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戦乙女と女淫魔……

すいません。

昨日投稿して居ませんでした。


今回は長編です。

「六道通が二、天耳通てんにつう!」

儂は六神通の一つである天耳通を使い、周囲ヘと聞き耳を立てた。


天耳通とは通常人の耳にて聞こえぬ音を聞く力であり、千の差と万の別を聞き分ける能力じゃな。

無論、常に全力にて使っておっても色々と聴こえ過ぎて何が何やら分からぬ様になってしまうが。

ま、其処は慣れれば何とかなるものじゃ。



.……騒騒と日々を暮す人々の喧騒や生活音等が次々と脳裏ヘ湧き上がってくる中から求めておる『声』をば探す。


……〝 ……Beth versiegelt magisch den Herrn und Adalusia 〟……


ぬ?……どうやら探しておったかっ『声』を拾うたようじゃな。

雑音交じりに聞こえる場所ヘと意識を集中させ、聞こえて来る言葉の 『本質』を読み解く。


...…〝 Ihr Jungs, der Plan für den Fall wird heute Abend entschieden …werden.……い……の計画は今夜決行します。私とベスが領主館ヘと赴き、既に今日の夕食に例の薬を混ぜています。 〟……

よし!言葉の意味も理解出来ておるな。この声がきっと『いろぅど』じゃなっ……

ん?!薬じゃと……ま、まさか毒か?


……〝 ど、毒薬ですかい? 〟……

……〝 本当に愚かですね。毒など使う訳が無いでしょう?だからお前達は駄目なのです。毒殺では意味がありませんからね。タ食に混入したのは、あくまで魔法が劾きやすくなる導入薬で、其れ自体に害はありません。そうですよね?ベス 〟……

……〝 ええ、その上、数時間で薬自体の残滓反応は身体から綺麗に残らず消えちゃうから安心して良いわよぉ 〟……

若い娘の声……確か『べぇす』とか申す娘じゃったな。ふむ、薬師であったか。


……〝 お、俺達はどうすれば宜しいでしょうか?〟……

……〝 そうですね。お前達はあの黒髪の小僧を、領主館の一階……いや、二階の倉庫に放り込んでおきなさい 〟……

……〝 夕食の後に館の中で、【惰眠】の魔法を使用人に使うからね。アンタ達あんまりちょろちょろしていたら巻き込まれるわよ?〟……

小悪党とは本当にはかりごとが好きであるな。人とは真っ当な道を生き、歩んで居れば斯様な謀とは無用でよかろうに。


今日の夕餉の後であるな。

聞きたき事は聞いたが故に、天耳通の行を終え立ち上がる。


………


「どうだったヤスケ。」

「と、言うかさ?聞こえても言葉の意味は分からないんじゃ無いのか?」

エンタとタケアキの二人が行を解いた儂へと話し掛けて参った。


「心配致すな。天耳通は聞こえし物の真理を聴き分ける。則ち、異なる異国の言葉の意味も分かるのじゃぞ。」

「ヤスケぇ……幾ら何でも万能過ぎだろ?」

「チートだ!チートが居るぞ。」

いつも思っておるのだが、その『ちーと』とは何なのであるか?

