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ちーととは何でござるか?

「あ、ヤスケお帰り。」

エンタが儂を見つけ声を掛けて参った。


既に二人は森の中より村の様子を伺う場所に潜んでおる。

「……うむ。戻って参った。」

「ハヤトの奴はどうしてた?」

「……ふん、下卑びた妄想をしておった故、捨て置いて参った。ま、元気ではおった故に構わぬであろう。」

「……はっ、成る程な。」

タケアキが意味有りげに笑う。


「何じゃ……?其の顔は。」

「どうせハヤトの奴、アダルーシアが豚面の大男に襲われる姿でも想像してたんだろ?」

……な?何故に分かった?!

「アホだなぁアイツ。うん、捻りが足りないんだよな、捻りが。」

タケアキがそう言って首を振り、肩を竦める。

何じゃ捻りとは?


「ん……ま、一種の形式美と言うか、定番と言うか……ハヤトにそこまで悪気は無いから許してやれ。」

別に許すも何も無かろう……


「ヤスケ……なあ、無茶苦茶顔怒ってるぞ?」

エントまで何を言っておる?儂に怒る理由などは何も無いではないか。

「……おぅ、それならそれでも良いけどな。つうかさぁ……そもそも、ヤスケって何者なんだよ?」

ん、儂か?

「別段、取り立てる事も無い、只のヤスケに過ぎぬよ……」

「嘘付け!……只の男が『こんな事』出来やしねぇだろ?」

「そ、そうであるか?」

「「そうだよ!」」



………



時は数時間前に遡る。


ー 「のう、二人共。……儂はこの領地を、そしてあだるぅしあを助けたいと思っておる。自分勝手で申し訳無いと思うがの……」

朝が徐々に近付き始めた頃、儂はそう二人へ切り出していた。


「……珍しいな。ヤスケが自分の意見を通そうとするのは。」

「だね……何時もは俺達に聞く癖に。」

「何じゃ気付いておったのか?」

「そりゃ気付くさ。俺達に意見を言わせてから、其の中から最善を選んでるだろ?」

「ヤスケは見た目の割に大人だもんな。」

そりゃ見た目は殆ど同じ年ではあるが、中身は五十を過ぎておるからの……


「それで?理由は何かあんの?」

タケアキが思案顔で問い掛けてくる。

ん……そうじゃのう。

「強いて申すと、不義理かのう?」

「不義理?」

「そう、不義理じゃ。不義理とは義理を欠く事。そして義理とは物事の正しき筋道、人として守るべき正しき道。つまりは道理じゃ。

……暴虐の限りを尽くす 主は天に見放されよう。農地を省みない主は地に見放されよう。民を虐げる主は人に見放されよう……

然し、非も無き主に弓引くは、其れ不義理なり。」


「……熱いねぇ。下克上の完全否定か。」

「君臣、父子、夫婦に、仁、義、礼、知、信で三綱五常だったっけ?」

エンタめ、意外に難しい言葉を知っておるな。


「……けどヤスケ、どうやってイロードのお家転覆計画を止めるつもりだ?」

「そうだな。昼間と同じで兵達に取り囲まれたら終わりだぞ。流石にイロード一味を一人づつ暗殺する訳にもいかないだろ?」

二人が手段と方法について疑問を感じておる様じゃな。

……確かにそうであるな。

例え、闇討ちを致した所で正義を貫いたとは他者は思わぬ。

他者にはイロードが正義のままに死んだと思われ、儂らは悪として映るであろうな。


「ん……そりゃそうだろうな。

けど、仮にも勇者になれって言われてるんだし、悪人扱いされるのはかなり拙いだろ?」

「そう言えば勇者だったな。忘れてた。」

そう言えばそんな事を言われておったな。

勇者とやらがどうあれ、世間に悪として映るは良くは無い。

其処には義は無い。義無ければ、其れは五常に欠ける。



「……相仕方無し。ヌシら……今より儂は、封じておった『力』を解き放つ。

……余りにも人の力を越えておったが故に、長らく封じておった『力』をな。」

「……『力』?なんだよそれ?厨二病設定か?」

「……もしかして勇者の力を貰えていたのか?」

二人が意味を分かり兼ねて眉を顰める。

まあ……そうであろうな。


「……あの『ふえおおね』より女神の加護とやらは貰って居らぬ。あくまで儂が元々前世で持っておった『力』じゃな。

……ま、人智を超える力と言われても分からぬであろうな。



………



儂らは再度、タケアキの水の魔法を使い村の外郭部の森の奥へと移動した。



そこで、羽織っておった小袖を諸肌ぐ。


「……ひゅおぉぉ……こぉおぉぉ……」

ゆっくりと呼吸を繰り返し、体内へと呼気を取り入れ吐気と共に体内の勁を練り上げる。


『……नमः सर्वज्ञाय

आर्यावलोकितेश्वरो बोधिसत्त्वो गंभीरायां प्रज्ञापारमितायां चर्यां

चरमाणो व्यवलोकयति स्म

पञ्च स्कन्धास्तांश्च स्वभावशून्यान्पश्यति स्म

इह शारिपुत्र रूपं शून्यता शून्यतैव रूपम्

अनुत्पन्ना अनिरुद्धा अमलाविमला नोना न परिपूर्णाः

