葵の一日 part3
少年Aはバッシュのような立派な兵士になれるようにとにかく訓練を真面目にやった。ところが訓練と称して盗みをさせられたりするうちにだんだんこれが騎士団の訓練かわからなくなり、今日の活動でで悪いことだと確信していた。
帝国へ戻ったら皇帝に知らせようと考えながら抜け道を通っていると、ザンギの取り巻きの1人である魔法使いのトットリーがやってきた。ちなみに風の中級が使え、初級だが水まで使える実力者だ。
「今日の成果はどうだった?」
「はっ!シルバーランクの冒険者1人から追剥ぎをし、小屋に2名の見張りとともに捕えております。」
「それだけか?」
「そのとおりです。久々の獲物でしたが徒党を組んでおらず1人でした。」
「そうか、では強い魔力の籠もったその土は誰のだ?」
「はっ!!おっしゃる意味がよくわかりません。」
「馬鹿はいらん、お前は降格だ。後ろのお前、ここら辺の魔力を探ってみろ!」
言われた盗賊が魔力を集中すると少年Aのポケットに魔力の籠もった小石が入っていることがわかる。すぐに小石を奪い、自分の魔力で覆い直した。
「ここまで付けられたな?いつも魔力の流れには注意するようにいっているだろう、奪ったものをこっちへ渡して引き返せ。私は土魔法を使える者を呼んで埋めておく。」
「「「「「はっ!!申し訳ございませんでした。」」」」」
トットリーはついに軍が動き出したのかもしれないとザンギに報告するため急いで帝国へ戻った。残された盗賊たちは再び森に出て、来た道を戻って帝国へ帰った。その途中小石を入れられていた少年Aはスパイの用意をかけられて痛めつけられ、捕まえられた冒険者と同じ小屋へ放り込まれた。
地上から追いかけていた葵は自分の魔力を籠めた小石が別の魔力で覆われたため追跡することができなくなった。そのため帝国に戻り、先ほど盗賊行為を嫌がっていた少年を探すことにした。
皇帝は大臣たちと会議をしていたため、夜まで待ってから皇帝に話に行った。
「アレク、少年の兵士で小柄で痩せている気の弱そうな奴はいるか?」
「騎士団ごとに人選は任せているからわからんが後で大臣に調べさせよう。なにか情報はわかったか?」
「ああ、やはり北の騎士団が盗賊行為をしているのは確かだな。ただ誰の命令かはわからない。魔力探知で追跡がばれて帰ってきた。」
「魔力探知に気づけるとは、中級術者以上かよほど注意深い奴がいるかだな。誰か信頼できる者をつけるか?」
「それには及ばない、ただ探してもらう少年が手伝ってくれそうな気がするからそいつを使ってもいいか?」
「そんなにうまくいかないと思うがわかった。くれぐれも慎重にな。」
宿に帰って久々に使った魔法の感覚を思い出しながら疲れた身体を休めた。
こうして葵の一日が終わった。