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気に入らないから納得しないと考えてしまう自分。

作者: 梢田 了

沖縄でジュゴンが死んだ。

辺野古工事のせいで死んだと言う人もいれば、反対派が基地反対の理由作りに撲殺したのだと言う人もいた。

ジュゴンが死亡したのは辺野古埋立地と島を挟んで反対側の古宇利島だ。

だから、辺野古工事は関係ないと工事との因果関係を笑う人がいる。

辺野古工事により棲みかを奪われ餌場を取られ、そのせいで死んだのだと説明する人がいる。


自分はこの人らの言動が気に入らない。


今回の個体Bの死亡について、辺野古工事による影響は低いと思う。

詳しくは省く。調べればすぐにわかることでもあるからだ。

だけど、可能性はゼロじゃない。なぜなら因果関係が皆無といえるものではないからだ。

それでも、普通はこう考えるのではないだろうか。

古宇利島付近の工事や観光に使われる船舶に原因があるのではないかと。

本当にジュゴンを救う手立てを考えるのであれば、彼らの目撃情報に合わせて周辺の工事船舶や観光船舶に緊急事態宣言を出して因果関係を調べるべきなのではないだろうか。


そんなこと出来るはずがない。なぜなら沖縄経済へ大打撃を与えることになるからだ。

だからだろうか、辺野古工事にピントが絞られた。

県知事すらもそれを協議の場に出した。

それは即ち、他工事のジュゴンへの影響を考えず、ジュゴンの死を基地反対の道具に使うということだった。

県は主動でジュゴンの保護を優先せず、ジュゴンの死を基地反対の道具にすると態度で示した。


天然記念物だろうとなんであろうと、人の生死に関わるならそれを軽んじて構わないと自分は思う。

埋立工事の盛んな沖縄で、辺野古の米軍基地には反対するのに浦添の軍港や那覇空港で彼らの活動が圧倒的少数であるのも理解できる。

沖縄経済を潤すものに反対する道理はない。米軍基地が受け入れられないのは沖縄の地域としての特色上、反対の意を示すのが大きな価値となるからだろう。

事実として、賛成派が反対派へと回り、知事選挙を勝ち上がった。

それは戦略だ。理解はできる。

だが納得はしない。


以前投稿したエッセイにあるように、彼らが一貫していればそれでいい。自分は反対の立場であろうと応援する。

歩行者の権利を主張して港の中、ダンプトラックの前をゆっくりと歩く彼らを称賛する。

けれど、辺野古の歩道に座り込んで歩行者の権利を主張し、人々を通れなくさせている者たちがそれら全てを国による虐めだとする主張を、自分は認めない。

否、理解はする。国が完全に排除しようとせず、まるでガス抜きに付き合うかのように三十分程度警告した後に排除へ移り、排除されてダンプが基地の中に入れば仕事は終わったと帰る彼らの姿に、所詮はビジネスなのだと理解できる。

工事関係者に訴えると言いながら、特に邪魔できる作業がないと判断すればすぐに帰る数隻のカヌーに、やはりビジネスなのだと理解できる。


そんな彼らのビジネスのために沖縄県民は自らの生活を害され、工事関係者は民意に逆らう悪とされるのか。

そんなものは到底、納得できるものではない。彼らの中だけの話ならばいい。それが沖縄の総意であるとでも言うように報道されているのを、どうして納得できるだろう。


個体Bとされるジュゴンの死は、辺野古基地との因果関係がないとは言えない。因果関係があるとも言えない。

だがAとCは辺野古工事の影響を受けると考えられる。個体Bの死を無駄にしないためには工事の停止を考えるのも道理だ。

ならば、各餌場と目撃箇所の工事や観光業を即刻、止めなければならない。それがジュゴンを守るために手っ取り早く、そして確実な方法だろう。

できないのならば、大人しく個体Bの死を何が原因であるのか確定するまで指をくわえて黙するべきだ。

騒音は真実を隠す悪に過ぎない。県は正義を為そうとは考えていない。だが県の行動は悪でも、沖縄経済へプラスになるのなら必要悪だ。

ダブルスタンダードであっても他工事や観光業を、ジュゴンの命より重いとする県の考えを自分は受け入れる。

だから納得しない。自県民へ圧力をかける一部反対派の横暴を黙認して、彼らを守ろうとしない県政を。


そんな自分は、ジュゴンを守るための行動など何一つしていない。

工事を止めるための行動を、あるいは工事を進めるための行動を何一つとして行っていない。

ただの野次馬だ。安全圏から好き勝手言える低俗な人間だ。自分は自分が気に入らない。

だからこそ、安全圏から同じように好き勝手言う一部の反対派に言葉を投げられる。

ジュゴンの死を、ただの道具として扱う県政や、県知事の発言を恥ずかしいと思う。

この思いを忘れることはできないだろう。そんな自分の一片は、僅かにであるが気に入っている。

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