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【断頭台の騎士(ナイト)】


ギャギャギャ ギャギャギャッッッ

ドンッッ!!!!

────…ひゅどッ!!


ジーク「出たぞッ!! ソ連の中戦車が3両ッ!! T34の────…くそッ!! 正確な型式までは把握出来ないッ!!!! ポイントはH22-35-3ッ!!」


フリッツ『…了解。 その位置なら最後尾のStGとHetzerで待伏(アンブッシュ)を仕掛けるぞ。 追撃している敵部隊を迎撃、牽制しろ。 ────…カウント8、射撃用意。』


狭い通路を戦車部隊が駆け抜ける。

足の速いPantherとPz.IVを主軸に、威力偵察をしているジーク達が敵を発見した。


ジーク「牽制しろ! Feuer(フォイア)ッ!」


─────────…バグンッ!!

ガシャアンッ!


威嚇射撃に撃ってはみたが当たる訳もなく、

見当違いの建物に風穴を開けてしまった。


大体の予想通り、街にはソ連の戦車隊が展開されているようだ。


最初の会敵はT34中戦車(型式不明)。

通路を通り抜けた一瞬だけしか見れなかったので正確な口径、型式までは把握出来なかったが車体の向きからして間違いなくこちらのルートとぶつかる位置関係だ。


極近距離(クロスレンジ)の戦闘では砲の優劣、装甲の優劣がモノをいう、

車両特性は勿論、搭乗員の練度すら命取りになる

そしてその優劣さを埋めるモノ…


それは────


フリッツ『────…Feuer(フォイア)

ジーク「Feuer (フォイア)!!」


ズドッ…ドォオォォンッッ!!!!



ボギュンッ

ボンッ!!!!!!!!



戦術(タクティクス)』である


StGやHetzerなどの固定砲塔の突撃砲や駆逐戦車の待伏(アンブッシュ)は第二次世界大戦中に使われた最も常套(ポピュラー)な戦法だ。


本来なら中遠距離で森の中から擬装した戦車が取る方法だが、

進行ルートが限定され、先手が打てる状況が作りやすい市街地でもその戦術有利は変わらない。


ハイネル(Hetzer車長)「敵先頭車両撃破(アイネヴィッシュ)ッ!! 車列が乱れたぞッ!! 潰せ潰せーッ!!!!」


リッケルト(StG.III車長)「徹甲弾装填(パンツァーグラナーテラーデン)、反撃させるなッ!!」


ドドンッ!!!!

バババババババババババッッッ!!!!!!

チュンッ チュインッ…


フリッツの合図とほぼ同時に通りの角から顔を出したT34中戦車(T34/76)の砲塔と車体に徹甲弾が2発叩き込まれる。


距離約70yard(約64m)という超近距離で放たれ砲弾はT34/76の弾薬庫を貫き、爆散せしめた。


爆発音が鳴り響き、車両から辛うじて生きていたソ連の搭乗員が火達磨になりながら飛び出してくる。


バララッバララッバララララララッ!


それらを機銃で薙ぎ払い、

主砲で後続の車両を迎え撃つ。


フリッツ「(まずは歩兵(ポーン)を潰したか。 だがあの程度では痛手にはならない。 …さぁ、どう出る?)」


口元を隠しながらフリッツは考える。


まずは中戦車の足止めに成功した、

欲を言えばもっと数の多い部隊を2両で抑えれたらよかったのだが、そうも言っていられない。


ジーク達の情報次第で作戦の中身が大きく変わる…

フリッツは常に思考を止めずに戦わなければならないのだ


ウィル(Pz.IV車長)『こちら先行のIV号ッ!! 新たに敵発見ッ!! 前方に敵対戦車砲ですッ!!!! 場所はG33-16-5ッ!!!! 国籍不明ッ!!!!』


フリッツ「迂回する余裕は無いッ! 突破しろ、対戦車砲ごと踏み潰せッ!」


無線越しに『Jawohl(ヤヴォール)』と聴こえ、

遥か向こうのブロックで砲声と破壊音が鳴り響く。


──────────ズンッ……!


…音の感じからしてIV号の砲じゃない。


情報では対戦車砲と言っていたが…

駆逐戦車が前線に出てるのに何故"敷設された対戦車砲の陣地"がある…?


何かおかしい…

なんだこの違和感は…


ウィル『被弾したが突破したッ!! 損害無し、戦闘継続可能! あの感じはアメリカ軍か…? 何人か歩兵もいたが…戦車の姿は見えない。 前進するッ!!』


フリッツ「────」


…違和感が、やはり拭えない。


そもそも「味方の支援」に来ているハズの奴らが前進中に「敷設された対戦車砲陣地」に真正面からぶつかる訳が無い…

だとすれば陣地より後退した位置に味方が居るはずだ。

それを追う歩兵も戦車もいるに決まってるのにその様子は無い。


街中にはソ連の中戦車…

路地にはアメリカの敷設済み対戦車砲陣地…

そして、行方知れずの味方部隊…


今一度、頭の中で街の地図と位置関係を整理する。


仮に敵が西側の合流地点にいる味方を追っているならその後から来たオレ達は敵の「背後」か「側面」を突ける筈だ。


だが敵は、西側に居るであろう味方を追っている様子も無く、ましてや後から来たオレ達の"迎撃"に意識が向いている。


まるで"最初から追っている部隊などいない"かのように────


フリッツ「────…ノインシュタット。」


ジーク『なんだ? どうした、マイゼンブーク。 戦車砲陣地は無事に突破した、この調子なら予定通り合流地点に迎える、認めたくないが大した指揮能力だな。』


嫌な…

予感がする…

考えれば考える程、胸騒ぎが止まない。


何故今になってあの(ハインリヒ)の顔が目に浮かぶ……?


