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攻略者の卵たち

「知っての通り今日からダンジョンに潜る。パーティーごとのレベルに合わせて3グループに分かれてもらう。まずは我々が付き添いそれぞれのダンジョンで第3層までの案内をする。もちろん気を抜けば1層からでも死人は出る。覚悟していけ」


 そうは言ってもダンジョンの3層程度で死ぬならその辺の森でも死ぬからな。入学試験を突破していれば大丈夫だろうというところで、アカデミーとしてはチュートリアルを行うつもりらしい。

 2層からはモンスターが、3層にはトラップも仕掛けられ、それに伴ってたまにアイテムも取れる。


「とはいえ講師付きで死ぬことはないもんなぁ」

「まあでも、初めて潜るからなぁ、どんなところか楽しみだな」

「あぁ!」


 アカデミーは3つのダンジョンにある種の独占権を待っている。講師にとってはこの3つのダンジョンは庭と言ってもいいわけだ。


「なぁ、お前結局誰と組んだんだよ」

「ん?」


 見るとアッシュグレーの髪を逆立ててセットした男、同じクラスのグレックが声をかけてくる。なにかと目をつけられて距離を置かれている俺にも、気さくに話しかけてくれる貴重な存在だった。


「結局お前、Cクラスじゃ誰とも話してねえじゃんか。まさかBクラスと組めたのか!?」

「いや、Bクラスに知り合いはいないよ」

「だよなぁ。じゃあやっぱソロか。いまは無理だけどよ、しばらく頑張ってたら俺からパーティーに入れてくれるように言ってやるから、腐らず頑張れよ!」

「ありがと。困ったときは頼りにするよ」


 基本的にいいやつの塊のグレックなので、クラスでの評価も当然いいわけだ。俺に関わるというマイナスを犯していてもなお、クラスの男の中心はこいつだ。


「いいってことよ。そういえばなんかの間違いでフローラ姫に声かけられただけだろ?あれって」

「おいグレックー、またそんなの構ってんのかよ?」

「あいつはもうほっとけって言ったじゃねえか。よくよく考えたらフローラ姫がわざわざこっちにくるなんか、相当なんかやらかしてるだろそいつ」

「そうだよ、関わってたら巻き込まれるぞ」


 Cクラスの俺の評価はこういう形で厄介者として定着している。


「グレック、ありがと。俺は大丈夫だから行ってやってくれ」

「けどよ……くそっ!大丈夫だからな!俺がなんとかしてやるからお前も頑張れよ!」


 グレックは平民だが、貴族たちはBクラスに顔を出すことが多いため関わりも少なく、今のところグレックを中心として回るクラスに不満はない様子だ。


「さて、各自事前にパーティーリーダーから連絡があっただろう?それぞれの行き先ごとにまとまれ!私のところには攻略難度が最も高い鹿王のダンジョンに向かうメンバーだ」


 男性の講師が声をあげている。

 Sクラスまで一緒に外に集められたのは入学式以来かもしれない。みんなが一斉に移動を開始しているが、俺は動かずにいた。一応パーティーリーダーのはずだったが……。

 まああのメンバーなら鹿王か。いやCクラスの俺がいるから中間の精霊の間という選択肢もあるが、どうかな。まあそっちの方に向かおう。


「おいおいリカエル、どこ行くんだ?」

「お前は練習の洞窟でDクラスと留守番じゃねえのか?」


 Cクラスの数少ない貴族の男2人組が行く手を阻んでいる。入学式から貴族でありながらCクラスに甘んじていることに鬱憤をたまらせているためか、何かにつけて絡んでくる2人だ。面倒だな……。


「こっから先は俺たちみてえに選ばれた奴らだけが進むんだよ!お前みてえな」

「おーい!リカエルくーん!遅いよー!」

「へ?」


 絡んできた男2人は、頭越しに聞こえてきた声に固まった。


「フローラ様が?!」

「こいつを呼んだ!?」

「あー、ごめん、フローラ姫。クラスメイトに声をかけられて」


 通っていいな?と目で訴えかけると、2人組はニヤニヤ顔を凍りつかせて道を開けてくれた。


「もう、パーティーリーダーなんだからしっかりしてね!」

「申し訳ない、というか俺、一応リーダーなのに聞いてないぞ?場所」

「あー、先生サボったんだね……C組まで行くのが面倒だからって……」

「フローラ姫は聞いてるんだな……」

「まあ、言うまでもないってのもあったかもしれないけど。鹿王のダンジョンだよ」

「ありがとう」


 俺とフローラ姫を見て回りが騒ぎ出す。もう集合地点の兼ね合いからこの辺りはBクラスとAクラスがメインで見知った顔が少ない。


「なんだあいつ……」

「Sクラスのやつか?」

「いや、あれCクラスのやつだぞ!?」

「はぁ?!なんでそんなのがフローラ様に!」


 どこに行ってもこんな感じだな。幸い集合地点まで行くと半数近くが先日のあれを見ていたので表立って何か言う相手はいない。


「ん。エル、おはよう」

「ああ、おはようマリー、シズク」

「おはようございます」


 目立つ3人とセットになるとやはり周囲の目線は気になるな。

 その中でも一際敵意を感じる目線がある。こないだのあれにいなかったということはAクラスか、Sクラスでもそういうのに興味のないやつかだな。どちらにしても妙に粘着質な視線なので嫌に気になる。が、いまの段階ではどうしようもないな。

 4人で固まって他愛ない話をしながら、出発を待った。

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