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第3話 散歩

俺はお弁当とシェアボックスすることになった。

 ガチャ…パタン。


 俺が入った箱は姫さまに持ち上げられ部屋を出た。

 これから俺がどうなるかは完全に姫さまにかかっている。


 ガタガタガタ。

 

 姫さまが歩くたびに揺れる俺とお弁当。姫さまには申し訳ないが、いつ壁にぶつかったりするかわからない恐怖は初めて乗った飛行機より怖かった。はやく目的地に着いて欲しいものだ。


「ひ…さ…どこ…かれ…つも…ですか」


 ――姫さまではない者の声が聞こえる。


「ちょっと街を見に行くだけよ。1人で大丈夫。」


 俺の真上から聞こえる声は姫さまの物だ。単純に距離が近いからなのか、他の声より大分クリアに聞こえる。


「わ……した、く……も………けて」


 何を言っているのかよく聞こえない。


 キィィィィ…。


 扉の開く音だろうか。なんというかこれから冒険が始まるようでわくわくしてくる。


************************


 お弁当と共に揺られ続けて大体15分くらい経過しただろうか。

 

「ついた、っと!」


 ドサッ。


 どうやら目的地に着いたらしい。地面につく感覚があり、すぐに姫さまが箱を開けてくれた。


 ――なんだここは。


 目の前に広がるのは綺麗な海だった。


「ヘズニ海岸っていうの。風が気持ちいいでしょ?」


 確かに気持ちいいのだが、スライムに会いに散歩しに来た俺はあまり素直に感動できない。

 そういえば、姫さまはニース草原に散歩しに行くとは一言も言っていなかった。


『――なんだろう。』


 俺は何故かこの景色にすごく見覚えがあった。勿論来たことはない、初めて見るはずだ。

 一体どこで見たのだろうか。もしかすると、この海がここがどこなのかを解くヒントになるかもしれない。


 ポォォォォォォォ。


 汽笛のような音が聞こえ、目を凝らすと街に向かう船が見えた。


「まずいわ。私がここにいるのを誰かに見られたらまた文句言われる…」


 姫さまは即座に俺が入った箱を閉じて移動した。


「ごめんね、せっかくゆっくりご飯食べようとしてたのに。」


 軽く息を切らしながら申し訳なさそうに言う。

 今度はどこに連れて行かれるのだろうか。


************************


 ――流石に気持ち悪い。


「結局ここになっちゃった。」


 姫さまがゆっくりと箱を降ろし、箱を開けてくれた。凄まじい解放感だ。

 まずはここが何処なのかを確認しなければならない。

 外を見るとそこはまた見覚えのある場所だった、しかし今度はちゃんと来た事のある場所だ。


『ここは――ニース草原だ!』


 念願の場所に着いた、あの船には感謝しなければ。

 ここまで来たらやるべき事は1つ。あのスライムを探すのだ。


「レインくんなんだが嬉しそうね、草原の方が好きなのかしら?」


 草原も海岸も好きだが今はどうしても草原に来たかったのだ、嬉しくもなる。

 俺はお弁当を広げる姫さまを横目にキョロキョロと辺りを見回した。


『どこにいるんだ、あのスライム』


 あいつを見つけなければここに来た意味がほとんどない。


『ちょっと探索してくる!』


 俺は言葉が通じなくても、少しでも意思が伝わればと思い姫さまに向かって言った。


「まってねー、もうすぐで準備出来るからね。」


 全く伝わっていないようだ、仕方がない。

 どうせすぐに戻るのだからいいだろう。俺はスライムを探すため走った。

 まずは俺たちが出会った場所に向かった。


『大体このあたりだった気がする。』


 姫さまから逃げていた頃に俺が隠れていた岩を発見した。


 ――岩の上に変な物が溶けている。あれはもしやと思い俺はその液体に声をかけた。


『おーい!』


 ……反応がない。やはり見間違いだったのだろうか。念の為もう一度呼んでみる。


『おーい!スライム!』


『――なんだよ、うるせーなー。ってお前昨日の毛玉野郎じゃねぇか』


 やはり見間違いではなかった、この液体はずっと探していたスライムだった。こいつに聞きたいことが山ほどあったのだ。

 

『聞きたいことがあるんだ!』


『なんで俺なんだよ、他の奴に聞けよ。』


 相変わらず口の悪いスライムだ。

 他の奴と言っても俺はこいつ以外に魔物を知らない。今は本当にこいつだけが頼りなのだ。


『お前しかいないんだ、頼む…。』


 俺は猫なりに頭を下げて誠意を見せた。


『……わかったよ。それで、なにが聞きたいんだ?』


 話せばわかってくれる奴だった。俺は心底嬉しかった。




 

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