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龍の卵は何を想う?  作者: 紙風
第1章 旅立ち
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第5話 リーシア

 背中まで伸びた金色の髪が動く度にふわりとそよぐ。

 じっと見ていると、綺麗なエメラルドグリーンの瞳で見つめ返されドキっとする。

 その容姿は、まだ幼さを感じさせるが、成長すれば美しい者が多いエルフの中でも、特別美しくなりそうな素質を感じさせる。


「それでは改めて…初めまして。私はリーシア」


「俺はジン、ジン・イリマだ。」


「は、話してみるとやっぱりギャップがあるわね。つい6歳の子供と思っちゃうけど、実際に生きた年数は私と同じくらいなのよね。」


「そうらしいな。

 もっとも、俺が生きた世界とこちらは大分違いがあるみたいだから、生きた年数は同じでも、教えてもらう事の方が多いと思う。

 これから面倒をかけるがよろしく。」


「こちらこそよろしく。

 年齢も近いことだし仲良くしましょう。

 私も異世界のこと興味あるしいろいろ教えてね!」


 お互いの自己紹介を終え、その後はエルフの生活や、地球のこと、龍卵を得た経緯などの話になった。

 リーシアは俺が6歳の子供の容姿だからか気安い感じに話してくる。

 一方俺はリーシアがいかに14歳位の少女姿と言っても、容姿がとても整っており、アイドルのトップクラスと比べても遜色ないため、ドキドキしてしまう。


 俺はロリではないぞ、ロリではないはず、ないといいな?

 心の中で唱える。

 しかしこんな可愛い子と一つ屋根の下で暮らせるなんて、生きててよかった。

 人生捨てたもんじゃない。

 しかも集落の他の面々も美人揃いときたら、感覚変になりそうだ。


「ねぇ、ちょっと聞いてるの!」


 おっといかんいかん。

 妄想に拍車がかかってしまった。


「ごめんごめん。

 つい舞い上がってしまって、何の話だっけ」


「もう、じゃあ村を見に行くかって言ったの。

 別に嫌ならいいけど。」


「そんなことないです。

 よろしくお願いいたします。」


「きゅ、急に敬語にならないでよ。

 気持ち悪い。

 普通にしてて。」


 そうして村を見て回ることになった。


 村は小さいながらも各人役割分担をしている。

 家具加工や武器・防具職人、魔道具作製に食糧取扱い先というように、村の戦士団が森で集めた素材、食糧を各役割の家に配り、それぞれの仕事をこなす。

 人手が足りないときにはそれぞれ忙しい所にフォローに回るようになっているので、どこかだけが突出して忙しいということはないそうだ。


 一見人間や他の種族との交流がないことから生活水準は低いかと思ったが、魔法技術が発達し、各人が優秀な魔術師であるため、快適に生活できる工夫があちこちにされてあるのが驚きであった。

 水が必要なところでは魔道具により魔力を込めれば水が発生するし、調理する場合も火の魔道具がある。

 仮にそれがなくとも各々で水も火も発生させることができる。

 照明も魔法の明かりをつけられるし、そもそも暗視が得意であるので照明をつける必要もそれほどない、便利なことだ。


「魔法はリーシアも使えるのか?」


「わ、私?

 も、もちろんよ。

 こ、これでもエルフの一員なんだから!

 ちょっと覚えるのが…ゴニョ」


 なんだか怪しいが一応使えるらしい。

 最後の方は良く聞き取れなかったが。


「そういうジンはどうなのよ!

 まー異世界から来たばかりだし、6歳児じゃあ無理だろうけど!」


「ん、ちょっとは使えるよ。

 火水風土の基本的なことぐらいだろうけど。 あとは魔力を周囲から少し集められるくらい。」


「え、魔力収集ができる?

 嘘でしょ!

 あれは特殊で、うちの集落でも族長が少しだけ使えるぐらいよ。」


「そうなのか?

 じゃあアーク…あぁ、龍卵のことだけど、こいつの魔力収集の影響だろうな。」


「龍卵が使ってるからって、なんでそれが魔力収集ができることに繋がるのよ?」


「龍卵の集める魔力には知識の残滓や情報、特に自然の理を理解できるってのも含まれる。

 俺はそれで魔法が使えるようになったんだ。」


「そーなの?なんかずるい。」


「まぁ確かに。

 ただ俺は異世界からこちらに来るために、こんな体になったし、魔力を扱う努力はまだ動けない赤ん坊の状態でやってたんだ。

 そもそも、古龍のように何千年も生きるなら魔法をもっと色々覚えていけるらしいけど、俺はほんの触りだけ、きっかけに過ぎなかったらしいから、才能だよ、才能!」


「うーん。

 でもいーなー。

 私ももっと魔法がうまく使えるようになり…あ、ゴニョ」


「実はうまく使えないの?」


「そ、そんなこと、基本くらいはできるもん。

 ただ、ちょっと火は苦手だし、みんなみたいに大きな魔術が使えないだけで…いいじゃない!」


 半泣きになりながら、手を振り上げ殴りかかるフリをする。

 か、可愛いじゃないの。

 ついからかいたくなる。


「ごめん、ごめん。

 これからだもんな!

