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ヒロイン様にフラグが立たないその理由  作者: 逢月
第三章 アルヴァン・グランドベルグ
24/29

彼が見逃した敵意

 装飾の付いた窓枠や扉、真っ白に磨かれた柱や壁に、埃一つ落ちていない床。

 赤の重厚なカーテンが飾られた大きな窓から入ってくる陽光が、この学園が所有する舞踏会場を煌びやかに彩っていた。

 周りを見れば、この会場に初めて入った一年生達のほとんどが貴族であるにも関わらず、皆一様に感嘆の溜息を吐きながら、美しく整えられた場内を見渡していた。

 正式に社交界デビューをした貴族の子供達ですら瞠目するほど、この舞踏会場は立派なのだ。

 たとえ練習だろうと、こうして舞踏会専門の楽団員まで呼び寄せて、手を抜くことをしない学園の行事に対する力の入れ具合が凄まじいのである。


 魔法学園には、学園二大行事と呼ばれているイベントがある。

 前世で言うところの体育祭と文化祭にあたる、夏の舞踏会と秋の武闘会だ。

 それ用に設計されている三学年全ての生徒を収容して有り余るこの舞踏会場と、さらに大勢の見物客まで収容できるコロシアムは、もしかすると王宮にあるものよりもしっかり作られているのかもしれない。

 それもこれも、元を考えればすべては学園で恋愛劇を繰り広げるヒロインのため。

 そう考えると、俺はどうにもこの綺麗な景観に対して、素直に感動することができなかった。


「まさかここまでの施設を学園が所有しているとは思わなかったな」


 俺の後ろでアルヴァンがもっともな感想を口にした。

 その隣りでは、レゼが初めて見る舞踏会場に少し興奮した様子で頷いている。

 アルヴァンもレゼも同じクラスではないのだが、こうして一緒の授業になると何かと俺と行動したがる二人は、いつの間にかそれなりに仲良くなっていた。

 俺はレゼに懐かれることは全然構わないし、レゼに友達ができるのはとても良いことだと思うのだが、生憎と俺には自分よりも図体のでかい男に纏わりつかれて喜ぶ趣味はない。

 かといってアルヴァンにお前どっか行けよという視線を送っても、胡散臭い笑顔でスルーされるので若干諦めてはいたが。

 纏わりつかれる理由は何なのかと頭を巡らせかけたとき、授業開始を告げる鐘の音とともに、パンパンと壇上にいる教師達の手が鳴った。


「今日は皆さん御覧の通り、一年生初の全クラス合同演習です。これまで各クラスで教わったマナーやダンスは覚えていますね? 練習なので正装ではありませんが、正装しているつもりで舞踏会に向けて練習していただきます」


「良いですか、男子生徒の皆さん。今、女子生徒の皆さんは、壁を彩る美しい華となってくれています。花は強引に手折ってはなりませんよ。くれぐれも紳士的にエスコートするように。それと――」


 基礎科目担当の教師達から注意点を説明されている間に、俺はちらりと視界の隅にいるピンク色の髪の女子生徒を確認した。

 その女子生徒――ヒロインは、期待の籠もった眼差しで俺を見ていた。

 きっとゲーム通り、俺が教師の指示で自分のパートナーに選ばれるとでも思っているのだろう。


 ゲームでは各攻略対象者達に得意科目が設定されていた。

 この舞踏会の演習授業は、第二王子とランスロット・オルトランドの得意科目だ。

 得意科目は攻略対象者内で二名ずつ被るようになっており、ダンスにおいては第二王子が一番得意で、ランスロットが次という設定だった。

 ヒロインのダンスに関するステータスが足りないと、ランスロットよりも敷居の高い第二王子は、サボりということで出てこない。

 第二王子が出てこなかった場合、ゲーム内ならば、王子の次にダンスの得意なランスロットに教師達は予めヒロインのパートナーを頼んでいた。

 ヒロインが女神の力を早く制御できるよう、王命で学園に入学することになった経緯を考えれば、この授業でダンスの得意な人間を学園側がヒロインに宛がうことは納得できる流れだ。

