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大中大 28歳

 突然の異世界転移という展開に驚きを隠せなかったけど、今のところ順調に事が運んでいるわ。一度情報の整理をしておかないと。

 お婆ちゃんの能力は


『吐息がめっちゃ臭くなる』 

『体の大きさを自由に変えられる』

『人の心が読める代わりに嘘がつけない』

『美少女戦士にメタモルフォーゼする』


 息の臭さがどの程度なのは不明だけど、それは何とでもなるでしょう。

 体の大きさを変えられるのはかなり便利よね。何処まで小さくできるかによるけど、手のひらサイズにまで縮小が可能なら、ポケットやバッグの中に入ってもらえばいい。そしたら、移動の際にお婆ちゃんが疲れないですむわね。

 次に人の心を読める能力はかなり便利。異世界の人がどのような思考をしているのか不明だけど、心が読めるなら余計な心配は無用ね。デメリットの嘘を吐けないは、気にしなくても大丈夫。お婆ちゃんは昔っから嘘が大嫌いで言いたいことを、ずけずけ言っていたから。


 問題は最後のアレよね……魔法少女に変身って……若返るのならありだけど、ありだけど……もし、そのままで魔法少女になった日には目も当てられない惨事になるわっ!


「大や、今は失礼なこと考えておらんかったか?」


「いやねえ、お婆ちゃん。気のせいよ、気のせい」


 危なかったわ。お婆ちゃん勘が鋭いから、迂闊に変なことを考えられないのよね。

 私のスィートハニー、大天使翔ちゃんの能力は、


『年上からモテまくる』

『マルチタスク』

『どんな姿にでもなれる変身能力』

『霊体化』


 ってなっていたけど、これは幸運だったかもしれないわ。

 モテる能力も年上限定だから、お婆ちゃんがこの能力を得ていたら、殆ど意味がなかったもの。翔ちゃんなら大半の人間がその効力の範囲に入る筈だから、効果は絶大よね。

 問題としては威力かしら。どれぐらいモテるのか、それによって今後の展開が左右されそう。


 『マルチタスク』って正直意味がわからなかったけど、これって確かコンピューター用語だったかしら。お店でそう言った業種の人が、何かと口にしていた気がするわ。

 天伊子さんの説明である程度は理解できたけど、便利っぽい能力だけど今は使い道が微妙っぽい。でも、お勉強には使えそうだから翔ちゃんには良かったかも。


 変身能力はありがたいわね。状況によってはかなり使い道がある筈よ。ただ、姿形を真似るだけで強さや能力はそのままらしいから、そこは気を付けないと。

 最後のは翔ちゃんが選んでくれて安堵したわ。危険な事がある異世界で、これさえあれば肉体のダメージも受けないようだから、怪我も回避できそう。

 ただ、霊体に何らかの攻撃を与えられる魔法とかが普通に存在しそうだから、それも調べておかないとね。


 二人の能力を顧みて思うことは……食料の調達と攻撃系の能力が不足している。

 能力表にあった食事や食料関連の能力は、


『便通がよくなる』『食事をする前に厨二病チックなことを大声で叫ぶ』『一生涯オムライスしか食べられない』『どんなおにぎりの具もシーチキンマヨネーズに変えられる』『どんな飲み物も口に入れた瞬間からその飲み物を飲むのに最適ではない温度になる能力』『野菜しか食べられなくなる(水は可)』『右手から「ちくわ」』『左手から「こんにゃく」』『どんな調味料も出せる能力』『料理が必殺物になる能力』『味噌汁の味が安定しなくなる』


 ってところかしら。改めて見ると……ひっどいわねぇ。

 調味料とちくわこんにゃくが出せる能力以外、いらないものばかりよ。現代日本ならまだしも、異世界でオムライスとか味噌汁ってあるのかしら。悪い方の能力って、どう考えても取った時点で人生が終わるのが結構潜んでいるわよね。