フリッツ「……お前、今の時点で味方(ドイツ)が戦っていた痕跡とか戦車の残骸を見つけたか? どんな些細な痕跡でも構わない、歩兵の死体でもなんでもいい。」


ジーク『────…いや、どれも未確認だ。 だがゴッツは確かに「戦闘の痕跡はある」と言っていた、オレ達はその報告を信じてるし、何より、この任務はハインリヒ長官からの勅命だ。 間違いがある訳が無い。』


フリッツ「…!」


フリッツの問いかけに、ジークは応えた。


そして確信する、

「これは偽りの任務だ」と。


仮に味方と合流しても敵との戦闘は避けられない。

そもそもこちらの部隊の規模は明らかに「撤退支援」のそれを越えている。


少なくともソ連軍、アメリカ軍がこれだけ広く展開している街にこの規模の戦車隊が来れば撃ち合いになるのは必至。


撤退戦ならば小規模の歩兵隊や小型の車両を随伴して隠密に任務を済ませればいいだけだ。


必要最低限の機甲戦力さえあればいいのに20両も装甲車両を駆り出す理由が分からない。


わざわざこれだけの部隊を率いるならば、

「合流地点」などを設ける必要すら無い。


一挙に敵の背後を突いて、殲滅後にゆっくり回収すればいい。


何か…別の目的がある。

しかもそれをジークにも伝えていない。


フリッツ「(誘導されている…のか? あの様子だと航空支援が行われるような感じじゃない… なんだ…この…何かの生贄にされている様な嫌な感じは…!?)」


大規模な航空支援がある場合は安全地帯を設定して爆撃、終了後に攻撃という流れは有り得るがジークの様子を見るとそうではない。

明らかに作為的に「そう動くように」誘導されている。


大方、ハインリヒの勅命とあって作戦内容を疑う事をしなかったのだろう、

盲信もここまで来ると滑稽だ。


フリッツ「…作戦変更だ。 オレ達も西側の合流地点に向かう、誰か操縦士(ドライバー)と変わってくれ。 東で待機中のTiger(ティーガー) Iと後方のJagdpanther(ヤークトパンター)にも通信を頼む。」


どのみち此処で中央を押さえても意味があるとは思えない、

まして胸騒ぎは酷くなる一方だ。


完全に手詰まりになる前に、こちらも移動しよう。


フリッツは無線手に通信を頼み、キューポラを閉めて車内に入ると、

不意に、こめかみにひんやりとした何かを押し付けられた。


フリッツ「────…なんのつもりだ?」


視線を左に向けると、そこにはP08拳銃を構える無線手、アレクシスの姿があった。


アレクシス「…残念ですが、その命令には従えません。 貴方は此処で敵を足止めして…いや、貴方は此処で連中の『餌』になって貰います。」


生気の無い眼が、フリッツを睨む。


酷く既視感を覚えるその眼に、

「…ああ、お前も"そう"なんだな。」と小さく呟いた。


アレクシス「──…察しがよくて助かります。 『僕達』は第12SS装甲師団、HitlerJugend(ヒトラーユーゲント)。 今回の作戦では貴方の監視と管理をハインリヒ長官から任されています。」


偽の無線手…彼の名前はアレクシス・エーゲル。

所属部隊は第12SS、HitlerJugend(ヒトラーユーゲント)

第1SSの指揮官を指令系統に持つ、未成年の兵士達。


16歳から18歳程度の未成年で編成された予備師団…の筈だが、

優れた指揮官と勇猛さで一線級の評価を得た、と噂されていた部隊だ。


まさか、本当に実戦投入されていたとは…


フリッツ「…胸糞悪い、例の『成り損ね』共か。 そういや、お前らの師団長はオレと同じ名前だったか? 第1SSの時、よくオレと戦績を比較されて悔しがってたのを覚えてるよ。 ははは。」


拳銃を押し付けられたまま不敵にフリッツが笑うと

ガツンッと音が鳴り、車体に身体が叩きつけられる。


口の中にじわりと血の味が広がり、一瞬吐きそうになった。


アレクシス「…フリッツ・ヴィット師団長を侮辱しないで頂きたい、あの方は貴方と違って立派に責務を果たされたのです。 …というより、貴方は今のご自身の状況を理解出来ていないようですが? 僕が引金を弾けば貴方は死ぬ、貴方の命は僕が預かっているんです、あまり僕を怒らせない方が賢明ですよ。」


押し付けられる銃口に、更に力が入る。


…なるほど、盲信野郎だけでなく狂信者まで居るとはね

この国もいよいよ根元まで腐ったらしい、

年端もいかない子供(ガキ)戦場(こんなとこ)に送るなんてな。


フリッツ「…てぇなッ… …チッ…それじゃあ、以降の指示はお前が出せ、小さな騎士(ナイト)様。 非礼の詫びにオレが砲手(ガンナー)をやってやる、ジークには適当な理由で誤魔化しとくんだな。」


アレクシス「────ふん。 物言いは気に食わないですが、いいでしょう。 …現時点より当車両は第12SS装甲師団、僕の指揮下に入ります。 では、手始めに、Panzarvor(パンツァーフォー)


負傷した操縦士に代わって元砲手がTigerIIの操縦を務め、空いた砲手席にフリッツが座る。


指揮を執るは18歳の青年、アレクシス・エーゲル。


陰謀と策略が渦巻く街に、

取り残されたTigerIIのエンジン音が虚しく響く。





第29部 【断頭台の騎士(ナイト)】 完

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