【裏切りの代償】
第1SS装甲師団 アドルフ・ヒトラー…
全部隊の中で常に最新鋭の装備を寄与され
最大級の戦力を保持する最強の部隊。
総統閣下に絶対の忠誠を誓っているハズの兵士が何故……ッ!!
無線の先にいる男は、嘘か真かその部隊に所属していると言った。
本来なら敬意を表して黙って退くが、
何故か彼はこちらを殺す気だ。
考えれば考えるほど納得がいかない、
彼がこちらを狙う理由はなんだ…!?
ジーク「…馬鹿なッ!! ならば何故貴様が味方の我々を撃つッ!! 同じ武装親衛隊が…何故だッ!! 答えろ、フリッツ・マイゼンブークッ!!!!」
込み上げる怒りをそのまま無線に乗せる。
彼はこの状況でも余裕があるのか、飄々とした声で答える。
フリッツ『…同じ…? 冗談はよせ、貴官らとオレとでは根本的に成り立ちが違う。 引鉄を引く事に理由を求めている時点で、貴官らには一生理解出来ない、分かり合えないさ。』
────…ォンッ!!!!
ドォォオォッ……!! バラバラ…ッ
着実に88mm砲の着弾が正確になっていく。
防盾を掠めた初弾、次はライト、そして地面…
じわじわと射角を下げて車体を狙っているのだろう
抉った地面の破片がバラバラと舞い、Pantherに降り注ぐ。
ま ず い
今ので縦軸は調整された
次は横軸… Pantherの車幅だと被弾面積が大き過ぎる
ここは被弾覚悟で……ッ!!
ジーク「全車、跳弾角度を取れッ!! 直撃に備えろ、この距離ならTigerの56口径を耐えられるッ!! 凌いだら全速力で散開ッ!! ────来るぞッ!!!!」
ギャギギギギッッ!!
ドォッ ドッドドルルンッ!!!!
唸りをあげて3両のPantherが車体を傾けた。
泥を跳ね上げ、Tigerの88mm砲に備える。
砲音から推測して着弾までかなりの距離がある、この跳弾角度なら────…ッ!!!
────────────…ズヴボッ!!!!
ズ…ッゴンッ!!
しかしその淡い期待も、88mm砲の前にあっけなく散らされた。
狙われたのはマイヤーが乗る2号車、観測の為にやや前に出ていたところを真正面から撃ち抜かれたようだ。
マイヤー『~~~~ッ!! 敵弾…か…貫通ッ!! くそぉッ!! こちら2号車、装填手がやられたッ!! 砲塔をあっさり抜かれたぞ、あれは88mm砲じゃないのかッ!?』
無線から響く、怒声と慟哭。
砲塔正面を通り後部まで徹甲弾が貫通、その軌跡の間にいた装填手が負傷したらしい。
ジーク「(…ッ 完全…貫通…だと…ッ!? これだけの距離でPantherの砲塔正面を…ッ!? 馬鹿な…ありえない…ッ!!)」
この一撃を凌いで散開… と伝えたが出鼻を挫かれた
まさか貫通するとは夢にも思っていなかった。
……ッ……いや、ありえない…ッ!
近距離ならともかく遠距離で56口径の88mm砲で完全貫通など────……
フリッツ『良い跳弾角度だった。 当たり前に撃っていれば容易に跳弾しただろうな。 …だが生憎このTigerは改良型でな、主砲は71口径88mmを使っている。 並の小細工で弾けると思うな。』
ザザッと無線から敵の…フリッツの声が響く。
伝えられたのは、更なる衝撃。
ジーク「は…8.8cm KwK43 L/71…だと…ッ!? ふざけるな… Tiger IIと同じ主砲を積んでいるTiger Iだと…ッ!? そんな車両見たことも聞いたことも無い、戯言だッ!!!!」
奴の乗るTigerが本当に71口径の88mm砲ならいかなる距離でもこちらは貫通される…ッ
装甲は最早アテにならない、ならば…ッ!!
ジーク「…全車、機動戦で行くぞッ!! 2号車は迂回して目的地に向かえ、3号車は右を、オレは左を攻めるッ!! 足を止めるなッ!! 進めぇッ!!!!」
ドギャギャギギギッ!!!!