 こうなったら食料系はすっぱりと諦めて、戦闘系能力を狙うしかないわ。

 昔は結構、ファンタジー系の小説やゲームやり込んできたから、ちょっとは知識がある。戦闘に使えそうな能力を手に入れて、二人を守っていかないとね。


「大中大様、そろそろ宜しいでしょうか?」


「あら、ごめんなさい。ちょっと考え込み過ぎていたわ。じゃあ、ささっとやっちゃいましょうか」


 こういうのはリズムが大事なのよ。迷ったって結果は変わらないのだから、全てをスムーズに手際よく行えば、運もついてくるもの。

 ボタンをタタンッとタッチして、更に数字が止まる前にサイコロも投げる。

 ふっ、どうよ。悪い方の能力を取るのじゃないかと、やきもきする暇もなく一気に決めてやるわ。

 さあ、数字は15、そしてサイコロは……2かー。

 まあ、いいわ。悪い方の能力だって、結構まともなのも多いから大丈夫よ。

 15の2、15の2はー、あったあった。


 『話をすれば服がむける』


「……はあ?」


 あらやだ、見間違いかしら。15の2よね。

 いーち、にー、さーん、しー、ごー、ろーく、ひーち、はーち、きゅー、じゅう、じゅうーいち、じゅうーに、じゅーさん、じゅーし、じゅーご、十五……。


「はああああああああああっ!? 何これ、何なのよ、この能力」


「はい、つまり『話をすれば服がむける』ということです」


 わかっているわよ、そんなこと! もう、澄ました顔でハッキリ言ってくれるわね。


「詳しく説明をすると、話す度に服が自然と脱げていくということです」


「ちょっと、ちょっと待って。ええと、それって一言でも話したら、一枚服を脱ぐってこと?」


「正確には、何かを話し始めてその話が終わったところで、服が一枚自動で脱げます」


 え、それじゃあ、私は誰かと会話しながら、どんどん服が脱げていくってことよね……変態じゃないの! 言い逃れできないレベルのド変態じゃないの!


「そんなの、お母さんが可愛そうだよ! 僕ともおしゃべりできなくなっちゃう。お姉ちゃん、本当にそんな能力なの?」


 翔ちゃんが私の為に目をウルウルさせて、天伊子さんに懇願してくれているわ。いいのよ、翔ちゃん。神様が決めたことを、そう簡単に覆せる訳がないのだから。お母さんは翔ちゃんの優しさだけで充分――


「翔様……では、特別に家族との会話では服が脱げないようにしましょう。それでどうですか」


「充分よ。ありがとうございます。翔ちゃんもありがとう」


 た、助かったわー。このままだったら、日常会話を全裸でする羽目になるところだった。仕事で培ってきた話術と交渉術が封じられたようなものだけど、それでもだいぶマシよ。

 天伊子さんって翔ちゃんには甘いみたい。年上をメロメロにする能力……流石、私の子供ね!


「それじゃあ、気を取り直して次の能力選ぼうかしら」


 一つ目が酷かったから今度こそは素敵な能力が待っていてくれる。そう信じて、ボタンを二度押した。

 数字は7ね。能力は『獣化』『オカマ化』

 これって、笑うところなのかしら。

 『獣化』はこの際、後回しよ。でも『オカマ化』って……え、これとったら私どうなっちゃうの?

 私が抱いた疑問は家族も同じだったようで、一斉に天伊子さんへ振り向いていた。


「『獣化』は獣になれる能力です。初期段階は弱い獣一種類にしかなれませんが、能力が進化していくと、かなり強い個体にもなれるようです。なれる獣の種類は人それぞれ、その人の特徴に合わせてとなっています」


 丁寧に答えてくれてありがとう。でも、知りたいのはそっちじゃないの。


「えっと、オカマ化を私が取ったらどうなるのかしら?」


「『オカマ化』はオカマになります。大様がこの能力を得ると……得ると……どうなるのでしょうか?」


 質問を質問で返したわよ、この子。企画者側が理解してないってどういうことよ。

 たぶん、何の影響もないと思うけど、ちょっと心配ね。


「と、取りあえず、獣化がいいかしら……お願いしますっ、ふんっ!」


 勢いよくサイコロを転がすと、サイの目は2。

 みんなじーっとサイコロを見つめている。どうしたらいいのよ、この微妙な空気。


「おほんっ。二つ目の能力は『オカマ化』に決定しました」


 そんな、堂々と言い放っても、この状況は好転しないわよ。

 はあああぁ、二回連続碌な能力がこなかったわね。このままじゃ、話しながら裸になっていくオカマじゃないの! 何それ、新ジャンルね!

 だ、ダメよ。投げやりになっちゃダメよ、つよし!

 まだ二つ、まだ二つ残っているのだから!