第一、ヌシらも件の女神より言葉が分かる力を貰おておろうに。


「まあ其れはどうでも良いや。で、奴らは本気なのか?」

「うむ。今晩の夕餉の後、奉公人達を魔法で眠らせ事に及ぶ算段のようじゃな。既に食事に薬を混入までしておるようじゃぞ。」

「薬だと?!……まさかの毒か?」

「いや、魔法とやらの効きを良くするだけの薬科のようじゃ。然し、証拠は残らぬようじゃぞ。」

「小悪党の癖して知恵は回るんだな。」

全くじゃな。エンタも呆れておる。


「ヤスケ、少し外を見せてくれ。どうにもこの部屋にいると時間が分からねぇしな。」

ふむ、そうじゃな。

儂は外の様子が神通力にて分かるが、タケアキ達にはこの地中に潜みし部屋では窓が御座らぬ故に分からぬな。


「ぬん!」

天井の一部を見上げて手刀を切る。

ぼこりと音を鳴らし天井の一部に五寸程の穴を空けた。

「……何でも有りだな。」

タケアキがそう呟き、呆れ果てて物見穴を眺めておる。

心外じゃな。


「あの日の高さじゃとまだ夕刻では無いじゃろ。」

「見た感じまだ明るしいな。なぁヤスケ、腹減ったんだけど、食い物は出せないの?」

エンタがそう言って来おったが、何を言っておる。

「エンタよ。手妻や手品では無いのだから、幾ら何でも飯は出て来ぬぞ?考えれば分からぬか?」

「其れは駄目なのか!?基準が分からねえ……」

分からぬのか?変な奴じゃな。


………


「ん?」

「ん、どした?!」

儂が小さく呟くとタケアキが反応する。

「いろぅどの手下共が、ハヤトを袋詰めにして運んでおる……」

「み、見えるのか?」

「うむ浄天眼と言う。ま、千里眼じゃな。

天眼通を封じておるので、其の下位の神通力を用いておる。」

「どうなってんだよ……もう、怖いわ。」

「それじゃあ、俺達も領主館へ向かうか。」

「夕餉の後に【惰眠】とか申す魔法を使うと言っておった故、浄天眼で確かめつつ踏み込むが良かろう。」



◆◇◆◇◆



『……眠りを誘いし黒き雲よ かの者達を堕落の眠りの淵へと落とせ 【 惰眠 】』

ベスが小さく呟き魔法を施行すると、黒い靄が颶風をなって館中を蹂躙した。

……バタバタと館内の使用人達が次々に倒れ、深い眠りへと落ちていく。


『領主の私室付近の効きは弱めているから、もしかすると侍女が起きてるかも知れないわよ?』

ベスがそう言って隣に立つイロードへと話し掛ける。

『構いませんよ。この時間侍女達は詰め所に居ますから1、2階へは降りてきません。』


そう丁寧な口調で返事をするイロードであったが、慇懃を装っているものの其の表情からは滲み出す黒い感情は隠しきれては居なかった。

『……長かった。ただ後に生まれたと言うだけで、如何して私が従士なのだ……と、余程私が貴族に相応しいと言うのに……』

口内で小さく呟く。

……馬に乗って槍を振るうしか能が無い、兄や姪の何処が貴族だと言うのだ。

貴族とは謀略を巡らし、更なる富を求めるものだた何故に気付かないのだ……

イロードが鼻筋に皺を寄せ、憎々しげに呟く。

やれ領民の事を考えろ?東の蛮族に対する備え?

知った事か!領民など搾取する対象でしか無いと何故気付かん。

農民など幾らでも増える、換えが効く存在でしか無いわ。


………


……本当にお馬鹿さんよね。

偉そうな事を考えているけど、中央との撃がり?こんな辺境の騎士候なんかと好き好んで関係を持ちたがる物好きなんて中央貴族に居る訳無いわよ。

農民なんて替えが効く?こんな二百人程度の寒村で租税を一気に引き上げたりしたら、あっと言う間に離散して無人化しちゃうわよねぇ。

アナタの大嫌いなお兄さんや姫っ子さんは、その武カの実力で中央との関わりを構築しているんだけど、アナタにはー体どんな強みがあろのかしらね。

うふふっ……

その中身の伴わないスッカスカな自信は何処からくるのかしら·……あゝ、早く頭の中を覗いてみたいわ。


『イ、イロード様、黒髪の小僧を運んで来ました。そ、それで……もう、大丈夫なんでしょうか?』

従士のー人であるアルバンが、野良犬の様にきょろきょろと落ち着きの無い目付きであたし達ヘと話し掛けてきた。

いいわぁ……この思考能力の欠片も感じ無い馬鹿そうな顔……自分の事を小利口だと思い込んでいる馬鹿の癖して、あたしを厭らしい目付きでいつも見ている所なんて実に最高だわ。

アルバンの胸元や臀部に飛んで来る視線を感じつつ、あたしはぶるっと小さく身悶えした。


あゝ昂ぶってきちゃったわね。

馬鹿は三人も居るんだし、一人くらい食べちゃっても大丈夫なんじゃないかしら?


