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極彩色の散歩人

作者: 反逆の猫
掲載日:2026/08/04



 全身ビビッドカラーの服をまとった、あやしげなおじいさんが散歩している。

 目立つから、遠くからでもすぐわかった。


 あのおじいさんはいつからか分からないけど、今までずっとそうしてるらしい。


 他の地域から来た人はぎょっとしてしまうみたいで、警察に通報される事もあったそうだ。


 世の中は一昔前よりちょっと物騒になってるみただから、それはたぶん仕方ないことなんだろう。


 でも、そのおじいさんは極彩色の目立つ格好で散歩するのをやめない。





 赤のシャツに紫の上着、青い帽子に、ピンクのズボン。


 おじいさんは、今日も町の中を散歩している。


 時間は決まって朝の時間だ。


 散歩の日は365日、病気してない日以外はずっと。


 小学校に登校する僕達の目の前を通る事もあるから、僕達の間では有名人。


 最初のころは、皆遠くから眺めるだけだったけど、どこにでも怖いもの知らずはいるわけで、最初に声をかける奴が出てからは、皆話しかけるようになった。


 会話をしてみた感じ、見た目の近寄りがたさと目立つところが薄れるような普通っぽさだった。

 穏やかな表情で笑い、今日は天気がいいねなんて誰でもできるような平凡な話をかわしている。


 たまに転んだりしそうになるとかで杖を使っていて、金色のそれがかっこいい。目立つそれは、僕達にとってはただの遊び道具だ。


 遊んでくれる時、おじいさんと戦いごっこをする時は、びっくりするくらい素早い動きの銃使いに変貌する。


 杖を振り回して、敵に向かって戦いを挑む勇ましい姿を見せるおじいさんは、ちょっと格好良かった。


 戦いの最中に負けて倒れたふりをしている僕達には、正々堂々礼儀正しくを心がけていて、無理に追い込まないというのも男心のポイントをついてくる。


 でも「せっかく生き延びたんだから、これ以上辛い目に遭わせるのは忍びないからね」と言って微笑むおじいさんは、ちょっとだけ悲しそうに見えた。




 仲良くなってみても、おじいさんが極彩色を身に纏って毎朝散歩する理由は分からない。


 でも、好奇心の強い僕達は、誰が何を言わなくても勝手に想像するもの。


 死んだ家族との約束がーー、とか。


 昔は大道芸人とかファッションモデルだったーーとか。


 あるいは海賊で、南国のカラフルな環境が忘れれないからーーとか。


 僕達の頭の中のおじいさんはいつも、大冒険してたり、忙しそうに人生を送っている。


 そんな風に、色々予想を話しては、皆で推理していた。





 しばらくは、原因不明扱いしていたけど。


 理由が分かったのは3年後の事だ。


 遠くからやってきた人が、どうやら人を探しているようだと、この地域で噂になった。


 その人は、極彩色のおじいさんとは、何十年も前に離ればなれになった生き別れの家族だったらしい。


「生きていたなんて」


 その人はおじいさんと再会した時にそう言った。


 長い間、手がかりがすくなくて困っていたみたいだけど。


 でもやっと最近になって、おじいさんの居場所を見つけられたみたいで、再会を喜んでいた。


 この辺りに住んでる事は分かっていたけど、細かい場所が分からないから、実際に聞き込みをしながら探そうかってなった時、有名なおじいさんの話をきいてもしかしてって思ったという。


「昔から目立ち抱かり屋で、皆の中心にいないと気が済まない人だったから」って言ってた。






 そういえば昔、通学路でちょっと話をした時に、何か言ってたな。


「若い時に離ればなれになった家族に会いたいけれど、相手の迷惑になるかもしれないから、探しにいけないんだ」って。


 何があったのか具体的には話してくれなかったけど、とても悲しそうで、会いたそうにしていたから、心の中に残っていた。


 もしかしたら、その家族が探しに来てくれた時に再会するために、あんな目立つ格好をして散歩をしていたのかな。



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