いてないから、それに美女の着ているあの服はどうも露出が多すぎて色々不安だ。何だろうあれは民族衣装なのだろうか。



 真ん中に積み上げてある黒いローブを手に取る。地味だけど派手よりマシかな。

「私はこれでいいとして……君も魔法職っぽいよね」

 服は攻撃スタイルに合わせて作られているから魔法職なら魔法使いの服、剣士なら剣士の服を買う、というのが一般的かつどれが適切とか考えなくていいから服選びが楽なのだ。

「はい。基本的に魔法を使うことが多いです。後は薬物とか」

 ヤクブツって言い方が科学者っぽいな。けど予想通り魔法職だったらしい。

「それならこのローブをもう一つ……」

「あ、でもポケットが多い方が良いのでこの探検服にします」

 青年が手に取ったのは薬草採集をする人が来ているようなとにかくポッケの多い服。動きやすさは大差なさそうだけど防火処理とかは……でも彼は私より遥かに頭良さそうだからその辺りはきっと考えてるんだろう。

 それであの美女は……聞いてみよう。


「美女さんの攻撃スタイルって…………あっ」

 やばい。ずっと脳内で美女って呼んでたからつい口でも言ってしまった。

 金髪の美女は呆気にとられた表情で私の顔を見ている。これは間違いなく変な人だと思われた。

「あ、や、あのごめんなさい、つい」

「魔女ちゃんは律儀だなあ。さん付けは要らないから美女って呼んでよ」

 そっち……? ていうか何でここまで来てまだ誰も名乗ってなかったんだろう。すっかり彼は青年呼び、私も職業名の魔女で定着しちゃってる感じだ。

「言い遅れてた。私の名前は……」

「ストップ」

 今更ながら名乗ろうと思ったら美女にストップをかけられた。

「このままの呼び方で行こう。なんかそういう秘密組織みたいで面白いし」

「ひ、秘密組織……?」

「彼は頭が良くて魔法使えるから……賢者君とかでいいよね」

 この人想像以上に突拍子もない人だ。毒キノコの一件で多分そんな感じだとは思っていたけど。先行きが何となく不安になってきた。

「そうだ。美女さ……美女の攻撃スタイルって素手とかだよね」

 人のことを面向かって美女と呼ぶのは当然ながら初めてだから違和感が凄い。

「うん。素手メインかな。でも大体の武器は使えるよ多分」

 多分ってなんだろう。ていうか大体の武器が使えるって万能すぎるよ。青年こと賢者は頭いいし、ってなんかあだ名のせいで凄い当然のこと言ってる人みたいに……。それに美女は万能とか。王様に選ばれるのも納得として、魔法がちょっと使えるのみの私は何で選ばれたのかさっぱりだ。補欠的なことか。ま、卑屈になりすぎるのもよくないしこれから強くなるしかないかな。

 と、考えながら服を二着買った。勿論自腹だ。あの軍資金で服が買えるわけがない。それに美女はまさかの一文無しだった。


 あ、そうだ

「賢者の魔法ってどんな感じか一度……」

「け、賢者……?」

 そうだ全く説明してなかった。賢者は突然の呼び名に驚いた様子で人差し指を自身に向けた。まさか自分のことか、という様子。

「説明し忘れてた。あの……金髪の美女があだ名で呼び合おうって。でもやっぱ名前の方が分かりやすいよね」

「や……このままの方が良いです。ですが賢者と呼ばれるほど賢くは無いと思います」

 賢者はまさかの賛成派だった。私の知らないところであだ名呼びブームでも起こってるのだろうか。まあ私も反対と言う訳ではないから構わないけど。あと賢者は十分頭良いと思う。平均ギリギリの私と比べるのがまず間違ってるのかもだけど。

「それで、魔法というと何魔法にしますか?」

「そうだった。えっと……じゃあ一番得意なのを」

「わかりました。ちょっと下がっててください」

 彼はいつの間にか服を買ったらしく町人服の上から採取服を雑に羽織っている。よく見たらベルトとかしっかりしてるし、あの服高そうだけど自腹で払ったのだろうか。あとその着方は動きにくいことこの上ないんじゃ……


「待った。下がってて、ってここ」

 村の中。と言い切る前に目の前に火柱が立つ。



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