く、くっくっ……

思わず込み上げてくる笑いを抑えるのにあたしはとっても苦労したわ。



◇◆◇◆◇



馬鹿な、如何いうことじゃ?

「あ、あれ?ベスは隣の部屋にいるんじゃなかったのか?」

儂とエンタから疑問の声が飛ぶ。

館へと潜入した儂らは、関係者がー堂に集まっている礼拝堂とやらを目指しておった。

然し、部屋の前には女がー人門番の様に立っておったが……

その姿は確かに儂らも見たことがある『ベぇす』の姿であったのじゃ。


「領主とアダルーシアが礼拝堂ヘと入った事を確認した後、ヤスケが浄天眼で確認していた害だろ?!」

タケアキがそう叫び、木刀を右脇構えに持ち一気に走り込んだ。

先ほど、ハヤトが担ぎ込まれた時も、確かにベぁすはあの部屋に居った筈ぞ?


『あらあら?お客様かしらね。歓迎しなくっちゃいけないわ。』

隣室ヘの入口にゆらりとした姿勢で佇んでいた、胸元を大きく拡げた長衣姿のべぁすがにこりと微笑む。

片目に意識を集中させ,浄眼を発動させると隣室にも、確かに瓜二つのベぁすの姿があった。もしや……


「こやつ魔人じゃ!タケアキ気を付けよ!」

何処か危険な臭いを感じ取り思わず叫んでおった。


『あらあら、良く分かったわね。じゃあ死んでいいわよ?

