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プロローグ

「君たちが目指す頂の1つは、彼になるだろう」


 入学式に集まった新入生たちの前でローブを着込み、いかにもという老魔法使いの話が始まる。

 学園長であるその老魔法使いが魔法で映し出した少年。いや、少女のようにも見える。

 長い髪で顔も隠れ、装備もほとんどなく、体躯も恵まれているわけではない。

 スラムから飛び出してきた子どもと言っていい程みすぼらしく見えるその外見に反して、ただ纏う魔力だけは異常だった。

 そして何より特徴的な点が、その二つ名に示されている。


「空の覇者エル。大陸一の攻略者、4人しかいないクリア者の中でも、ただ1人、2つのダンジョンをクリアした英雄だ」


 魔法の投影はその少年が最も得意とした、いや、彼だけが実現した飛翔魔法の様子を再現している。


「彼は君たちより若かったと言われている」


 若かった、というのは、当時という意味ではない。最悪のダンジョン、魔王の塔に挑み行方不明。これが公式の記録だ。


「ダンジョン攻略で得た力を用いて、人間で唯一空を飛んだ。2つのダンジョンをクリアし、その他各地のダンジョンを縦横無尽に駆け回り、開拓領域を広げた。発見したダンジョンも数多く知られている。彼の活躍するその姿は、皆の心にも焼き付いておるであろう」



ーー空を飛ぶ。 人間で唯一その翼を持つことを許されたのが空の覇者だった。



 それは1つのダンジョンだけでは得られなかった力。

 人が空を飛ぶためには、神の力と呼べるダンジョンクリアの証を2つも駆使する必要があった。

 だがそれによって得られた力は非常に強大だった。空の覇者には、敵と呼べる敵はいなくなった。どこへ行っても注目を集め、どこへ行ってもその期待を超え続ける。誰と戦っても空を制した人間には勝てない。それはたとえ狭いダンジョンの中であっても、これまで考える必要のなかった空中の移動という概念が加わるだけで猛威を振るった。

 誰も追いつけない。まさに攻略者たちの頂に到達し、誰もがその名に憧れ、少年もまた、無敵の攻略者としての立場に酔いしれていた。

 

 そして……


「そんな彼でさえ、ダンジョンに命を取られた」


 事実は違う。取られたのは命ではなく、空を飛ぶための翼であり"攻略者としての魂"だった。

 今の俺はもう、飛ぶことも出来ないただの生徒の1人だ。

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