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ヤスケ、若返る

中々主人公達は進みませんね。

困ったもんです。

「そう言えば、ヤスケって何才だ?」

森沿いに草原を歩いているとタケアキが突然にそんな事を聞いて参った。


「儂か?儂は今年で五十じゃな。」

「ふぅーん15か。へぇ、同い年くらいかと思ったけど、見た目より若いんだな。ちなみに俺とハヤトは18才で、エンタは17だな。」

ん?

「此れタケアキよ。儂は五十と申したぞ?」

全く、そんな小僧に見える訳が無かろう。

目が腐っておるのか?


「はぁ?そんな訳ねぇだろ!少しはマシな嘘つけよ。」

「50才って俺の親父よか年上だぞ。」

然し、エンタとハヤトが呆れた声を上げおった。

むぅ?斯様に貫禄に欠けておるか?

……孫もおるのじゃがな。

そう思いつつ首を傾げる。


そう言えば髪も黒々としておったし、手の皺も無くなっておったが……まさかな?



おぉ、丁度いい所に小川が流れておるわ。

「おい。ヌシら、川があるぞ。」

「おっ、水飲めるかな?」

「生水は当たるって言わないか……?」

「どうやって沸かすんだよ!」

「其れもそうか……」

ハヤトが少々難色を示すが、小川へと降りる事に致した。

ふむ、森より流れ出でて草原へと注ぐか……下流に人里が有るかも知れぬな。


見上げると森の奥は山にまで連なっており、黒々とした森が随分と奥まで広がっておる。森には人の気配は見て取れ無いとくれば……やはり、下流へ降るしかあるまいて。

そんな事を考えつつ、錆地塗十八間筋兜の兜を脱ぐ。


……ま、多少は予想はしておったがのぅ。

其処には家督を継いだ頃の儂の顔が映っておった。


見た所、十七、八の頃と言って良いか?顎髭も生やして居らぬ、何とも総髪も凛々しい若武者の姿があった。


「こは流石に五十には、ちと無理があるのぉ。」

思わず苦笑し、その様な言葉がぽろりとまろび出る。

「当たり前だろ!何言ってんだ?」

エンタが呆れた声を漏らす。

此れは済まぬ事を致したな。


「……のう、ヌシら。死ぬ前の年は幾つであったか?」

不意にそんな疑問が湧き上がって参った。

「あん、死んだ時……?あんまり変わった気はしないな。」

「そう言えば、服装もそのままだからな……あんまり違い良く分から無いな。」

「てっきりそのままだと思ってたけど、違うのか?」

三人も水面に映る自分の姿を改めて見て、何事かを考えている様子であった。



………



川辺より多少離れた場所にて、焚き火を起こし鉄の陣笠を鍋の代わりに湯を沸かす事に致した。


「こ、これって頭に被る奴じゃ無いのか?」

「これこれ我儘を抜かすな。とは言え、儂は此の陣笠を一度も被った事は無いがの。」

そう言ってハヤトを笑い飛ばす。


ははっ、何を申しておる。

何時もは背中に背負っておる陣笠ではあるが、中々に便利じゃぞ?

背中より矢で射られても、鉄砲で撃たれたとしても陣笠と具足を一度に貫く事は出来ぬし、盃として水も酒も飲める。火にくべれば鍋としても使えると、中々に優れ物じやぞ。


小川で捕まえた蟹や海老、小魚などを適当に放り込む。

此の川幅じゃと岩魚も山女魚も居らぬから、此度は相仕方無し。しっかし、見たことも無い草木ばかり故にどれが食べれるかも分からぬのが辛い所じゃ。

しっかし陰気臭い土地じゃな、蟹も海老も小さくてひょろひょろとしておる。

……ん?蟹とは脚が十二本であったか?


続いては巾着より取り出した兵糧丸を一つ鍋へ放るとタケアキが眉を顰める。

「其の丸いの何なの?」

「こは兵糧丸じゃ。米と麦、味噌に蕎麦、大豆、擂胡麻を練り込み、天日にて乾燥させておる。」

「ヘぇ……戦国時代にもインスタント食品ってあったんだな。」

「いんすた?それが知らぬが、他に芋がら縄もある故にもう数日は持つと思わるるぞ。」

因みに、芋がら縄とは、里芋の茎(芋茎、芋がら、ずいき)を帯のように長く編み、味噌で煮しめて作る野戦食じゃ。

これを兵が腰に巻きつけて所持するか、荷物を縛る縄として用い、必要な時に千切り陣笠にて煮込めば良いぞ。


「インスタは違うと思うぞ……けど、ヤスケにばかり食材提供して貰うのは気が引ける……」

エンタが申し訳なさそうな顔をしつつも、儂が持参しておった白木の碗で汁を啜っておる。

自分に正直な奴じゃな。


「ま、仕方あるまいて、せめて獣でもおれば捕まえるなり何なり致すが鳥も獣も見かけぬゆえにの。」

うぅむ、碗は一つしか無い故に、四人にて回して食うしか無いのお。



「そうだ。ハヤト!鑑定眼で食べられる物を見分けられるか?」

タケアキが良い事を思いついたと言わんばかりに、ぱんと諸手を叩く。

「あ、俺もそうは思ったんだけどな。」

そう言ったハヤトがその辺りに生えている草を笔った。

はて、何をするつもりじゃ?