 国を守る使命のある貴族の子息ならば、すでに魔素の種に唯一対抗できる聖女として公表されているヒロインの相手を受けざるを得ない。


 だが、ゲームとは違って俺はすでに結婚している身だ。

 舞踏会のマナーとして、既婚者は配偶者か身内以外とは踊ってはならないという決まりがある。

 配偶者や身内以外と踊った場合、その相手と愛人関係にあると公表しているも同然になるのだ。

 愛人の存在を良しとしない女神信仰が主宗教となっているこの国では歓迎されたことではないし、いくら魔法学園や国がヒロインの味方だろうが、伝統を重んじる舞踏会で、主催者である学園がマナー違反を犯す訳にはいかないだろう。

 ましてや俺よりも舞踏会に慣れた貴族の子息なんてたくさんいるし、あえて常識を無視して俺をヒロインのパートナーに指名するメリットもない。

 その証拠に、俺は教師達から何も頼まれてはいなかった。


 リリアは、ヒロインと接触することで俺が俺でなくなるのではないかと怖がっている。

 俺の腕の中にいるときも、時々それを考えて泣きだしそうになっている彼女を見ると、何の保証もしてやれない自分が嫌になってくる。

 せめて不安を少しでも軽くする為にと、いろいろゲームとの相違点を作った。

 成人したばかりなんだから卒業後で良いだろうと言う親父達の意見を押し切って、リリアと学園入学前に結婚した。

 ヒロインに関わりたくないと言っていたレゼとエレノアに頼んで、一緒に学園に入学してもらった。

 ザイレには教師の立場から不穏なことがあればすぐに知らせろと言ってある。

 俺が入学試験で過去最高成績を出したのも、面倒な新入生代表挨拶を引き受けたのも、言動がゲームと違うアルヴァンと同室でおとなしく過ごしているのも、全部が全部、リリアのため。


 それなのに。

 どうしてこう、世界中の苦しんでいる人を救う役目を背負ったはずの奴が、とことん俺達の不安を煽って苦しめてくるのか。


 教師の説明が終わり、楽団員達の演奏が開始された。

 俺もレゼを連れ、壁際で待つリリアとエレノアの元へ移動を始めようとしたとき、途端に会場内がざわついた。


 ざわついた理由は一目でわかった。

 壁の華であるべきヒロインが、会場の中心あたりに散らばっていた男子生徒達に向かって自ら歩き始めたのだ。

 楽団員が演奏し始めた今、男性のパートナーを伴わない女性が壁以外に向かって動くのはマナー違反だ。


 一人、また一人とその異変に気付いた生徒達のざわめきが増す。

 レゼが顔を強張らせて俺の背中に隠れた。

 アルヴァンが俺の制服にしがみつくレゼの反応を見て、何事かと声をかけている。


 俺は微動だにせず、ただ冷やかな目でヒロインを見ていた。

 ヒロインの視線は俺に向けられている。

 澄んだ水色の瞳で、ピンク色の髪を揺らし、その頬笑みには朱さえ浮かべて。

 俺の前で立ち止まったヒロインは、俺に向かって右手の掌を下にして差し出した。


「私と踊ってくださいますよね?」


 この行動の意味をはっきり教養で理解している周りの生徒達が、ヒュッと息を呑んだ。

 あるいはそれは悲鳴を押しこめる為の呼吸だったのかもしれない。


 公爵家の最上位にいるオルトランド家の正式な次期当主で既婚者の俺に、妻が見ている前で、誘う側は何も危険物を持っていないこと、何も企み事はないことを表す為に、掌を上にして誘わなければならないダンスで、下位貴族よりもさらに下、準貴族に分類される教会のトップである聖女の立場にいる者が、願い求めることを示す左手ではなく、強要や命令を示す右手を下に向けて差し出した。


