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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

人形師VSマリオネット

作者: 也来

××新聞 ××年××月××日


各地で変死相次ぐ!


先月から今までに五箇所で変死の報告があった。ほとんどが怪我による失血死。しかしある者は横に真っ二つ、ある者は縦に真っ二つになっていた。詳細は遺族の意向で伏せるが、まるで巨人が人を手でちぎったようだと見た者は語る。被害者の妻A(35)さんが特別に記者に答えた。「夫が私を隠していたんです。犯人は子供でした。顔は見えませんでした。子供が何をしたかは分かりませんが夫が死ぬのを間近で見ました。お願いです。犯人を捕まえてください。」泣きながら我々にそう訴えた。現在、軍が犯人を追跡している。

「いたーい、いたーい」


少年が人形の腕をちぎる。すると少年の目の前にいた男の腕がちぎれた。


少年は今度は女の方をむく。いつの間にか少年が持っていた人形の腕が治っていた。


「いたーい、いたーい」


今度は足をちぎる。すると女の足が引き抜かれたようにちぎれた。


「いたーい、いたーい」


少年の腕が人形の胸を貫く。目の前の老人の胸にぽっかりと穴が空いた。


「いたーい、いたーい」


少年は前に進む。少年に襲いかかって来る人々のあらゆる場所をちぎって。


「やめて」


少年は声がした方を向く。一人の生気のない目をした少女が立っていた。少女は自分の身長の三分の二の大きなクマのぬいぐるみを持っている。


「君は誰?」


少女は答えない。ただ少年を見つめる。


「うふふ。ぼくを止めに来たの?僕は止まらないよ。うふふ。」


「わたしはせいぎのみかた。あなたをとめにきた」


少女が気だるそうに口を開く。するとクマのぬいぐるみが十体どこからか現れた。それは少女の身長の三、四倍はある。


「わぁすごい。君もぬいぐるみを使うんだね」


少女は答えない。少女が少年に向かって手を伸ばすと一体のクマのぬいぐるみが少年に襲いかかった。


「わぁ、いたーい、いたーい」


少年は人形の足をちぎる。クマのぬいぐるみはバランスを少し崩したがそのまま少年に手を振り下ろす。


「うわぁー、壊れないの。やだなぁ。いたーい、いたーい」


少年は人形を縦に真っ二つに割いた。同時にクマも頭から真っ二つに裂け、ワタが飛び出す。


「くまちゃ」


少女は少年に向かって再び手を振り下ろす。するとクマのぬいぐるみは今度は五体襲いかかった。少年はぬいぐるみの攻撃を避ける。少年に当たり損ねたクマの手が地面を抉った。


「怖いや。いたーい、いたーい」


少年は攻撃を避けながら次々と人形をちぎる。縦に横に真っ二つ。手足をもぎって首をちぎる。腹や胸を貫く。ワタは雪のように少年の上から降り、積もってゆく。


「あと四体。けど、操ってる人がいなくなればこれってどうなるんだろうね。いたーい、いたーい」


少年は人形の首をもぐ。するとクマのぬいぐるみの首がもげた。


「んん?おかしいなぁ。僕は君を狙ったんだけど。これって君の人形だろ?どうして?」


少女は答えない。


「まぁいいや。いたーい、いたーい」


少年は人形を真横に裂いた。少女の近くにいたクマのぬいぐるみがまた裂ける。


「んん?どういうこと?」


「わたしは なぐられたことがない」


「へー、僕は沢山殴られたよ。その分やり返したけどね。いたーい、いたーい」


クマのぬいぐるみがまた裂ける。


「わたしは けられたことがない。きられたこともない。わたしは、いたいとおもったことがない」


「羨ましい。僕は沢山痛い思いをしたよ。だからやり返すんだ。でも何となくわかったよ。君の能力と言っていいのかな?それは、そのぬいぐるみたちに君の痛みを肩代わりさせているんだろう?いたーい、いたーい」


最後の大きなクマのぬいぐるみが裂けてワタが弾け飛んだ。


「さぁ、これで君のぬいぐるみは無くなった。今度こそ、君の番だよ。いたーい、いたーい」


少年は人形をちぎった。……けれど少女になんの変化もない。少年は驚いたような顔をする。


「なんでだ?いたーい、いたーい」


少年は人形を再度ちぎる。けれどやはり少女に何も起こらない。


「いたーい、いたーい!いたーい、いたーい!いたーい、いたーい!いたい、いたい!いたい、いたい!」


幾度人形を裂けども少女は変化しない。


「なんでだ?なんでだよ!いたーい、いたーい!」


少年は人形の腹部を真横に裂いた。人形の裂ける音がした。そして…………視界が傾いた。


「な、んで、だ、よ」


少年の腹部は少年が裂いた人形同様、ちぎられたように分かれていた。


「ほんとはひとにつかっちゃだめなの」


少女は少年に近づく。


「くまちゃだけっていわれたの。つかれるからやなの」


少女は少年の目の前に立つ。


「でもこわいのはいちばんやなの。こわかったからゆるされるの」


少年は本当ならば喋れないはずなのだが口を開いた。


「君、の、対象は、ぬいぐるみだけ、じゃ、ない、のか?」


「わたしはワタがはいったぬいぐるみをつかうの」


少年は少女を睨む。既に口は動かなくなった。


「どんなどうぶつもないぞう(ワタ)のはいったぬいぐるみ」


「!!!」


「わたしはいたいとおもったことがない。それがぜんぶなの」


少女は少年に触る。少年の身体は既に冷たくなっていた。


「あったかいとかつめたいとかわかんない」


少女はその場を離れる。少し高台から元いた場所を見つめた。無惨に広がる死体。クマのぬいぐるみのワタが血を吸って赤く染まっていた。


「くまちゃ。あたらしいの、つくってもらわなきゃ」


少女はどこかへと去っていった。

××新聞××年×○月〇〇日


連続変死事件 軍でもとまらず!


先々月から続く変死事件。巨人にちぎられたような死体が出る事件がまたも起こった。今回は犯人を追っていた軍が壊滅した。同時に第一の事件の際、行方不明だった少年、◇◇◈◇◇(12)くんが発見された。◇◇くんは大好きだった人形を胸に抱えたままだったという。また、現場からは三、四メートル程の大きなくまのぬいぐるみが見つかっている。軍は再び犯人を追跡している。

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