3、肉体が恋しかったんです
そこで私はふと考えた。上半身が出せたなら、下半身を出すことも可能なのではないか、と。
うん、その方がいいしやってみよう。私は人間として二足歩行したいんじゃー!
「んー、まあとりあえず、めんどいから体全部出してみていい?」
「はい……?」
「せーの、ふんぬぅぅー!」
私は手を自分の木の幹に押して当てて、下半身のイメージをしながら、自分を引っ張り出す、というより引っこ抜こうとする。
おっおっ?なんかこう、いい感じに出せてる気がする。頭の上ではロリ妖精が「がんばー、がんばー」と天使の応援をくれる。一緒に乗ってるショタ妖精は私の頭をペチペチ叩いてるだけだけど、多分応援のつもりなんだろう。ロリショタの応援があればなんでも出来るね!
「ぬぅぅううあぁあっ!」
ポーン、ベチャッ。
抜け出した瞬間、私は地面に激突する。結構な高さから体生やしたから、割と地面に当たった時に痛い。
ロリ妖精が降下してきて「大丈夫ー?」と強く打った頭を撫でてくれる。もうそれだけで完全復活だよありがとう。
「だ、大丈夫ですか?まさか本当に体を出してしまうなんて……」
「大丈夫大丈夫、痛いけど問題ない。ようやくスッキリした感じだし」
うん、前世が人間だったかね、ようやく全身人間になれてスッキリした。でも、少しだけ違和感がある。
こう、未だ本体の世界樹の方と繋がってる感じというか、感覚を共有してるというか。
「なんか、世界樹とまだ意識が繋がってる感じするんだけど、なんでだろ?」
「……もしかすると、それは分身体のようなもので、本体は世界樹なのかも知れませんね。前例がないので詳しいことは分かりませんが」
あー、成程。だから地味に意識が分かれてるような感じがするんだろうな。
私は立ち上がって、ちょっと木の頭を揺らすイメージをすると、ブァッと木の葉が揺れて落ちる。枝を伸ばすイメージをすると、こちらに枝が伸びて来る。それをロリ妖精が楽しそうにつついたりする。うん、思った以上に上手く動かせるな。
「……にしても、私が世界樹であることは認めるよ。でも、世界樹って何すればいいの?というか、この世界のこともよく分からないから、世界樹がどういった物かさえもよく分からないんだけど」
「でしたら、私達が知ってる範囲であれば全て教えて差し上げますよ。ですが、普通であれば世界樹の意思は目覚めた時から大体のことを理解していると聞いているのですが……」
「無知無能ですごめんなさい」
うん、全くもってなにも知らないね。役に立てない一般人です。
そう私が悲観的になっていると、空から不思議と声が聞こえてくる。
『オトドケ!オトドケ!セカイジュ二オトドケ!』
なにかと思い空を見上げると、そこには少し厚めの手紙を咥えた小鳥がいた。え、鳥喋ってない?口手紙で塞がれてるのになんでや?私が疑問に思っていても、平気で小鳥は普通に私の前にやってくる。
「この世界には喋れる小鳥でもいるの?」
「えー?小鳥しゃべってたー?」
「……特に何も聞こえなかった」
「え?」
再度私の頭の上に乗った双子妖精はまるで小鳥が喋っていた事など聞こえてなかったかのように言う。
ん?何?私にしか聞こえてなかったの?そう思っていると、女王様が説明してくれた。
「貴女様は世界樹という生命を統べる力を持っているため、知性ある全ての生物の思考を読み取ることが出来るのでしょう。ちなみに、私も妖精王故、知能の高い生物の思考なら読むことが出来ます。知能が低い生物は思考も薄いため、私ではあまり聞こえないのです。今この小鳥からも囁き程度にしか聞き取ることが出来ませんでした」
「ん?でも私、今の女王様の思考聞こえないよ?」
「多分まだ力が安定していないために、相手の方から伝えようとしない限りは聞こえないのでしょう。力を使いこなせるようになれば、任意でどんな生物の思考も読むことが出来ると思いますよ。先代もそうでした」
「成程、任意発動なら便利だね」
嘘つきとかすぐに分かるじゃん。それに、相手のことを考えてあげて聞かない時は聞こえないように出来るのなら困ることもなさそう。悪用しなきゃいいっしよ。しないと言い切りもしないけど。
『テガミ!テガミ!カミサマカラ!』
「神様直筆?!」
「「「え」」」
もしかしてこの転生についての説明だろうか。だったら先に読まないと。色々と思考をまとめるためにも。これからを考えるためにも。
後ろではなんか妖精が揃って固まってるけど、世界樹が人の姿になるなんてことを見たあとにそんな驚くかい?私はもう驚かないよ。どうせ最初から神のせいだろとか思ってたし!
私は小鳥の咥えた手紙を受け取る。受け取ってやると、小鳥はさっさと飛び去っていってしまったので、私は手を振った。
……そういや女王様に聞こえなかったってことは、あの鳥は知能が低い方なのか。なんか悲しいな。まあ鳥だしなー。
近くに世界樹から湧き出る水により出来た池があったので、そこに腰掛ける。私が座ると、双子妖精は私の頭の上でうつ伏せになって手紙を読む気満々で、それを見た女王様は「失礼します」と断って私の右肩に座り込んだ。可愛いものに囲まれて幸せですわー。
まあ、とりあえず神様からの手紙を読むとしますか。
私は封筒から手紙を出すと、神様直筆手紙を読み始めた。