 つまり簡単に言えば、ヒロインはこの行為で、俺に妻の容認の元、愛人になれと命令したのだ。

 教会の女神信仰など関係ない、私は貴方を恋人にするつもりはないが愛人には欲しいのだと宣言したことになる。


 俺の周囲の空気が物理的に凍り、壁の一角からは翡翠色の濃密な魔力が膨れ上がった。

 軽快なワルツの音楽が、ギギッと最後に弦が弾け飛ぶ音を立てて止んだ。


「……っ、チェルシーさん!! すぐに手を下ろしなさい!!」


 女性教師の叫び声が静寂に響く。

 しかし、絶望的にタイミングが遅い。


 俺でさえプレッシャーを感じるほど複雑に編み込まれた翡翠色の魔力が、俺の周囲で甲高い音を立てていた。

 ワルツが奏でられる前とまったく変わらない凛とした姿勢のリリアの指先には、発動直前まで高められた防御魔法が灯っていた。

 いつもと違って随分と光の色が濃く、どう考えてもその魔法はこの事態が起こってから組み立てられたものではなかった。

 授業が始まる前か、ともすればもっと前、リリアが起きてからすぐに準備し続けてきたような、俺を拘束するレベルの防御魔法――俺の精神面にどのような変化があっても、ヒロインの手をとれなくさせる類のものだ。

 そして誰も俺に触れることができなくさせるようなそれをリリアが発動しようとした瞬間が見えて、俺は咄嗟に後ろにいたアルヴァンの腕を掴んで、ヒロインの差し出した手にアルヴァンの手を重ねさせた。


 え、と発せられた疑問の声は誰のものだったのかは知らない。

 ただ俺は振り返って、全員によく聞こえるようアルヴァンに大声で話し掛けた。


「誘いを受けていただけて良かったですね、アルヴァン様。アルヴァン様は聖女様と最近仲良くしているみたいですから当然ですよね。俺は退きます」


「……ランスロット? だが……ああ、いや。お誘いを有り難く頂戴しよう、聖女様」


 一ミリも笑っていない目の奥で有無を言わせずアルヴァンに承諾させて、俺はすっかり俺の背に隠れてしまっているレゼの腕を引いて、リリア達の元へと立ち去った。

 困惑しながもアルヴァンから手を離さず、俺を見てくるヒロインの傍を通り抜けた後で、俺は無造作に身体の外側へと手を弾いた。

 手に込めたのはレジストという魔法だ。集められた魔力を霧散させる効果がある。

 俺が感情のまま魔力で凍らせた周囲と、リリアの物騒な魔力を捩じ伏せて掻き消した。


 静まり返る会場は教師陣ですら沈黙し、ほぼ全員が俺に視線を寄こしていた。

 リリアは完全に無表情で無言を貫いている。

 壁際で俺を見詰めながらも一歩も動かず、ただ俺に魔力を消された後に固く握られた両手だけが彼女の心情を物語っていた。




 この授業がその後も何事もなかったように進行できる訳がない。

 すぐさま各クラスでの自習となり、俺とリリアは教師に舞踏会場内の一室へと案内され、学園長を連れてくるから待つようにと言われた。

 ヒロインも教師の一人に連れて行かれたから、今頃何処かで話を聞かれていることだろう。

 あの脳内花畑女からは「やりたいからやった」。それ以上の答えは聞けないだろうが。


 ドカッと不機嫌にソファに沈み込んだリリアの隣りに座って、今にもソファにバシバシと八つ当たりし始めそうな細い手にそっと指を絡めた。

 少し俺が力を入れるだけで折れてしまいそうなこの手は、本当にいろいろなことに耐えすぎている。

 俺の為に我慢ばかりさせて申し訳なくなる。


「あの女が俺に近づいた瞬間、お前なら苦手な攻撃魔法も一つや二つ、簡単にぶっ放してみせるんじゃないかと思った」


「お義父様に先週注意されていなかったら、やっていたかもしれないわね。大体、お義父様に『高位貴族としての自覚を持て』なんてクドクド言われてなかったら、そもそもあの女を貴方に近づけさせはしなかったわ。即座に足元を防御魔法で固めて、最高に無様な形で転ばせて床に沈めていたもの」