तस्माच्चारिपुत्र शून्यतायां न रूपं……』

古代印度語サンスクリットにて秘言を紡ぐ。

呼気を背骨沿いに落とし丹田にて巡らし丹田で氣を練り、吐気を肋に沿い勁を回し吐き出す。

『न वेदना न संज्ञा न संस्कारा न विज्ञानं

न चक्षुः श्रोत्र घ्राण जिह्वा काय मनांसि

न रूपशब्दगन्धरसस्प्रष्टव्यधर्माः……』

「な、なんかせ、背中に文字が浮かんで来たぞ……」

「梵語……と五芒星?」

エンタの言う梵語とは古代印度語サンスクリットであり、五芒星とは密教・陰陽道における晴明紋の事であろう。

『……इति प्रञापारमिताहृदयं समाप्तम् !』

最後の秘言を唱え上げる。



「はっ!地中出没神変!」

両手にて印を組みて神通の力を解き放つ。

「うわっ?!」

「つ、土魔法ぉ?!」

ずぶりずぶりと音を立て、儂ら三人の身体が地面へと沈み始める。


………


一体幾年振りであろうか……我が身の封印を解き放ったのは……

体内に神通力、六神通等が蘇って来ている事に気付く。

神通力とは、決意神変。

つまりは……

一身多心神変いっしんたしんしんぺん

「ひとつから多くになる能力」

多身一身神変たしんいっしんしんぺん

「おおくからひとつになる能力」

顕現神変けんげんしんぺん

「現れたりする能力」

隠匿神変いんとくしんぺん

「隠れる能力」

不障礙神変ふしょうげしんぺん

「塀に垣根、山も空中を行って越える能力」

地中出没神変ちちゅうしゅつぼつしんぺん

「大地において水中、土中に潜む能力」

水上不没神変すいちゅうふぼつしんぺん

「水に沈まない能力」

飛行神変ひこうしんぺん

「鳥のように空中を行く能力」

日月把触神変にちげつわしょくしんぺん

「太陽や月を手で触れる程に近くで見る能力」

身自在神変しんじざいしんぺん

「梵天が住む世界にも肉体をもったままいける能力」

六神通とは……

神足通

「機に応じて自在に身を現し、思うままに山海を飛行し得るなどの通力。」

天耳通

「ふつう聞こえる事のない遠くの音を聞いたりする超人的な耳。」

他心通

「他人の心や身体を様子を知る力。」

宿命通

「自分の過去世や体調を知る力。」

天眼通

「一切衆生の過去世(前世)や様子を知る力。」

漏心通

「自分の煩悩が尽きて、今生を最後に生まれ変わることはな無くなったと知り仙人に至る力。」

……これらの能力が体内で渦巻き、得も言われぬ傲岸不遜な感情が懇々と湧き上がり始めた。



………



「本当に、ま、魔法じゃ無いのか?」

「凄いな……」

「ヌシらが言う魔法とやらが如何なることわりの元に施行されるかは知らぬが、こは神通力なり。」

二人が物珍しそうに周囲を見渡す。


実際、儂らは地中に居る。

……とは言え、埋まっておる訳では無く、四畳半の茶室程度の土で造られた小部屋になっておる。

無論、儂の神通力で創られた部屋じゃ。



「……勇者なんかより、よっぽどチートなんじゃね?」

「……如何して最初から使わなかったんだよ?」

……そう言われると辛いの。

儂は力を授かって、此の力を持て余し……呪っておった。

好きな所へと飛び回り、世間で何が起こっているいるかを知る事が出来、人の寿命が見える。

幼き頃は、調子に乗って人を見て寿命や戦の結果を言い当て悦に浸っておった。

……糞小僧の言う事など、誰が信じると言うのじゃ。

当たった所で、人外扱いされて終わりじゃ。


母の寿命を示す蝋燭の火を延ばす事が出来なかった時に、儂は此の力を自ら封じた。

結局の所、寿命とは人の手では如何にも出来ぬと思い知ったのじゃ……

故に、未だに天眼通は固く封じたままじゃ……


「儂は自ら封じておった戒めを解き放ち、再び此の力を振るう事を決めた。

……タケアキ、エンタ。儂を手伝ってくれぬか?」



暫しの沈黙の後、タケアキが口を開く。

「……今更何言ってんだ?俺達仲間だろ。」

「そうだな。異能の力は此の世界では異物じゃ無いんだぜ?胸張ってがんがん使えよ。」

エンタも其れに続く。


その言葉にストンと納得がいった。

儂は前世にて異能の力を持つ事で、他人と違う事を思い悩んでおったのかも知れぬな……



「……では、参るか!」

「おう。くっ殺お嬢様救出ミッションスタートだ。」

「よっしゃ!まずは何からだ?!」

二人が儂の声に応じ、大きく声を上げた。

……然し、くっころとは何なのであろうか?






弥介こと、高木 能登守鑑房……

肥前の歴史書『北肥戦誌』によると鑑房は、「勇力万人に優れ、早業は江都の素早さをも超越し、打物(槍・太刀)を使えば樊噲・長良にも恥じず、その上に魔法を習得しており、或る時は闇夜に日月を現し、或る時は酷暑に雪を降らせ、大空に立って大海を飛んだ。」と伝えられる。

実はヤスケはチートだったんです。


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