妖精とのコミュニケーション
神凪の家は、巨大な木をくり抜いた中にある。地上四階。地下二階。屋上は木漏れ日が心地良い。ここで昼寝をするのが、彼女にとって至福のときであった。
「うりうりー」
この日はなかなかの豪雨であり、横殴りのそれは、枝振りの良い大樹の内側であっても濡らしてしまうほど。彼女はその自然に逆らうことも、異世界へ出掛けることもせず、家の中で遊ぶことに決めた。
その相手が、とある世界で保護した妖精だった。体長は二十センチほど。総勢三十人。どんな生態かは知らないが、果樹の管理に役立つのではないかと思い、連れ帰ったのだ。
そんな数多くいる妖精のうち、一人が彼女に頭を撫でられている。声は聞こえないが、擽ったいのを表すように、両腕をパタパタと動かしている。
「うーん、何か言っている雰囲気はあるなぁ。口も動いているし。同種の中で、独特のコミュニケーションがあるのだろうか」
魔法使いとしての本能なのか、探究心が刺激された。
「でもメンドイなぁ。専門じゃないしなぁ」
されてなかった。
「こういう時は、一からコミュニケーション方法を構築するに限る。おーい、こちらの声は聞こえているかい?」
妖精は、オーケーのハンドサインを見せた。元いた世界の人間を見て、学んだものだ。
「ほうほう。人間の言葉は理解で出来るんだね。都合のいい仕組みだ。……解剖したい」
大きく両手をクロスしてバッテン。
「ピッチャー、振りかぶって投げた!」
大きく両腕を振り切ってスイング。
「一足す一は?」
笑顔でピース。
「料理作って」
無視された。
「妖精に、要請失敗なんちゃって。あーあ、仕方がない。ご飯作るかー」
妖精は、気ままに遊ぶだけ。神凪の要請は、おそらく叶うことはない。