 俺だって偉そうなこと言ったけど、まともに使ったことはないんだ。

 この集落に置いて貰うことになったから、可能であれば教えて貰いたいと思ってるくらいだし。」


「そうね。

 もしそうなったら私も一緒に教えてもらって、絶対魔法うまくなってやるんだから。

 負けないからね!」


「はは、お手柔らかに。」


 そんな風に集落を話しながら回っていたら、あっという日が落ち始めた。 

 楽しい時間というのは過ぎるのが早いものだ。


 日も落ちてきたため、一度家に戻ってゆっくりしていることにした。

 準備が出来たら呼びに来るから、居場所が分かりやすい家が良いだろうとのことだ。

 家に戻ってしばらくすると、ダスティ達が戻ってきて、


「準備ができたから二人とも行こう。」


と言われ、再び外へと出て、先ほど案内されていなかった方面へ歩き出した。


 連れていかれた先はちょっとっした広間になっており、テーブルが並べられていた。

 テーブル上にはフルーツや果実飲料、料理が乗せられ、付近には100人位のエルフ達が集まっていた。

 一際大きな切り株が、ステージ代わりのようになっている。

 その切り株の方へと案内され、ステージの端に控える。

 中央には族長エデンがおり、俺が来ると皆に向かって話始めた。


「皆の者、今日は突然なことにも関わらず良く集まってくれた。

 まず今日この宴を開いたのは、ここにいる人間の子供を紹介するためだ。

 子供とは言っても実際には語弊があるが…まずは聞いてほしい。

 本来、我らは子供とはいえ人間と一緒に暮らすということはない。

 そればかりか人間と我らエルフの混血の子供ですら育てることは滅多にない。

 皆も知っているだろうが、これは人間という種族が、争いの多い種族であり、その抗争に我が種族が巻き込まれることを嫌い、極力争いの可能性を排除したいからである。

 もちろん人間がそんな者達ばかりではないことも知っているが、人間は他の人間と関わらずには生きていけない。

 そこに抗争になる可能性があるのであれば、我らは受け入れることができない。

 これは今でも変わっていない…が、この子供ばかりはそう言ってもいられない理由がある。


 ここで詳細を話したいところであるが、それもまたこの者のこれからのことを考えると好ましくはない。

 詳細を説明せず納得してもらうのは難しいことは分かっている。

 しかし一つだけいうのであれば、この者は古龍と関わりのある者とだけ伝えておく。

 知識ある我らが同胞は、これだけで察して貰えることを願う。


 最後にこの者が集落クリストに住むことは、儂エデン・クリストの名において許可したということを、ここにはいない者達にも通達してほしい。

 今日はこの者がここに住むことになった祝いでもある。

 皆いろいろ思うことがあると思うがよろしく頼む。」


 俺の隣にいたダスティが通訳してくれていたが、なんか俺ここにいていいのか?

