依頼受注完了
じっと写真を見つめる俺を不思議に思ったのか、さくらちゃんが声をかけてくる。
「どうしたんですか、鉄さん。」
「ん、いや。この子、どこかで見たことあるような気がしてね。」
「えぇ。鉄さん、こんな歳の女の人と知り合いになることなんてありますか。」
「知り合いではないんだけれど、何だか見た覚えがあるような気がするんだよ。」
「怪しいなぁ。」
何が怪しいのか、さっぱり分からないが、何かを疑われているらしい。とりあえず、写真をポケットにしまうことにした。
「ところで、依頼料のことなのですが。」
「あ、はい。おいくらになりますか。」
「まずは、着手金として2万円。以後1日ごとに1万円いただきます。交通費などは、実費で請求させて頂きます。妹さんが見つかったら成功報酬を別途いただくという形になりますが、よろしいですか。」
「はい、結構です。成功報酬というのは、どのくらいになりますか。」
「状況次第ですね。あっさり見つかれば、少額ですが、危険なことがあったりすれば、それなりの金額をいただきますし。」
「なるほど。わかりました。それで結構です。着手金は、今お渡しすればいいですか。」
「そうしていただけると、助かります。」
もらった金を財布にしまう。これで、今週は何とかなる。さくらちゃんに渡すバイト料も大丈夫だ。
「では、高林さん、後ほど伺います。」
「わかりました。私は先に家に戻っています。どうか、早く妹を見つけてください。」
「お任せください、全力を尽くします。」
高林は、念を押すように俺の目を見ると、出てきたときと同じように早足で出て行った。
依頼人が出ていくのを見送ると、おれはタバコに火をつけながら、依頼の内容について考えることにした。