ひゅぅ『……死の淵ヘの階段よ 大口を開け かの者を喰らぇ【 黒霧 】』

ベぇすの唱えた呪文により、見るからに毒々しい漆黒の霧が一瞬にして噴き上がりおった。


「うぉぉ?!ちょ!これ絶対ヤパぃ奴じゃん?!ぶ、武技 一 【 疾風斬 】」

黒い霧に巻かれそうになるも、右脇構えから繰り出したタケアキの斬撃が間一髪で黒い毒霧を切り裂いた。


「……し、死ぬかと思った·J

遣う遣うの体で距離を取ったタケアキが大きく屑を揺らす。

「魔女か……?」

「これまでの魔人とは桁が違うようじゃな。」

此れまでに出会った魔人と言えば、人を舐めきって油断をしているか、何処か頭がおかしい者が殆どであったが、どうやらこのベぇすとやらは何かが違うであるな……


『あぁら、褒めてくれるの?嬉しいわね。『……天に在りし 猛き雷の子らよ 地を奔りて全てを砕け 【 雷鎚 】!』

ベぇすが両の腕を突き上げると、閃光と雷が弾けて激しい衝撃と共に身体が吹き飛ばされた。

「ぐおっ?!」

「ぎゃ?!」

視線の端をエンタとタケアキがすっ飛んでいく。


『あらあら……アナタ、雷を『斬る』って凄いわね。』

腰の胴田貫を抜き放った儂を見て、ベぇすが

けたけたと嗤う。

「お褒め下さり、恐悦至極……然し、次はヌシの首であるがな!六神通がー、『神足通』……」

一瞬で間合いを詰め太刀の間合いへと踏み込んだ。

『ぁ?!』

驚きの表情を浮かベるベぇすヘ左脇構えからの首払いを放つ。


外す訳も無い、必殺の間合いであったが……



『こわいこわい……首を斬られたら死んじゃうじゃないのぉ。』

ベぇすがそう言ってふわりと空中・・で身を翻した。


その容貌は大きくー変していた。

色白で優美な曲線を描く豊満な肉体を、乳房の先端と股座(またぐら)の一部のみを隠す僅かな布切れで其の身を包む。

そして、白い陶器の様な背中からは黒い蝠

蝠の羽、そして白桃のような臀部からは黒い毒蛇の頭を持つ尻尾が顔を出していた。


しゃあぁ……と鎌首を撞げた毒蛇が此方ヘと向けて威嚇音を飛ばしてくる。

『あらあら、怖かったわねぇ。怯えなくてもいいのよ。』

ベぁすだった者がそんな事を言いつつ、淫媚な手付きで、自らに生えた毒蛇の頭をしごくように愛撫し始めた。



「チッ、女淫魔(サキュバス)かよ……」

身体のあちこちが焼け焦げたタケアキが女妖を見て小さく咳く。

「知っておるのか?」

「ん、まあまあ有名な悪魔だしな。然し俺の記憶の中ではあまり強い悪魔の印象は無かったんだけどなぁ。」

「けどアイツ、魔法はバンバン使う上、ヤスケの攻撃を樂したぞ?」

そう言ってエンタが眉を顰める。


「何処か弱点は知っておるか?」

「凄く強い訳じゃないが、反対に弱点らしい弱点が無いんだよな。精神攻撃が得意の……」

タケアキがそう言い掛けたとき、ベぇすが動いた。

『……淫らなる口 淫靡なる乳房もて かの者を魅入れ 【 魅了 】!』

『……石鶏の嘴 石蜥蜴の息もて かの者を永久に封じよ 【 石化 】!』


「……うそぉん?!女と尻尾の蛇が、別々に呪文唱えてやがるぞ?」

「取り敢えず、散開しろ!纏まってたらまともに食らうぞ!」

「儂が飛び込む!可能な限り援護せよ。」

タケアキが飛び退がり、儂とエンタが大きく回り込み魔法とやらの範囲から逃れる。


〝 ぐしゅ……〟と、廊下に飾られていた花瓶が挿されていた花ごと石化し、ぐずぐずと崩れ落ちた。


「怖っ?!『……水よ集いて 全てを吞み込む 大いなる壁となれ 【 大波 】!』」

タケアキが木刀を八相に構えたままに水の魔法を使う。

どおぉん!と大きな音を立て、互いの魔法がぶつかり合うと、タケアキの水魔法が大きく弾けて大量の水を撒き散らした。


『ふぅん……えぁっ?!』

水を被ったベぇすが、何故か突如として小さい悲鳴を上げたかと思えば、狼狽の色を滲ませ動きを止めた。

「何だ?! 武技 一 【 打ち下ろし 】!」

その瞬間には、エンタの上段からの一撃が蛇の頭を打ち砕いた。

『……ぎっ?!』

べぇすが明らかな隙を晒す。


儂は胴田貫を袈裟懸けに斬り下ろした。

『ぇ?!何な……ぃぎぁ?!』

屑口から斜めにニつになったベぇすが、驚きの表情を浮かべたまま、ぐちゃりと自らの血の中へと崩れ落ちた。


なんじゃ?やけに脆過ぎでは無いか……

「だよな……ベスの奴、何か変じゃ無かったか?」

「ん、途中から一気に弱体化したな。」

タケアキとエンタが首を傾げる。


「あ……レベルアップ来たぞ。【 種族Level.2 】Up、【 水魔法Level.1 】Up、【 精神魔法Level.3 】New、呪詛魔法Level.2 】New、武技 ー 【 薙払 】New だな。」

「あれ?俺は【 種族Level.1 】Up、【 精神魔法Level.2 】New、【呪詛魔法Level.1 】New、武技 一【 袈裟懸 】New、【体術Level.1 】Up、【 剣術Level.1 】Upだぞ?」

ふむ、どうやら対戦した相手や内容で階位レベルとやらが振り分けられるようじゃ……


まて、こんな事をしておる場合では無いぞ!

「隣の部屋はどうなっておる!?……『浄天眼』、『天耳通』!』

急ぎ片目に遠見の力を込め、隣室の中を見透かした。


「……ぬぐっ!」

映った光景に思わず喉が詰まる。

……アダルーシアのその身に付けていた着衣は既に引き裂かれており、その半裸の身体ヘと馬乗りになろうとしている下卑びた男達の姿が目に映った。

……『くっ、殺せ……』……

アダルーシアが気丈にもそう弦き、その深い青の瞳から涙が溢れる……


その瞬間、年甲斐も無く血液が沸騰するかと思う程の怒りに包まれ、迷わず胴田貫を引き抜いていた。

『神足通!!』

一気に扉を断ち切り、その残骸を蹴り飛ばす。

どこじゃ!?

