マジカルゴルフ #8
その日、キララは自分の部屋で、キャラットが見守る中とある魔法の薬を飲んでいました。
「どう?具合が悪くなったりはしてない?」キャラットが言いました。
「大丈夫。今のところ問題無いよ。」キララが言いました。
「良かった。魔法の薬は思わぬ副作用が発生するリスクがあるからあまりオススメは出来なかったんだけど……。」キャラットが言いました。
「でも、副作用があったとしても一時的なものなんだよね?それに、リスクを冒すだけのメリットもある。」キララが言いました。
「あの薬の効果によってキララは気持ちを周囲に悟られにくくなったハズだけど……。」キャラットが言いました。
「試しに私が今何を考えているか当ててみてよ。」キララが言いました。
「うーん……。分からないや。」キャラットが言いました。
「本当にその薬が効果を発揮してるか不安だなって思ってたんだよ。少し考えれば予想くらいは出来そうなものだけど、それが分からなかったとなると、この薬の効果はホンモノみたいだね。」キララが言いました。
「うん。但し、さっき副作用は一時的って話をしたけど、主作用も一時的なものだよ。あの薬の場合は一週間程度かな?」キャラットが言いました。
「一週間か……。じゃあ一週間後にまた作ってよ。」キララが言いました。
「魔法の薬を作るにはかなり魔力が要るんだ。一週間おきには作れないよ。それにまだ副作用が無いと決まったワケじゃ無いしね。」キャラットが言いました。
「うーん……。」キララが言いました。
その後、キララは学校でヒカリと話しました。
「そう言えば最近、アカリを見かけないんだよね。」ヒカリが言いました。
「アカリって一年くらい前にヒカリが言ってた……?」キララが言いました。
「そう。なんかずっと学校休んでるらしくて……。」ヒカリが言いました。
「そうなんだ。」キララが言いました。
「まさか暗殺とかしてないよね、一年前のことを根に持って?」ヒカリが言いました。
「どうかな?」キララが言いました。
「そう言えば今日はキララの考えがまるで読めないな、いつもなら何を考えているのかもっとよく分かるのに。」ヒカリが言いました。
「そうなの?」キララが言いました。
「いざキララの考えていることが分からないとなると物凄く気になっちゃうな。」ヒカリが言いました。
「教えて欲しい?」キララが言いました。
「教えて欲しい!教えて下さい、何でもしますから!」ヒカリが言いました。
「何でも……?」キララが言いました。
「何でもはウソかも……。でも教えて欲しいのはホント!」ヒカリが言いました。
「じゃあ、私とゴルフして勝ったら教えてあげる!」キララが言いました。
「え……?ゴルフ?何で……?」ヒカリが言いました。
「何だかよく分からないけど、物凄くゴルフがしたい気分なんだよね。」キララが言いました。
「ええっ……?やっぱり今日のキララ……考えていることがまるで読めない!意味不明!」ヒカリが言いました。
「そんなことよりやろうよゴルフ!」キララが言いました。
「そこまで言うなら受けて立つけど……何でもするって言ったし……。」ヒカリが言いました。
「よし、それじゃあ今すぐ……!」キララが言いました。
「今すぐはムリでしょ、授業があるし!」ヒカリが言いました。
「なら放課後……!」キララが言いました。
「いや、せめて週末にしない?」ヒカリが言いました。
「分かった。」キララが言いました。
その日の放課後、キララはとある路地でキャラットと会いました。
「来たね、キララ。」キャラットが言いました。
「ねえ。今からゴルフしても良い?」キララが言いました。
「ゴルフ……?何で……?」キャラットが言いました。
「とにかくゴルフがしたい気分なの!何でなのかな?」キララが言いました。
「これはひょっとしなくてもあの薬の副作用だね。」キャラットが言いました。
「あの薬の……!?」キララが言いました。
「魔法の薬の副作用は体質によっても変わるものだけど、あの薬はキララの場合、ゴルフに対する欲求を増幅させる副作用があるみたいだ。」キャラットが言いました。
「そんな……!それじゃあ私、ゴルフをしないと生きていけない体になっちゃったの!?」キララが言いました。
「大丈夫、薬の効果は一時的なものだから。でも、主作用の方は飲んですぐ現れたけど、副作用の方はそうじゃ無かったとなると……。」キャラットが言いました。
「そうなるとどうなるの?」キララが言いました。
「主作用の方は期間中常に一定の効果を発揮するのに対し、副作用、つまりゴルフ欲求の増幅の効果は一定じゃないってことだね。」キャラットが言いました。
「つまり、ゴルフしたくなったりそうじゃなくなったりするってこと……?」キララが言いました。
「その場合大抵は緩やかに効力が強まってピークを迎えた後また緩やかに弱まっていくものだよ。」キャラットが言いました。
「今よりもさらにゴルフしたくなっちゃう可能性があるってこと……!?」キララが言いました。
