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雪うさぎ(冬)
過去が
どうしようもなく近い…
そんな一瞬
気がつくと
雪が降りはじめていた。
窓からこぼれる灯りを受けて
雪は白くはらはらと舞っていた
いつもはすっかり
忘れていた記憶が、
雪明かりに映し出されるように
鮮やかに心の隙間から
顔を覗かせる…
思いだしたくないことと
忘れられないことは、
しばしば一致して
心をつまずかせる…
窓から見る雪は美しく
わたしを惑わせる
それにつられて作る
雪うさぎ…
手はみるみるかじかみ
唇が紫色に変わる、
部屋に入ると、
父さんが、
「いつまでも子どもみたいだな」と
少し呆れ顔で、ほほ笑んで
あたたかいミルクをいれてくれる
雪をきれいと思うより
雪を寒いと感じる人と暮らしていて
飲む、ミルクを
人は たぶん…
幸福と呼ぶのだろう。
大切なのは
過去に何があったかではなくて
今、
心の中に何が残されているかということ…
過去は窓を通して見る雪のようなものだ。
雪桜