……見つけた!!


『はっ!どうせ死ぬんだから一緒だろ?なぁ、アダルーシ……ァん?』

瞬時に間合いヘと踏み込み、汚い尻と粗末な一物を晒し、糞みたいな下衆な事を抜かしておる男の素っ首を背後から横雍ぎに斬り飛ばす。

……序でに、おっ勃てておった一物を切り落としておく。もう要らんじゃろ!


連中が反応する前に、アダルーシアを掻っ攫い横抱きに抱えて距離を取る。

『……ぁっ?』

手の中のアダルーシアが小さく悲鳴を上げた。


「遅くなり、相済まぬ……あの女、予想を超えて手強かった故に……怖き思いをさせ、誠に申し訳無い。」

間近で見ると……何と、気高く美しい。

べぇすの生々しい造詣と違い、魂の美しさが滲んでおる様じゃ……

などと、少し邪な事を考えてしもうた。


『お、おま……貴方様は?』

アダルーシアが儂を見上げて問い掛けてくるが、さてはて……何と答えて良い物か?


良し……

「我は……そこ成る魔女と、その内通せし謀反人を成敗する為に参りし者。此度は縁あってお嬢様をお助け致す。

……我は何が有ろうとも貴女をお守り致す所存。」

儂は「ベぇす」と「いろぅど」に全てを押し付ける事に決めた。

誰が馬鹿正直に、偶然巻き込まれましたなどと言うものか。

……女子(おなご)の前では格好を付けても良いであろう?


『……あ、貴女をお守りする……と申され……』

アダルーシアが何処か譫言のように咳き、ぼっと顔を赤く染める。


『魔女だと……?何の絵空事を抜かしている。黒髪か!どうせそこに転がっておる野盗の仲間だろうが。大人しく私の大事な姫を返し、投降すれは苦しまずに死なせてやるわ!』

いろぅどが、儂に向かって怒鳴り声を上げてきおった。


何を抜かしておるか。

「手下の外道共に襲わせるが、大事な姪に対する正当な扱いとな!?笑止千万!

貴様が夕餉に薬物を混入した事、並びに、これにあるベぇすがアダルーシア嬢へ魔法を掛けた事は明白。

……いや、それだけでは無い。そこに捕らえられし男を下手人に仕立て上げ、領主一家を虐段し、自らを領主の地位へと箝げんとした事も既に知れておる。大人しく縛に付くはお前達である!!」

う……む、多少大風呂敷を広げ過ぎたかもしれぬな。

そんな考えなどおくびにも出さず、二の句を告げる事も出来ず固まるいろぅどを睨み付ける。



『くくっ……くっ……』


沈黙の中、突如として噛み殺した様な笑いが響いた。

「ふぅん……目も耳も、頭も悪くないようね。それなら最終的な計画は如何なのか気付いているのかしら?』

ベぇすがそう言って儂を軽く睨みつけてくる。

「べ、べス!?お、お前、何を言っている?最終的な計画とは一体なんだ?何の事だ?!』

いろぅどが意味が分からないとばかりに、落ち着か無げに周りを見渡し声を荒げる。


「ふむ。どうせ、いろぅどでは領主の地位は継ぐ事が出来ぬ故。ベぇす、貴様がアダルーシア嬢に化けるのであろう?

……無論、いろぅどをも処分した上でな。」

手の中にいるアダルーシアの身体がびくっと小さく震えた感触が伝わってくる。


「うふっ……ふふふ……折角、真面(まとも)な脳ミソの持ち主なのに勿体ないわねぇ……はっ!

良くぞ我が計画見事見抜きおった。

我が名は魔導騎士団が九席【 魅惑のベアトリクス 】ぞ。

こうなれば相構わぬ。この場に居る者を悉く殺しつくせば良い事よ!!』

ごろっとロ調と声が変わり、べぇす……いや、ベアトリクスが本性を現したのじゃ。

更新ペースは落ちると思います。

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