ドルンッ ドルンッ ドドドドドッ
無線を合図に各車が全速力で加速する
エンジンが高速で回転し、履帯が泥を巻き上げる
ジークは双眼鏡を片手にキューポラを開けた
雨は…すっかりあがっていた
………
……
…
Tiger 車内
────…カコォンッ…!!
ガラン ガラン…ッ
砲撃の後、薬莢を弾き出す
乱暴に蹴られたそれはあの日、ナボコフのIS-2を貫いた硬芯徹甲弾の薬莢…
タングステンと呼ばれる金属で造られた弾頭は超遠距離でも極めて高い貫通力を誇る優れものだ(ただし砲身寿命を縮めやすい上に、非常に貴重な弾である)
フリッツ「出し惜しみは無しだ、さぁ…来いッ!!」
ガポンッ!!
ガシュンッ
砲弾が詰まったラックから硬芯徹甲弾を取り出し、装填する。
閉塞機が閉じれば砲撃可能な状態だ。
Tigerの88mm砲弾の重量は約10kg、熟練の装填手なら5秒程度で再装填出来るがフリッツは普段車長として搭乗している身だ。
もちろんある程度の経験はあるが、装填はどんなに頑張っても8秒は掛かる。
そこから再び砲手席に着き、照準、そして砲撃…
フリッツの技能では砲撃から再装填、再砲撃まで約30秒。
Pantherならこの間に6発以上砲撃し、一気に距離を詰めてくる。
求められるのは素早い判断と正確な砲撃だが、
奴らは2両で散開した、損傷した1両の動きが気になるが今は向かってくるPantherの迎撃に集中したい。
フリッツ「…ッ ……速いな…ッ だが…ッ!!」
全力で砲塔旋回のハンドルを回し、照準を合わせる。
距離と相手の速度、風や運動エネルギーの減衰と重力から来る落下差を考慮して、撃発のスイッチを押し込む。
ガッドォオォォォンッッ!!!!!!
──────────………ボグンッ…ッ!
僅かな時間差の後に、砲弾が地面を掘り返すのが見えた。
目標のPantherの目の前に着弾したが、奴らは更に加速し蛇行しながら迫ってくる。
フリッツ「────…ちぃッ!!」
恐れず、退かず、ひた進む。
騎兵の名に恥じないその機動に、一瞬怯んでしまった。
その隙を、ジーク達は見逃さなかった。
────…ヒュヒィンッ!!!!
ドガッ!!
ヂュギンッ!!!!
フリッツ「…ッく……う…ッ!! 当ててくるか…ッ!!」
ほんの僅かに出来た隙…
その一瞬でジーク達は2発、Tigerの車体に徹甲弾を命中させた。
75mm KwK 42 L/70… Pantherの持つ長砲身70口径75mm砲は非常に優れた性能の主砲だ。
Tigerにも勝ると劣らない貫通力の徹甲弾が襲うも、圧倒的な重装甲に阻まれた。
フリッツ「行進間射撃で当てるとはな…ッ いい腕だ…ッ!!」
さらっとやってのけてきたがジーク達は行進間射撃(移動しながらの砲撃)を命中させてきた、かなり熟練の兵士達が乗っているのは容易に理解出来た。
そして…その怒りも──────
ジーク『捉えたぞ、マイゼンブークッ!!!』
無線からジークの声が響き
先程より強い衝撃がTigerを、フリッツを襲った
────…ヒンッ
ボゴォンッ!!!! ドォッ!!!!
ガシャァンッ…!!
フリッツ「~~ッ!? 榴弾…かッ!? ふ…ふふ…ッ いいぞ…ッ!! 来い…ッ!! もっとだ!! さぁ、来いッ!! 撃て…オレを撃てぇッ!!!! …はやく……はやく…………殺してくれ……ッ!」
零れた慟哭と、涙
フリッツの中で、何かが壊れてゆく
これは明確な叛逆行為だ
忠誠を誓ったあの人への
護ると誓った国への
そして
自分への裏切りだ
第15部 【裏切りの代償】 完




