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第一章 新たな出会い−3−

移転暦二十四年七月


 スウェーダン王国首都ストックホーン、そのほぼ中心にある首相公邸においてある会議が終わろうとしていた。出席者は同国首相フレドリク・ライフェ、国防大臣リシャルト・カールソン大将、経済大臣フレスト・ワイマー、前東部艦隊所属重巡洋艦『ストースン』艦長ステファン・ヨルムンド中佐のスウェーダン王国側人間と現第五艦隊付参謀志村一郎中佐、ロリアムンディ総督府付外務事務官上田雅治の日本側人間であった。

 彼ら二人は日本船籍の小型高速貨客船によって一週間前にスウェーダン入りを果たしていた。むろん、第五艦隊所属護衛艦二隻の護衛付である。護衛艦二隻はストックホーンに最も近い軍港、ストックハーツに係留されていた。この貨客船には先に第五艦隊に救助された五人の軍人たちが乗船し、祖国への帰還を果たしていた。

 日本側二人の所属は暫定的なものであり、本来所属する部署とは違っていた。上田雅治事務官は日本国外務省西中海担当局所属であり、この時は首相および天皇の親書を携えていた。親書は三日前に直接フレドリク・ライフェ首相および現国王カール・グステインにそれぞれ手渡していた。志村一郎中佐は統合幕僚本部参謀であり、かの大井保大佐の防衛大学の一期上であった。この時は五人の軍人の帰還の確認とスウェーダン軍との会談が目的であった。

「上田事務官、わが国としては貴国の提案を受け入れる方向であります。可能な限り早く実務レベルの会談を望む、と小泉首相にお伝え願いたい。これが私の小泉首相への親書です」とフレドリク・ライフェ。

「たしかにお預かりいたしました。必ず小泉首相にお届けすることを約束します」親書を受け取りながら答える上田事務官。

「志村中佐、相互情報提供については我方は同意します。また、貿易航路相互護衛案については我国は東部艦隊を持って当たることを上層部にお伝えください。もっとも今は燃料がないため、早くとも八月になることをお伝え願いたい」その顔に苦渋の表情を浮かべながらリシャルト・カールソン大将がいう。

「了解しました、大臣閣下。必ずや幕僚本部長にお伝えいたします」志村中佐。

 この時、日本側が提案した要件は次のようなものであった。

1.日本国はスウェーダン王国に大使館の設置を望む。

2.日本国はスウェーダン王国に必要な情報を提供する。

3.日本国はスウェーダン王国と通商条約を早期に締結する。

4.日本国はスウェーダン王国に経済援助を行う。

5.日本国はスウェーダン王国に相互不可侵条約の締結を望む。

6.日本国はスウェーダン王国に対プロイデン共同戦線を希望する。

と言ったことであった。もっとも六番目の項目は永続的なものではない。具体的に言えば、原油五十万klの無償提供。その後の有償での提供。護衛艦艇の派遣などであった。当初、武器援助なども入ってはいたが、これはスウェーダン王国側が固辞したため、実現しなかった。

 スウェーダン王国は西中海南岸中央部に出現した国であった。西中海南岸は北岸と違い、緩やかな弧を描いて黒海沿岸まで続いているが、そのほぼ中央、シムルの北方に三百kmほど北に突き出た角のような半島があり、その半島を含めて沿岸に沿って西方に存在していた。東や南はシムル国であり、西方には未開の大地があった。面積は日本の二倍ほど、人口は約一億人、工業レベルはこの地で日本が接触した中では最も進んでおり、1990年代の日本と同レベルであった。もっとも核機関は発展しておらず、化石燃料である石油に頼っていた。

 軍備は海軍が東部、中部、西部の三個艦隊あり、戦艦二隻、重巡洋艦八隻、軽巡洋艦三隻、駆逐艦二十四隻が各艦隊に配備されており、その他補助艦艇百隻という戦力であり、陸軍は十二個師団で戦車四百八十輌、総兵力十三万人という戦力であり、空軍は二十個戦闘航空隊四百八十機、二個輸送航空隊十八機からなる戦力であった。もちろん海軍および陸軍にも航空隊はあり、総数六百機強を数える。

 戦艦はすべてが同型艦で三万五千トン級、重巡洋艦は一万五千トン〜一万トン級、軽巡洋艦は八千〜六千トン級、駆逐艦は三千〜二千トン級であり、航空母艦は配備されていない。潜水艦も配備されていなかった。これは移転前には浅く巨大な海水湖の沿岸に国が存在したためだと思われる。むろん、浅いとはいっても五十mほどはあったといわれ、艦艇は外洋航海可能なタイプであった。

 現主力航空機はSA54ビヒャールといい、サーブ37ビゲンに似た複合三角翼を持つ戦闘機で、この一機種で戦闘、爆撃、偵察とすべての任務につく優れた機体であった。この機の性能は本国空軍が装備するF−2戦闘機に勝るものであったことは後の軍交流において行われた模擬空戦で判明する。が、F−6戦闘機とは同等とされた。

 現主力戦車はインペルが装備するIJ90に勝るものであり、その主砲は百三十mmライフル砲であった。本国陸軍が装備する最新鋭戦車十八式戦車と同等の性能を持っていると思われた。ちなみに十八式戦車の主砲は百二十七mmライフル砲であった。

 これら日本本国が装備する兵器に劣らぬ装備でありながらプロイデンに苦戦しているのはただひとつの理由、そう、石油であった。現在、スウェーダンでは発電のみ液化石炭を使用していたが、それ以外はすべて石油用であった。移転前には隣国に産油国が存在し、豊富に輸入できていたため、他のエネルギー開発が遅れていたことがわかっていた。現在、スウェーダンで採掘される資源はシリコン鉱脈やタングステン鉱脈、鉄鉱石などであった。


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