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大中翔 8歳 その2



「よーし、次の能力も選んじゃうよ! もっといいのが来るといいなー」


 『年上からモテまくる』と『マルチタスク』って僕には良くわからないことが多いから、もう少しわかりやすいのがいいな。

 能力選びが凄く楽しくて、心がポカポカする。もっともっと、みんなに喜んで欲しい。

 『月に一回願い事が叶う』とか『動物に好かれる』『テレポート』『走るのが誰よりも速い』とかが嬉しいな。神様、お願いします。


「いくよー、えいっ、とうっ」


 またボタンを押すと、前よりも回転が直ぐに止まった。数字は――40『どんな姿にでもなれる変身能力』『相手に無意識的に嫌われる』って書いてる。

 あっ、変身能力! これがあったら覆面ライダーとかになれるのかな!


「お姉ちゃん『どんな姿にでもなれる変身能力』って、本当にどんな姿にでもなれるの!」


「興奮している姿もい……はっ、ええとですね。自分が想像できる姿であれば何にでもなれます」


「やったー! これでお婆ちゃんは魔法少女で、僕は覆面ライダーで戦えるね」


「翔様。説明の途中です、少し落ち着いてください」


 あっ、そうだった。人のお話の途中に邪魔するのは駄目だって、お婆ちゃんからも良く言われる。嬉しすぎて忘れちゃっていた。


「お話の邪魔をして、ごめんなさい」


「そんなに、謝らなくていいのですよ。では、続きを話しますね。といっても、自分よりも小さい相手ならネズミぐらいの大きさまでなら変身できますが、大きくなるのは大人ぐらいまでが限界です。あと、姿はそっくりに変身できても、能力までは真似られませんので、気を付けてくださいね」


「ええと、格好だけそっくりになるだけで、覆面ライダーみたいに強くはなれないの?」


「残念ながら、そうなります」


 そっかー、残念だなぁ。漫画の主人公に変身して、必殺技で倒せるようになるかと思ったのに。そしたら、お母さんもお婆ちゃんも守ってあげられたのに。


「翔ちゃん。落ち込まないで。見た目が変えられるなら、あとは翔ちゃんが強くなればいいじゃないの。覆面ライダーになりたいなら、翔ちゃんが一生懸命頑張って強くなればいいだけのことでしょ」


「そ、そうだね! うん、お母さん、僕頑張るよ!」


 覆面ライダーの姿にならなれるんだから、僕が強くなればいいんだよね。さすが、お母さん。頭いいなー。


「それよりも、天伊子さん。悪い方の『相手に無意識的に嫌われる』って『年上からモテまくる』を持つ翔ちゃんがとったら、どういう効果になるのかしら」


「そうですね。年上の相手限定ですが、嫌いな筈なのに、どうしても目が離せない。つい強い態度で接してしまうけど、気になって仕方がない。といった感じでしょうか」


「ツンデレというか少女漫画でそういう性格の子を何度も目にしているわ……面倒臭いことになりそうね」


 嫌われるのはイヤだから、変身がいい!

 今度も1がでますようにっ。

 投げたサイコロは僕のお願いを聞いてくれた。


「やったー、また1だよ!」


「やっだぁー、凄い凄い、さっすが翔ちゃんね!」


「お婆よりも強そうやね」


「良かったですね、翔様」


 嬉しくてピョンピョン跳ねると、みんなが笑ってくれた!

 うんうん、やっぱり笑っている方がいいよね。お母さんもお婆ちゃんも、悲しそうな顔をしていることが多かったから、ずっとみんなで笑っていられるといいな。


「ええと、じゃあ、最後のを選びます!」


 よーし、今度もいいのきてください!


