月宮の青年
今回はアルバキュリオの敵国、月宮側の話となります。
朝、目が覚めると外からサイレンが聞こえてきた。また、近くの弱小国が奇襲を仕掛けてきたのだろう。
まるでハエのような連中だ。
何度追い払っても来るのだから余計にたちが悪い。
そんなことを考えていると、ドアからコンコンというノック音が聞こえてきた。
「フラムラス少佐、朝の6時になりました。起床の時間です。」
ドアの先には、毎朝の起床を頼んでいるローズ中尉が立っていた。
「ああ、起きている。ありがとう。」
「あ、あの、少佐、今日の朝食、い、一緒に食堂で食べませんか?」
少し頬を赤らめながらローズ中尉は聞いてくる。それに対しての私の返答は。
「すまないが、今日は朝食はすでに済ませてしまったのでね。また今度にさせてもらうよ。」
「そ、そうですか...では、また今度お願いします。」
ローズ中尉は沈んだ雰囲気でそのまま食堂へ向かっていった。何か彼女を沈ませるようなことをしてしまったのだろうか。
≪そりゃお前、あいつはお前のこと好いてんだから、飯に断られたら沈むだろうが。これだから鈍感系は嫌なんだ。≫
今のは独り言だ。別に、お前が返す必要もない。
私が人付き合いが苦手なことぐらいお前だってわかっているだろう。
私はすでに朝食を済ましているときに、他の奴のためにもう一度食べるなんて程気を使うことはできない。
≪あーあ、どうして俺の本体はこんなに冷たくて気遣いもできないのかね。
俺との会話ですらこんなんだから、後輩もお前に寄り付かなくなるんだよ。
お前はせめてもう一人の自分であるこの俺にもう少しフレンドリーに話せるようにしろよ。≫
...お前も優しい話し方とは程遠いぞ。それと、お前がもう一人の私とは決まったわけではないだろう。だいたい私はお前が何者なのかも知らない。
≪ま、いいだろそんなこと。今日は戦線まで出向くんだ。準備しとけよ。≫
確かにその通りだ。
クローゼットから軍服を取り出し、軍服に着替え、軍帽を被った。
この軍帽が私たちの身体の主導権の切り替えとなるのだ。部屋の戸締りをして、外へと向かう。___
___私たちは今戦線へと移動中だ。やはり人の命を奪いに行くのはなれない。
≪あんまり気にするなよ、手をかけるのは俺なんだからな。≫
そうか...すまないな、いつも手間をかけさせてしまって。
≪心にもないこと言うんじゃねえよ。そら、そろそろだ。入れ替わっとけ。≫
奴は静かな口調で言う。
≪ああ、わかった。≫
私は軍帽のつばを持ち、そしてそれを下へ下げた。
その瞬間、身体が白く輝きだし、俺は光に包まれる。
...
さあ、最高の時間の始まりだ。