 龍卵のこととか話しちゃいけないことっぽい感じだったし…と考えているとダスティが話しかけてきた。


「いろいろ思うところもあると思うが、今だけ挨拶をお願いしたいんだがいいか?」


「あ、はい、共通語しか話せないですけどいいですか?」


「大丈夫、みんな共通語も理解できるが、今は部族の挨拶のため族長はエルフ語を使ったに過ぎない。」


 そうして俺はステージにて挨拶を行った。


「今日からお世話になるジン・イリマといいます。

 よろしくお願いいたします。」


と可も不可もない名前だけの挨拶しかできなかった。

 その後、宴会となり族長が近づいてきた。


「すまなかったな、あんな紹介で。

 気を悪くしないでくれ。

 龍卵の話はあまり多くの者に知らせる訳にはいかないのでな。」


「どうしてなのか聞いても?」


「お前が龍卵を持っていることを知るものが多くなれば、それだけそのことが広まる可能性が高まる。

 我らはエルフであるが故、あまり他の種族のものと関わりを持つことは少ないが、それでも全くない訳ではない。

 龍卵を持つ者のことが広まってしまった場合、龍卵の持つ力を悪用しようとするものが現れるかもしれん。

 そうなった場合、古龍の場合と同じく世界が乱れる原因になりうる。

 そんなことになることは防がねばならん。」


  なるほど、そんなことがあるとは考えてなかった。


「あ、リーシアと話しているときに龍卵の話とかもしてしまったけど…」


「リーシアにも良く聞かせておくから大丈夫。

 一応本当のことを話しているものも何人かおる。

 ダスティ一家もその何人かだ。」


 そういうことか。

 確かに変に話が広まって、突然襲われたりしても困る。


「それからお前には力をつけてもらうぞ。」


「力?」


「そうだ。

 先ほども言ったが龍卵に何かあったら世界に影響がでると言っても過言ではない。

 それを防ぐためにはお前にも火の粉を払う力を持ってもらう必要がある。

 また今でも龍卵を持っていることが気づかれにくいとはいえ、儂にはわかった。

 そのことを隠す術も持って貰わねば。」


「そういうことなら、俺もこの世界に来るにあたって、力をつけたいと思っていたし、むしろよろしくお願いします。」


「うむ。

 まぁ先は長い、気を張り詰め過ぎても良い結果は出ぬし、今日は歓迎会だ。

 楽しんでくれ。」


 そういうと果実を絞った飲み物を渡された。

 飲むと酸味がある自然な甘さが口の中に広がってゆく。

 葡萄系の100%ジュースのようだ。

 しかも魔法で行っているのか、冷やされていて実にうまい。

 料理も実においしいのだが、残念ながらテーブルに身長が届かない。

 また、6歳児では食べる量も限られているため、すぐに腹がいっぱいになった。

 今まで魔力収集のお陰で食べることがなかったが、久しぶりに食べた…というよりこの世界にきて初めて食べた。


 ある程度満たされた後にはダスティに案内され、色々なテーブルへ行き、会場のエルフ達と軽い挨拶を交わした。

 事情を深く知らない者達には「なぜ?」と思うものもいたようだが、表立ってなにか言われることはなかった。


 こうして特に問題なく挨拶回りも終了し、料理がなくなってきたころ、族長より終了の宣言があり、お開きとなった。


 夜寝る間際、俺は今日一日の出来事を思い反していた。

 エルフの集落で暮らせることや、これから始まる魔力の訓練、リーシアと一緒に過ごせる嬉しさにニヤニヤしていると、アークも独楽のようにクルクル回っていた。


「お前も嬉しいのか?」


 聞くとアークは飛び跳ねた。

 これから楽しくなりそうだ。



―リーシア―


 今日突然、集落に人間が住むことになった。


 普通、うちの集落が他の種族を受け入れることなんてありえないはずなんだけど、どうも普通とは違うらしく族長が許可を出した。

 私は生まれてからこの集落以外の場所で暮らしたことはなく、たまに出ることがあっても精々長くて数週間。

 だからエルフ以外の種族で親しい知り合いはいないから楽しみである。


 自分の種族を悪くいうつもりはないが、そもそもエルフというのは閉鎖的過ぎるところがある。

 もうちょっと他の種族と関わりがあっても良いと私は思う。

 だけど、それを言うとまだ若いからで片づけられてしまうのが悔しい。

 確かに私はこの集落で一番若いけれど、だからってそれだけで意見を聞いて貰えないのはどうかと思う。


 以前は私と同じようにもっと多種族とも関わりを持っても良いのでは?

という意見を持つ兄のような存在がいた。

 リリお姉ちゃんと同年齢で仲が良く、私も良く遊んでもらった。

 しかし、村の閉鎖感に嫌気がさし、旅に出てしまった。

 元気でやっているだろうか?


 そんな閉鎖的な集落なのに、今回に限って集落に入れるどころか、生活をしていいなんて一体どういうことなんだろう。

 しかも暮らすところはこの家とのこと。

 絶対仲良くなっていろいろ教えてもらおうと思った。


 実際に会ってみて驚いた。

 だってまだ子供と言ってもいい程度の容姿なんだから。

 でも、実年齢は私と同じ位で変わらないらしい。

 ただ生きた場所がこの世界ではないとのこと。

 一体どういうこと?

 本人と会う時には大まかな経緯を聞いたけど、実際良くわからない。

 この世界の存続に関係してくる存在で、悪意を持たれては困るってことらしいけど。

 まぁ私にとっては身近な異種族の知り合いができてとてもうれしく、仲良くしたいと思う。

 年も近いみたいだし。

 でもこの子、魔法出来るらしい。

 私は両親が教えてくれても遊びにかまけてあまり上達していない。

 しかし新参者のしかも人間、年齢の近いものに負ける訳にはいかない。

 両親が中心となってこの子に魔法や体術を教えるらしいが、私も一緒に学んでやる。


 何にせよ面白くなりそうで、私はこれからの日常にわくわくしていた。


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