「……鑑定!【イジル】ー 『全草が白い毛で覆われ、特に惰円形のくすんだ緑色の葉は触るとちくっとする程度の細かな毛がある。青色で、星形の花を咲かせる。』だとよ。」

溜め息交じりにハヤトが鑑定結果と呼ぶものを口にした。

「....…何だよそれ。小学生の植物図鑑レベルだな。」

「其れで、ハヤトの鑑定眼のレベルは幾つなんだ?」

「鑑定眼は……Level.2だ。」

「んん……スキルレベルが低すぎて駄目なのか?」


ぐだぐだと三人が「すきる」とやらの話をしている間に、儂は森のきわにて薪と手頃な棒状の枝を探す事に致した。



………



ふむ……此は中々に良き。程々に硬い木じゃな。

赤樫にも似ておるが、粘りもあって木剣には丁度良かろう。

鞘の小柄櫃より小柄こづかを抜き、枝の余計な部分を削り落とす。

二本程確保したものの、もう一本手頃な枝が見当たらぬな。

……ちと此方は軽いが、相仕方無し。


木剣と言えども馬鹿にしたものでは無い。胴を打てば肋骨は砕け、小手を打たば尺骨も圧し折れよう。

まして兜を被っておらぬ頭を打てば脳天は割れ人の命の火などあっさりと吹き消すであろう。

理屈は知らぬが、『ふえおおね』が言うにはこの世界では他者や獣を打ち倒せば「経験値」とやらでより強くなれるとの事であった。

無論、日々の鍛錬にて切磋する事でも経験値は得る事ができるが、他者を倒す事がー番の早道との事であった。


……如何にも危うい。

碌な修練や鍛錬も無く、相手を倒す事でのみ強くなった所で、それは「歪な強さ」としか言いようも無い。それでは騙し討ちや闇討ちでも強く成れると言う事に繫がり、技量が伴わない力任せな……正に「歪な強さ」になるのではないか。と危惧するばかりだ。


話が逸れたが、あの三人にも何らかの刀剣の類を手渡し、早急に経験を積ませねばならぬ。

まずは木刀を作り、手渡す。

そう思い至ったのであった。



「お、ヤスケが帰ってきたぞ。」

きょろきょろと周囲を見渡していたエンタが、儂の姿を見つけて声を掛けて参った。

「うむ、何事か起こりしか?」

「いや、動くものも見当たらねえよ。」

周囲を見飽きたと言わんばかりにエンタが手を振って見せる。


「せめて、狼とまでは言わないけど兎か鳩ぐらいは捕まえたいよな。」

ハヤトとタケアキのニ人がそう言っておったので、丁度良いとばかりに手製の木刀を手渡した。

「どうしたんだ、此れ?」

三人が不思議そうに首を傾げる。


「うむ、儂が道すがら削り出して参った。剣術を会得するに、得物が無いのも寂しい物じゃと思ってな。」

「おお!遂に装備品をゲットだぜ。」

「まあ、ヤスケみたいなフル装備までは遠いけどな。」

喜ぶハヤトに対し、そう言ったタケアキが儂の具足一式をみて肩を竦めてみせる。


「……よし。鑑定!【ホゾバタの※※】ー 『固いホゾバタから削り出した※※、※※※※程度ならば倒せる。少し重く、硬い。』と、こっちは【ハリギリィの※※】ー 柔らか目のハリギリィから削り出した※※。加工しやすいが耐朽性はやや低い。軽く、柔らかい。』って、この※※って何だよ!」


「ふむ、どうしたのじゃて?」

「ああ、鑑定の一部が表示されない。それに固有名詞の意味が分からないな。あ、そう言えば初めて会った魔族の表示もこんな感じだったか。」

ハヤトが何か納得したような表情を浮かベ一人領く。

一人で納得して如何にもするのじゃ?


「よっしゃ!ヤスケが折角用意してくれたんだ。早速素振りしようぜ。」


全く、タケアキは元気じゃのう。

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