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バナナの皮

作者: 葡萄水菜

「おかあさん」

カラカラの声で言う。

届かないとわかっているのに。


それとも誰かに

[私は母を心配しているんだよ

ほら、私、いい子でしょ?

同情してくれるでしょ?]

と言いたいのか。



我ながら馬鹿馬鹿しいこの思考。

今となっては毎日だ。



ガララッ


誰かが入ってくる。


「・・・・・お兄ちゃん。」


扉を見なくても私にはわかった。

この病室には

私とお兄ちゃんしか来ない。

だけど、今日は、来ない日なのになぁ。


あ、それで、お父さんはと言うと、

一日働いているから来れないの。


お母さんの入院費、私やお兄ちゃんの学費、

生活費だの、稼がないといけないから。


お兄ちゃんだって

お母さんが入院する前は

バイトしないって言ってたのに


高校がバイト大丈夫だからって

バイトし始めた。


みんなでご飯とかも

日に日に無くなった。


みんな、働いているから。


でも私は中学生だから働けない。


何もできない。


だから、勉強をするしかない。

そう思った。



***********

「よう。美和(みわ)。」


「お兄ちゃん・・・・バイトは?」


「今日は休んだ。」


「・・・なんで?」

驚いた。

お兄ちゃんが来るのは、

いつも日本国の記念日だから。


「今日は特別。

母さんの誕生日だろ?」

小さく笑いながら

お兄ちゃんは隣の椅子に腰掛ける。

「そうだね。

でもお母さん、植物状態じゃん。

食べれないよ?」


「おい、そこ言うなよ。」


「うん。」

わかってる。


わかってるから、私だって

ケーキを買ってきたんだよ。


「私も買ったの、ケーキ。」


「えらいじゃーん!でも、2個も?」


「・・・・・・うん。

お兄ちゃんと私の分だから

バナナのケーキだよ。

お兄ちゃん好きでしょ?」


「そーだけどー。

えー、母さん可哀想。」


「あは、そうだね。」

口元だけ笑ってみる。


「おい、笑ってねーぞ。

目が怖い(ρдο)」


「・・・・・・うん。」


しばらく沈黙が続く。

これはいつものことだ。


そうしたらお兄ちゃんは必ず言うの。



「なぁ、このあと公園行かねぇか?」


ほらね。

********


そうしていつもの公園に、行こうとした。

けど、お兄ちゃんが

反対方向に手を引っ張ってきた。


「ふぇ?」


「美和、今日はこっち。」


「?うん。」


こっちに公園なんて、あったっけ・・・・?



そうして歩いていると

信号が見えた。

ちょうど青だ。


「青だよ!ほらほらいこーよ!」

「・・・・・・・そうだな。」


お兄ちゃんが暗い顔をしたけど

気にしない。

早く見てみたい。

この先の、公園。


「ジャア行コウカ。

父さんガ待ッテルカラ。」


「えっ?!お父さんが?」

答えずにお兄ちゃんは走った。


私も追いかける。


でも、その時信号は赤だった。



気づかなかった。私。


でももう、私止まらない。


ごめんなさい。お兄ちゃん、お父さん、お母さん。



キキイイィイィィイ!!!


どんっ




・・・・・・


いた、くない。もしかして。



瞑ってた目を開けるとお兄ちゃんがいた。


「お、おに、ちゃ、」


「大丈夫かぁ?美和。

あっ、すいませんでしたー!!

・・・・・ほら、行くぞ。」


「・・・・・うん。」


確かに、どんって音したのに。


お兄ちゃんは無傷。

なんで?


考えていると、


お花畑がみえてくる。



「綺麗!!!」

「だろ?西花公園って言うんだけど、

毎年この日は花が咲いてるんだよ!」


「へぇええぇ!きれーい!」


「あっ!父さん!!」

お兄ちゃんが手を振る。


高校生にもなって恥ずかしくないのかな。


「おー!美和じゃないか!

連れて来たのか?」


「そう!でな、美和ってば、~~~~」


何の、話を、している、の?

聞こえない。


「~~~~!~~~~~?」


何を、

「美和ッテバ、ノコノコト

着イテキテサ。

コレカラ死ヌノニナ。」


死ぬ?私が?なんで?!


「ソウダナァ。デモ、コレデ

家族全員集マッタゾ!!

祝イダナ!」


何の、話を!!

私、死ぬの?

死ぬと、家族が集まる?

どういう、こと?!


怖くなって後ろに逃げようとした。


すると、

何故か私は


バナナの皮で滑った。

「?!きゃっ・・・・・」


視界の端で


私ノ 家族が 笑ってた。

***********

「ッ?!?!」

目が覚めると天井があった。

いつもの天井。

畳、布団。


私の、部屋。

どうしてあんな夢見たのかしらね。



でもあれは多分妄想。

数十年前、

私はお兄ちゃんを殺して、

お父さんをも殺した。


あぁ、

私は、生き残ったから、

みんなに恨まれてるのね。

もしくは、


私を責めてほしい、とかね。




何十年前、車から私を守って

死んだお兄ちゃん。


世間から私を守ろうとして

体を壊し死んだお父さん。


植物状態が続きすぎて

死んだお母さん。




私は、みんなの分も生きた87歳。



最近は物忘れが酷くて


幼い頃の妄想をするようになった。



つまり、つまりだ。

お父さん達が言ったことが

正しいのなら、

私は年で死ぬのね。


眠いから、寝るわね。


おやすみ。

どのジャンルなんだろう。

私にもわからないです・・・

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読ませていただきました。 不思議な雰囲気のするお話でしたね。 人は死んだ後にどうなるかはわかりませんが、死後再び家族揃って和気藹々とするのも悪くないかもしれません。 これからも頑張…
2012/10/15 00:00 退会済み
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