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§0 始まり -1-

 三日月大陸のほぼ中央に、それはぽつんと浮かんでいた。

 辺りを切りだった山々に囲まれ、太陽の光に白亜の輝きを放つ、美しき“天空のル・ラフィアン”――。

 かつて長い聖戦の折、この地を魔物達の手から救った天空に住まう人々の住む都……。

 そこは、背に翼ある者にしか辿り着けぬ孤高の城であった。

 両脇を高い山々に囲まれた城へと続く道は、何一つとしてない。高々と聳え立つ山と山との狭間に、その城はぽつんと浮かんでいるのであった。

 降り注ぐ陽光を乱反射させながら、ゆったりと空を流れてゆくものがある。

 それは、天空城の源ともいえる巨大な川であった。

 右に聳えるティステア山の中腹から、城へと向けて一筋のきらめきが流れてゆく。空を流れる川は、やがて白亜の城へと辿り着き、その地下を抜けて左に聳え立つフィルポ山の洞穴へと消えてゆくのだ。

 それが、空に浮かぶ城へと向かう唯一の道であった。

 天空城へと向かう者達は、小さな木船に乗り空を流れる川を渡る。一見なんの変哲もないように見えるその小舟には、天空人の手により魔法がかけられていた。彼らに認められた者だけが「天空船」と呼ばれるこの船に乗り、白亜の城へと渡る事ができるのだ。

 かつて、悪しき心故に天空船へと乗ることができなかった者達が、何とか天空城へと向かおうとその身を川に投じた事があった。美しく澄んだ川に身を投じた彼らの身体は、透けた川底を抜け、大きく口を開いた谷底へと消えていった。

 天空船を使わずに天空城へと入れる者は、天の使い人と呼ばれる“天空人てんくうびと”の他には居ない。

 天空人――。

 それは、人とは決して相容れる事のできぬ種族であった。輝くばかりの純白の翼を背に飾る、気高き天使人てんしじん

 白い衣に身を包む彼らは、多くの魔法を使いこなす事ができた。それ故、彼らは神の使い人として人々に崇め奉られているのだ。

 その天空人達の他に、地上では二つの種族が栄えていた。

 人間と妖精エルフ……。

 彼らは共に互いの生活を犯さず、助け合って暮らしていた。

 人々は少しばかりの魔法と知恵を使い、その日その日を暮らしてゆく。エルフたちは人間よりも多くの魔法を使い、人々の暮らしの真似をし商いを行った。そんな平穏な日々を暮らしていた彼らの心の中から、戦などという不穏な言葉は次第に忘れ去られていったのだった。

 だが、その穏やかな日々を脅かす異変が、再び世界を襲おうとしていたのだった――。

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