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競馬場にて
競馬場でグルメを満喫していた神凪は、偶然知り合いと遭遇した。
「俺、今月の家賃とか、光熱費とか、多分頑張れば何とかできるんじゃないかなぁ、って思うんだ」
「なんで?」
「目の前に鴨がネギを背負ってきた」
神凪は色んなコネクションがあるために、バイト先の紹介はお手の物だった。
「だから、思い切って無茶な賭け方をしてみようと思う。良い子は真似しないでね」
全年齢向けの予防線。
「お目当ての馬でもいるの?」
「ああ。血統も良くて、今回のレースと似た距離で勝利経験がある。出場する馬の脚質も、結構有利に運ぶんじゃないかなぁ」
神凪に競馬の知識はないため、頭の中はホットドッグで一杯である。可愛い犬たちが、細長いパンの周りを走り回っていた。
「多分、一生に一度、あるかないかのチャンスだと思う。もしも勝ったら、是非お礼をさせて欲しい」
犬の中に狸が一匹紛れ込んだ。
「分かった。じゃあ、私はあなたの為に線香でも買ってあげるよ」
神凪なりの、慰める準備だった。ウケ狙いとも言う。
「いや、先行は俺が買う。出来れば差しを買ってくれ」
「霜降り?」
知識があるものとないものは、どこまでもすれ違い、想いは通じない。……今日の馬場は、稍重だった。