「むしろそっちのほうが今回は穏便に済んだんじゃないのか?」


 俺が苦笑いしながら、先週末に俺達の学園での様子を何処からか聞いて不満を持ったらしい親父に呼ばれて公爵家に帰ったのは間違いだったなと思っていたら、リリアが片方だけ口角を上げて笑った。


「これならさすがにお義父様だって穏便に済ませる訳にはいかないでしょう。是非、誇り高い貴族とやらのやり方をみせてもらおうじゃない」


 ああ、お前ってゲームの中では悪役だったよな。

 そう再認識させられる雰囲気を漂わせたリリアの愚痴は尚も続く。


「レイスリーネ様のお茶会には断らずちゃんと参加しろ? 貴方が娼館に行くような連中に付き合うことを見逃してやれ? どうして? 何で? それが貴族だから? 馬鹿馬鹿しい。貴族のやり方とやらで立ち回って、結果こうして貴方を守れないなら意味ないじゃない」


「いや、俺は今回は盛大に見下されただけで、別にリリアが守れなかったと後悔するようなことは何もされてないから」


「本当に何もされていないって言えるの? あの女の変な魔法に掛かっていない? 浄化魔法なんて特殊な魔法を持っているくらいなんだから、魅了魔法とか怪しい魔法を持っていないとも言い切れないわ」


 ズイッと大胆に身を乗り出して俺に顔を近づけてくるリリア。

 必然的に上目遣いになる愛しい妻に夫が口付けようとしたところで誰が責められようか。いや、責められるはずはない。

 でもキスする寸前で肝心のリリアに顔をガシッと掴まれ、睨まれてしまった。


「誤魔化さないで。ああ、そう。そういえば貴方、アルヴァン・グランドベルグを助ける気でいるの? 貴方のさっきのあの台詞、クロスイベントそのままじゃない。まさか私が知らないところでアルヴァンに変なアドバイスしているんじゃないでしょうね?」


 バレないとは思っていなかったが、うっかり肩を震わせたところを目敏くリリアに気付かれて、俺は乾いた笑いで誤魔化した。


 クロスイベントというのは、休日などに攻略対象者が二人同時にヒロインに誘いをかけるような形になり、ヒロインに選ばれたほうの攻略対象者の好感度が大きく上がり、選ばれなかったほうの好感度が大きく下がる――言葉にすると簡単な話だが、現実でやられるとお前は何様だと思わず言いたくなる仕様のイベントである。あ、ヒロイン様だったか。

 しかし、リリアの調査によると、この前世持ちのヒロインは恋愛方面には稀に頭が回るようで、どうにも過去にそれとなく攻略対象者達を誘導し、自分の前で遭遇させて、強制的にクロスイベントを起こしたことがあるらしい。

 相手の攻略対象者達に何を言われようがゲームのヒロインと同じ台詞を話しきって、違和感たっぷりな状況なのに結果的にはイベントを成功させることができていたと。

 イベントの発生には好感度がある程度必要なものがあるが、それまでの累計だとイベントを見逃した誤差を考慮しても好感度が足りないはずのイベントが次の日に起こっていたから、リリアはそれが成功だったと判断していた。


