第三話 「10歳の誕生日」
パスパロと森で遊んで帰ってきたケンは…。第三話 完結。
次の朝、ケンは昨日の夜、パスパロと遊んだことを思い出していた。
とてもきれいな森に行ってパスパロからたくさん話を聞いたこととか。
ケンの9歳の誕生日は今までよりももっと特別な誕生日となった。パスパロと会えたことが一番のプレゼントとなったからだ。
「それにしてもパスパロはかわいそうだな。今までひとりぼっちだったんだから。今もあの森でひとりぼっちなのかな?」そう思うとかわいそうですぐに会いたい気分だったが、パスパロの森がどこかもわからない。
「次のぼくのお誕生日まで会えないだなんて!」ケンはさびしくなった。
それから一年が経ち、次の…ケンの10歳の誕生日。ケンはとてもワクワクしていた。だってやっとパスパロに会えるんだもの。
朝起きて、学校に行って、学校から帰るとおやつを食べて、宿題をして、家族でケンの誕生日祝いをした。ママはクリームたっぷりのイチゴがのった誕生日ケーキを作ってくれた。10本のろうそくの火を吹き消すとパパとママからケンが欲しがっていたギターがプレゼントされた。
ケンはとても喜んだ。でもケンの楽しみはこれからだ。美味しいケーキよりも欲しかったギターのプレゼントよりも楽しみにしていたこと…それはパスパロにまた会えるということだった。ケンはパパやママに「早く寝なさい」と言われる前にベッドに入った。
ベッドに入ればまたパスパロがぼくを呼んでくれるに違いない。ケンはそう思っていた。
しばらくすると庭の木が揺れ始めた。そしてトントンと窓を叩く音がした。あ、パスパロが来てくれたんだ!
ケンがベッドから出て窓の方へ行き外を見ると、パスパロはいない。窓を叩く音は激しく吹く風の音だった。
ケンはパスパロを待った。そのうち眠くなり、何度も目をこすって、何度もあくびをした。
そしてとうとうケンは眠ってしまった。
翌朝、ケンは目を覚まして気づいた。パスパロは来なかったと。パスパロはぼくとの約束を忘れてしまったのだろうか?それとも寝ている間に来てくれていたのだろうか?
ケンはもやもやとした気持ちのまま、学校へ向かった。
誕生日の翌日は一番つまらない日だ。だって次の誕生日まで欲しいものは買ってもらえないし、それよりなにより会いに来ると約束してくれたパスパロが来てくれなかったのだ。ケンはそんなことを一日中ずっと考えていた。
そして、また夜になった。歯を磨き、トイレに入り、パジャマに着替えてベッドに入った。
今日はつまらない一日だったな。パスパロはどこにいるのだろう?本当にぼくとの約束を忘れてしまったのかな?それともそもそもパスパロと森へ行ったあの出来事は夢だったのか?そんなことを考えながらうとうとし始めた時だ、突然、庭の木が大きく揺れ始め、トントンと窓を叩く音がした。
まさか…。ケンが窓の外を見ると、猫のような丸い目が部屋を覗いていた。それは間違いなくパスパロだった。そしてこう言った。「ごめん、一日間違えちゃったようだね。遅くなったけど、ケン、10歳のお誕生日、おめでとう!」
おしまい
これで「パスパロ!」のお話はおしまいです。最後まで読んでくださりありがとうございました。