「そうだね。」キャラットが言いました。
「そんな……!」キララが言いました。
次の日、キララは雨が降っている訳でも無いのに学校に傘を持参し、暇を見つけてはそれを使ってティーショットの練習をしていました。
昼休み、校舎裏で練習をしていたキララの元にヒカリがやって来ました。
「ずっとやってるよね、ソレ。」ヒカリが言いました。
「まあね。」キララが言いました。
「そんなにゴルフがやりたいの?」ヒカリが言いました。
「うん。」キララが言いました。
「どうして……?」ヒカリが言いました。
「分からない?」キララが言いました。
「分からないよ!キララの考えてること、全然分かんない!」ヒカリが言いました。
「分かるでしょ!?今の私はゴルフが大好きなんだよ!」キララが言いました。
「だから……何でそんなにゴルフにはまっちゃったワケ!?」ヒカリが言いました。
「魔法……だよ。」キララが言いました。
「やっぱり分からない!」ヒカリが言いました。
「分からなくても良いじゃん!とにかくゴルフしよう!?」キララが言いました。
「私達……戦うことでしか分かり合えないってこと……?」ヒカリが言いました。
「どうかな?」キララが言いました。
「分かったよ。そんなに勝負がしたいなら、予定を早めて今日の放課後、勝負してあげるよ。」ヒカリが言いました。
「やったー!」キララが言いました。
「その代わり、私が勝ったらキララの考えてること、洗いざらい全部教えて貰うからね?」ヒカリが言いました。
「良いよ。」キララが言いました。
その日の放課後、キララとヒカリはとあるゴルフ場を訪れました。
「まさか放課後にゴルフする日が来るなんて……。」ヒカリが言いました。
「遂に……!遂に……!」キララが言いました。
「大丈夫、キララ?」ヒカリが言いました。
「私ならモチロン平気だよ!だって今からゴルフだよ?」キララが言いました。
「キララの考えが読めないと言うより、そもそも思考が存在しているのか不安になってくるよ!」ヒカリが言いました。
「先攻は貰うよ?」キララが言いました。
「別に良いけど……。」ヒカリが言いました。
キララがドライバーを構えました。
「究極の輝きを放て!シャイニング・ショット!」キララがボールを打ちました。
キララが打ったボールはコースの外へと飛んでいきました。
「ガッチャ!」キララが言いました。
「盛り上がってるとこ悪いんだけど……OBだよ?」ヒカリが言いました。
「でも……今私……ゴルフをプレイしてる!」キララが言いました。
「そうだけど……今のでキララが不利になったよ?」ヒカリが言いました。
「それはどうかな?」キララが言いました。
「え……?」ヒカリが言いました。
「OBとなったことで私は連続攻撃の権利を得る!」キララが言いました。
キララが新たなボールを置いてドライバーを構えました。
「セカンド・ショット!」キララがボールを打ちました。
キララが打ったボールは再びコースの外へと飛んでいきました。
「これで私は三度目の権利を得た!」キララが言いました。
「もう止めて!キララのスコアは2オーバーだよ!」ヒカリが言いました。
「まだそうと決まったワケじゃない!ここからワンショットキルで一気に1アンダーに持っていく!」キララが言いました。
「そんなコト出来るハズ無い!」ヒカリが言いました。
「オーバーロード・ショット!」キララが三球目のボールを打ちました。
キララの打ったボールは三度コースの外へと飛んでいきました。
「またOB……。」ヒカリが言いました。
「このターン、私はOBの数だけ攻撃することが出来る!」そう言ってキララは四球目のボールを置きました。
「ダメダメ!こんなんじゃ進まない!降参するからもうこの勝負は終わりだよ!」ヒカリが言いました。
「降参なんて認めない!」キララが言いました。
「どうしても続けたいなら特別ルールを設けよう?」ヒカリが言いました。
「どんな?」キララが言いました。
「ボギーが確定した時点でそのプレイヤーの負け。つまり、このホールはパー4だから、四打で入れられなかったら負け。」ヒカリが言いました。
「良いよ。」キララが言いました。
「負けは確実だよ?」ヒカリが言いました。
「それでもプレイが続けられるなら構わない!」キララが言いました。
「キララ……。」ヒカリが言いました。
「ファイナル・ショット!」キララがボールを打ちました。
キララの打ったボールはコースの外へと飛んでいきました。
「試合終了!キララの負け!」ヒカリが言いました。
「負けた。でも楽しかった!」キララが言いました。
「OBだけで楽しいなら打ちっ放しでも良かったじゃん!」ヒカリが言いました。
「確かに……!」キララが言いました。
「それはそうと……一応私が勝ったんだから、約束通りキララの気持ちを聞かせて貰おうかな?」ヒカリが言いました。
「良いよ!」キララが言いました。
「今の気持ちは……?」ヒカリが言いました。
「ゴルフが大好きー!」キララが言いました。
おわり