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パーティー申請

「お前がリーダーだと?Cクラスがうちの生徒とまとめきるだと?」


 次の日、パーティーの申請用紙を提出した講師はまあ当然の反応だった。若干イライラした講師が露骨に嫌な顔をしている。


「やっぱそう思いますよね。この話はなかったことに」

「だめだよ!?」


 どさくさで諦めてしまおうかと思ったがフローラ姫に止められた。


「先生も!リカエルくんは特別なんです!」

「なるほど……。だが俺の許可でみすみす生徒を死なせるわけにいかんからな」

「ああ、こっちの心配をしてくれてたんですね」

「ましてや俺たちが手を焼いてるマリーの相手が、お前にできるのか?」

「ん。エルとならいい」

「ほう。大それた渾名をつけさせたな?」


 フローラ姫とシズクと異なり、講師はマリーの呼び名でも反応はしない。

 あとでフローラ姫たちに聞いたが、俺の力をある程度認識していた上で、しかもかなり前向きな考えのもとだったからこそつながっただけで、普通はこの講師のような反応になるようだ。エルという渾名も名前も、別にこの大陸では珍しくはないから当然か。


「パーティーから反対がないのか……だがなぁ……」

「だめなら仕方ないな」

「なんでお前が乗り気でないんだ……」

「そうだよ!リカエルくん!しっかりして!」


 とはいえ説得させる道具がない。講師でさえこの反応なら、同級生や先輩がどう思うかは火を見るより明らかだ。

 いまさらだが面倒だなと再認識させられた。


「エルと組まないなら、私はソロで挑む」

「おっと、そうきたか……。それは捨て置けないな」


 せっかくマリーがコントロールしやすい状態にあるのにそれは崩したくないらしい。マリーもしばらく見ない間に交渉がうまくなったようだ。


「じゃあ……!」

「お前らがそこまで言うんであれば、試験をしよう」

「よかったね!リカエルくん!」

「試験なら問題ないでしょう」

「ん。もう大丈夫」


 3人が3人とも、試験を受ける前からこの反応である。


「お前ら……Sクラス上位3名のリーダーとして申請してるんだ。そのハードルだぞ?」

「内容は?」

「わかりやすいのはシャドーとの演習だが、あれでクラスを分けてまだそんなに日にちもたっていないんだ。同じじゃあ結果はわかりきっているからなぁ……」

「同じで大丈夫です。でしょ?リカエルくん」

「手加減しなければ、平気」

「そもそも当日の測定ミスでしたからね」

「なんなんだお前らは……まあいい。シャドー相手なら比較的安全か。いいだろう、ついてこい」


 ◇


「なんで観客がいるんだ……」

「Sクラスの人間は誰しも姫様狙いだったんだ。ここで試験の厳しさを見せつけて変な虫が寄らないようにする。わざわざ時間を取ってやってるんだ、このくらいはさせろ」

「俺は目立ちたくなかったんだが……」

「なら最初からこんなふざけた申請をするんじゃない。反省も込みだ」

「試験に合格するとは思ってないんだなぁ」

「当たり前だろう? 今回はシャドーをSクラスの平均より上の戦闘力に設定した。さて、今ならまだ恥は最低限で済むがどうする?」


 感じが悪いがまぁしょうがないか。Cクラスの人間が突然Sクラスのトップ層のリーダーとしてパーティー申請。確かに苛立ついたずらレベルだろうしな。門前払いの予定がなぜかSランク側の彼女たちに言われて渋々この場を用意したわけだ。


「先生。1体でいいんですか?」

「は?」

「1体じゃ、一瞬で終わる。面白くない」

「それより、シャドーの戦闘設定の限界が見てみたいですね」

「おいおい……お前ら実はこいつに恨みか何かがあるのか?ここで俺に罪をなすりつけて殺す気か?」


 なんか物騒なことを言っている。


「そうだったのか!?」

「そんなわけないでしょ!わかってるのに聞かないでください!」


 まぁそれはわかっている。これ以上問答を続けても周りの視線が鋭くなるだけだな。

 フローラ姫と親しげというだけで針のむしろだ。ある意味これを考えると、ここで一暴れするのがいいかもしれない。マリーのような見た目の派手というか、あれな技をつかえば……いやそれはちょっと嫌だな。


「覚悟は良いか?」

「確認ですが、あれはこちらの強さに連動しないんですよね?」

「そうだ。怖いか? あの試験とは違う。最初からお前の実力などかけらも追いつかない設定だ」

「そうですか。じゃあいいです」


 あのときのようにはならないということだ。ならいいだろう。


「本当になんなんだ……。まぁいい、始めるぞ! これよりCクラス、リカエルのパーティー申請許可試験を行う。許可条件はSクラス上位の実力に設定したシャドーを完全に制圧すること。スイッチの場所は首筋にある。背後を取らなければ制圧はできない。いいな?」

「そこまで教えてくれるんですね」

「知っていても動けなければ同じだ」

「なるほど……」

「ふん。ではいくぞ。開始!」


 Sランク上位程度、ということは実力はフローラ姫やシズクの下位互換ということだ。あの2人はトップ、マリーは規格外だからな。

 ということは、スピードとしては音より早くは動けない。


「止めた!?」

「見えたか?あのシャドーの動き」

「ギリギリだ。たまたま構えてたとこに来てくれただけだろう」


 まっすぐ突っ込んできたシャドーの拳を剣の腹で受けた。この隙にすぐスイッチをオフにすることもできるが、もう少し派手にパフォーマンスしておいたほうがいい気がする。

 いいか、とりあえず止めてから考えよう。


「どうする?見えもしない攻撃。一発は運良く止めたようだが……む?」

「なんだ。シャドーが止まった?」

「故障か?いやシャドーって故障するのか?」


 見えたのは多分マリーだけだろう。シズクも目が追いついていたかもしれないが。


「制圧、しましたよ」

「は?いや……確かにスイッチが切れているな……」


 見学者がざわざわと騒ぎ出した。


「たまたま止まっただけだろう!」

「そうだ!そんなもんで認められるか!」

「フローラ姫と守れ!」

「マリーちゃんかわいい!」

「シズク様に踏まれたい!」


 予想通りな反応と予想外の反応が混じっている。他の二人はわかるが、マリー、実は人気あったのか? まあ攻撃手段があれなだけで、見た目は小柄で庇護欲を掻き立てられる美少女だからそういうのもでてくるか……。


「認められないんだってね。どうする?リカエルくん」

「そんな予感はしてたよ。もういいからみんなが言ったように数でも強さでも好きに調整してくれ」

「わーい!先生?聞いてましたか!リカエルくんが本気を出してくれますよ!」

「それは違う。エルはシャドーくらいに本気にならない」

「そうなんですか!?やっぱりリカエルくんはすごいんですね……!」


 先生がフローラ姫たちにわちゃわちゃにされている。先生、見るからに困ってるし、それに伴って機嫌が悪くなってるな……。


「だぁあああああ!うるさい!わかった!どうなっても知らんぞ?!」


 やけくそ気味に講師が新たなシャドーの準備に取り掛かろうと動いた。

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