「えいっ、とおおおぅ!」


 バンバンと強く二回押すと、数字が12で動かなくなった。

 ええと、能力は『霊体化』『超低速』って書いてある。うーん、両方ともよくわかんないや。

 お姉ちゃんに教えてもらおうと思って、そっちを向いたら、僕を見て笑っている。


「説明しますね。まず超低速なのですが、言葉通り動きがとても遅くなります。ええと、そうですね……翔様はプール好きですか?」


「うん、大好き! 前ね授業中にビート板なくてもバタ足で進めんたんだよ!」


「それはご立派ですね。プールに入って歩くと体が重い感じがしませんか?」


「するする! 思った通りに体が動かなくて、足が凄く遅くなるんだよ」


「つまり、超低速とはそんな感じになることです」


 そうなんだ。お姉ちゃんは頭がいいなぁ。すっごくわかりやすい。

 学校の先生より教えるのが上手かもしれない。


「次に霊体化ですが、一番わかりやすいのは幽霊ですね」


「えっ、幽霊になっちゃうの?」


 あの透明で夜に出てくる、お化けの……ことだよね。

 あんなのになったら、お昼は動けないし、お母さんもお婆ちゃんも怖がるかもしれない。


「安心してください。自分で成りたいと思った時だけなれますから。直ぐに元にも戻れますよ」


「よかったー。じゃあ、透明人間みたいだよね」


「そうですね。相手が触ることのできない透明人間かもしれませんね」


 うわー、じゃあ僕は年上の人にモテて、いっぱい考えることが出来て、変身できて、透明人間にもなれるんだ!

 だったら、やっぱり『霊体化』が欲しいな。これがあったら、危ない時も逃げやすいし、誰かを脅かしたりもできるから。


「最後のサイコロ振ります!」


 手の中でサイコロをコロコロ転がしてみる。1と2が順番に入れ替わっているけど、これ全部1なら、みんな嬉しいのに。それにあの能力表も、何で変な能力も入れたんだろう。

 みんな強い能力なら誰も困らないのに。

 でも、そうしないと神様が楽しめないって言ってた気がする。

大人になるってことは嫌なことも我慢するものだって、お婆ちゃんが教えてくれた。だから、悪い能力もきっと意味があるんだと思う。


 でも、僕は良い能力が欲しいので、1出てください!

 ギュッと握りしめていたサイコロを離すと、数字は――1。


「やったー! また1出たよ! 見て見て!」


 また1が出てくれた! みんなもすっごく喜んでくれてる!


「お母さん、お婆ちゃん、僕、みんなの役に立てるかな?」


「完璧よ翔ちゃん! お母さんびっくりよ」


「翔はえらあ、強うなったな」


「翔様おめでとうございます。これで翔様の能力は『年上からモテまくる』『マルチタスク』『どんな姿にでもなれる変身能力』『霊体化』に決まりました」


 本当はもっと強くなったり魔法が使いたかったけど、ワガママを言ったらダメだよね。

 お婆ちゃんは良く「ないものを欲しがるのではなく、今あるもので何かできないか考えてみい」って言ってたし。お母さんが頑張っているのに、僕だけアレが欲しいとかイヤだとか言ったらダメだ。

 ちゃんと自分で考えて、ええと一番良い事が何かを考える。って、何とかって言うんだったよね。んーと、あっ、そうだ! 最良の策。それを選ばないと。


「お姉ちゃん、素敵な能力ありがとうございました」


 何かをしてもらったらちゃんと頭を下げてお礼を言う。

 そしたら、みんなお利口さんって言ってくれるし、笑ってくれる。お姉ちゃんも、嬉しそうに笑ってくれている。やっぱり、お婆ちゃんやお母さんの言うことは間違ってないんだね。


「これでお二人の能力が決定しました、続いて大中大様の能力選択になります」


 そうだった。僕は終わったけど、まだ母さんのが残っているんだった。

 お母さんはすっごく力持ちで、優しくて、料理が上手で自慢のお母さん。異世界は少し怖いけど、お母さんがいてくれたら大丈夫。

 昔、怖い顔のおじちゃんが高校生の人をいじめていた時に、お母さんがおじちゃんたちを怒って喧嘩になったけど、キックとパンチでおじちゃん三人を倒したぐらいだから!

 お母さんはその時、


「翔ちゃんは直ぐに手を出すような人になったらダメよ。お母さんは暴力で解決しちゃったけど、本当に偉いのは戦わないで勝つことなんだから。でも、本当に大事な、戦わないといけない時は……我慢せずに戦いなさい」


 僕は小さ過ぎて良くわからなかったけど、今なら少しだけわかる。

 直ぐに怒ったり殴ったりしたらダメだけど、家族や弱い人を守るときは戦ってもいいってことだよね。僕は異世界に行ったら、お母さんやお婆ちゃん、そして、困っている人の為に頑張りたい。

 自分がされて嫌なことは人にしない。自分がしてもらって嬉しいことは人にしてあげる。

 お母さんやお婆ちゃんも言っていたし、道徳の授業でもそう習ったから。




翔くんの残りの能力は

ササササさん 水瀬 銀灯さん

から応募していただいたものになりました。

本当にありがとうございました。

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