 ヒロインに出来るなら俺にも調節できるだろうと考えた結果が、アルヴァンに告げたあの不自然な台詞だ。

 ゲームではアルヴァンとランスロットのクロスイベントも存在していて、あの台詞は俺がランスロット関係で覚えているその中の一つだった。

 俺にあるのかわからないヒロインへの好感度がシステム上でも減ってくれるなら大歓迎だし、ちょっと気紛れに好感度を上げるのを手伝ってやるだけで、グランドベルグが少しでも早く救われるのなら、これくらいの手伝いは許容範囲ではないか。

 俺のその考えが気に食わないというリリアと口論していたら、ようやく部屋の扉が開いた。


 学園長のお出ましかと思いきや、入ってきたのは俺の親父とザイレだった。

 たぶんエレノアがレゼに頼んでザイレに知らせて、ザイレが親父を連れてきたほうが良いと判断して転移させてきたのだろう。


「何をしているお前達。あれほど貴族らしい対応をしろと言っただろう」


 親父の第一声にカチンと来たっぽいリリアの口を押さえて、バタバタ暴れる手足を俺の全身でソファに押しつけることで黙らせる。


「親父が来たなら俺達はいなくて大丈夫だよな。後は任せるからよろしく。で、ザイレ、一刻も早く俺達を転移させてくれ。怒り狂ったリリアを俺が抑えられているうちに早く!」


 俺はリリアが親父に暴言を吐いて飛びかからないかと結構冷汗ものだったのだが、このときどうやらザイレには俺達がイチャついているようにしか見えなかったらしい。

 ザイレが指を鳴らして俺達を転移させたのは、何故か公爵家の俺達のベッドの上だった。

 まあ、うん、その……なんだ。俺は嬉しいけど。




 後日、俺がひたすら甘やかしたおかげで機嫌が良くなったリリアと学園に戻ってから、アルヴァンにヒロインが学園の舞踏会には参加停止処分になったことを聞かされた。

 他にも、ヒロインが受ける授業は学園側で決定し、体調不良以外で授業を休むことがないよう監視が付くことになったと。

 ヒロインは自分が犯した行動の意味を詳細に教えられたが、「学園内では身分は平等なのに何が問題なのかわからない」の一点張りで、かといって唯一魔素に対抗できる浄化魔法を扱える本物の聖女を処罰する訳にもいかず、この処遇に至ったということだ。

 たしかに学園内では生徒の身分は関係ないとされている。

 でも、それは少しでも不敬な態度をとっただけで上位の貴族に潰されかねない低い身分の家の生徒達や、貴族位を持たない教師達を守る為であって、こういう場合に適応されるものではない。

 それを教師達も説明したが、ヒロインはその考えを受け入れなかったという。


「リリアが『あれは自分が納得のできないことは、周りがおかしいんだと思い込んで理解しようとしない人間だ』って言ってたな」


 珍しくいつもの娼館仲間達と過ごさずに食堂で俺と夕食をとっているアルヴァンと話していると、アルヴァンが思い出したかのように聞いてきた。


「そういえば、君の結婚相手は支援系属性の高位魔力保持者だったんだな。あの舞踏会場でみせた彼女の防御魔法は、見たことがないほど高度で素晴らしかった。君はずっと彼女にあのレベルの防御魔法で守られているのか?」


「どうだろう。俺、六歳の頃からリリアと一緒にいるんだけど、出会ったときから毎日のように防御魔法を重ね掛けされていたから、正直わからないな。さすがにあのときの魔法みたいに皮膚の表面までがっちり覆うようなものは動きにくくて解いてもらったけど、リリアのことだから、俺が攻城戦級の魔法を真正面からくらっても生き残れるレベルにはしているんじゃないか?」


 大げさのようで本当のような想像の話をしたら、アルヴァンはとても驚いていた。


「君には容易にダメージを与えることはできないということか」


 ふざけてそう笑うアルヴァンに、間違っても攻撃するなよと俺は笑い返して。


 その日のアルヴァンとの会話の中、冗談ではない敵意が僅かに覗いていたことに、愚かにも束の間の平和に呆けていた俺は気付くことができなかった。

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