「こ、今度こそはすっごい能力引いちゃうんだから!」


「お母さん、ガンバレー!」


「一つぐらいはまともなのが、きて欲しいところだねえ」


 家族の期待に応える為にも、ここはガツンと武闘派系の能力がきてちょうだい!

 今度はリズムを無視して、力強く願いを込めて二度押してみる。

 35で、能力は『言語理解』『口無し』と、きたのね。

 相変わらず文字だけでは理解しにくい能力が多いわ。『言語理解』はたぶん、そのままでしょうけど『口無し』って話せないようになるのか、それとも本当に口が無くなるのか。後ろだったら餓死確定よ。


「説明しますね。『言語理解』とは、どんな言葉や文字も見たり聞いたりすれば一瞬で理解出来る。とあります。続いて『口無し』ですが、どれだけ本人が大きな声を上げても他人には全く聞こえない。となっています」


 『言語理解』めっちゃいいじゃないの! 戦闘系じゃないけど、それがあれば知能のある魔物とも意思の疎通が可能って事よね。どんな国に行っても通訳や翻訳が可能だし、夢が広がるわ。

 『口無し』は最悪な予想が間違っていたのにホッとしたけど、冷静に考えると『話をすれば服がむける』と組み合わせたら最悪よね。会話しようとしたら相手には聞こえないで、服だけが勝手に脱げる……ただの露出狂よ!


「ほんっっっっとうにお願いだから、そろそろ1でて頂戴!」


 ありったけの想いを込めて、サイコロを投げ落とした。

 お願い、本当に、マジで、頼みます。目が充血するぐらいの眼力でサイコロを凝視していると、ゆっくりと動きを止め――1がっ、1が出たわっ!


「やったわああああああああっ!」


「よかったあああ!」


「はあぁぁ、心臓止まるかと思うたよ」


 心配かけてごめんね。やっと、ようやく、みんなの力になれそうな能力が手に入ったわ。ここからが私の天下ね! 最後はもっといい能力手に入れちゃうわよ!

 ボタンに手を添えて、大きく深呼吸をする。

 閉じていた目をカッと見開き、素早く二回プッシュした。

 数字はっ……38で能力は!?


『空を飛べる』『野菜しか食べられなくなる(水は可)』


 空はいいかもしれないけど、悪い方がこれは。ダイエットの時は肉を控えめにするけど、基本お肉大好きなのに。でも、耐えられないことは無いわ。

 ただ、異世界の食べられる野菜の見分け方が、肉や魚より難しそうよね。

 結局攻撃に使えそうな能力は得られなかったけど、ここで1を取らなければ旅が困難なものになる。

 サイコロ、気合入れるわよ!


 でろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろ、1よ、カムォン!


「とうりゃああああっ!」


 全霊を込めた一投は器の縁を猛スピードで駆け巡り、徐々に勢いを落とすと、ゆっくりお椀状の底で停止した。

 数字は――1!


「よおおおおしぃ!」


「お母さんお母さん、お父さんになってるよ!」


「嬉しさのあまり素がでおったか」


 あら、やだん。つい私の秘められた男が顔を出しちゃったわ。てへっ。

 可愛らしくウインクしたのにお婆ちゃんが顔をしかめているわね。翔ちゃんはニコニコと嬉しそうに顔をほころばせているわ。


「大中大様の能力は『話をすれば服がむける』『オカマ化』『言語理解』『空を飛べる』となりました。皆様、お疲れ様でした」


 これで私たちの能力は全て決定した。あとは、もう少し説明を受けて異世界へと送られるそうだ。

 家族三人で人生をやり直せる。こんな幸運があっていいのだろうか。

 能力は手放しで喜べる内容ではないけど、悲観する程でもない。あとは上手く立ち回れば、何とかなるのではないかと考えている。

 だけど、その前に――


「説明を受ける前に、少し家族だけで話してもいいかしら」


「お姉ちゃん、いい?」


「翔様が言うなら仕方ありませんね。10分で構いませんか」


「充分よ。ありがとうございます」


 これで異世界へ向かう前に話し合うことが出来る。それによって今後の異世界生活ががらっと変わってくる。ちゃんと三人で計画を練らないと。


大中家、最後の能力は

アレイスさん 山田クロースさん ショウさん ずまぁさん

から応募いただいた能力に決定しました。

皆様、ありがとうございました。

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