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ドキドキ夏合宿!

羽森高校サッカー部は毎年夏に2週間の合宿をする。今年も例外ではなく、私たちは気候が冷涼な長野に行ってひたすらサッカーをする。出発の日になった。みんなでサッカー部専用のバスに乗り合宿所に向かう。

「よし、着いたぞ」

バスを降りると、ひんやりした空気が肌に触れた。

「おお、涼しい!」「すげえ」「全然違う」

「まずは各部屋に行って荷物を置き、食堂に集まって昼食だ。午後から早速練習開始だからしっかり食べとけよ」

と監督。

「はい!!」

選手も大きな声で返事をした。部屋は選手は4人一部屋だけど私は女子が1人だけだから1人部屋。ラッキー!

お昼を食べた後はグラウンドで練習。みんなすごい量を食べるからびっくりしちゃった。

練習は基本のトレーニングから始まり、鳥籠や紅白戦などなど。いつも以上に厳しい練習でみんなヘトヘトになっていた。またまた夜ご飯を大量に食べた後はお風呂タイム。結構おっきな浴場があって、私はそこも1人でのびのびと入れたので快適だった。選手達の方は学年で時間を分けていたけどそもそも1学年の人数が多いから狭いみたいで、ギャーギャー騒いでる声が聞こえてきた。

「お前押すなって」「お前がだよ」「狭いー」「お前らうるせえよ」

お風呂の後は大きな会議室に集まって今日の振り返り、明日の予定の確認、作戦会議など。お風呂の後だから可愛いパジャマを着て簡単なお団子にして行ったんだけど、それがやたら好評だった。お気に入りの服を褒められるのはやっぱり嬉しいよね!

「月穂かわいっ!」「なかなか見れないパジャマの破壊力えぐい」「無防備な感じが良すぎる」

「月穂ちゃん!」

修斗くんに声をかけられた。

「修斗くん。どうしたの?」

「こっちおいで」

修斗くんは私の手を引いて端の席に座らせ、自分はその隣に座る。

「ごめんね突然。でもなんか心配だったし…嫌だったから」

「嫌?何が?」

「あ…な、何でもないよっ」

「?はーい」

「素直になれよおー修斗!」「キャプテンいいんすかそれで?」

部員に何かをからかわれる修斗くん。顔が真っ赤だけどなんなのかなぁ?

「修斗くん、大丈夫?」

俯いている修斗くんの顔を覗き込むと、さらに赤くなってトマトみたいになった。

「おい修斗笑」「修斗先輩のこんな姿初めて見ました笑」

「う、うるせえなあ。ほら、ミーティング始まるぞ!」

ミーティングは30分ほど続き、その後は自由時間があって10時30分には就寝。そんな生活だった。


7月22日(火)

今日から夏合宿が始まりました。もちろん1人部屋だけど、部員達と同じ屋根の下で過ごすのは何だか変な感じ。選手達の食べる量が多くてびっくりした。しっかりみんなの事を支えて、羽森高校サッカー部のレベルアップに繋がるように頑張るぞ!


それから毎日選手達はピッチを走り、私は選手のサポートに監督の手伝いに走り回った。

合宿開始から1週間経った中日のある日。私は監督に頼まれて、倉庫に三角コーンを取りに行った。

「よいしょっと……重いなあ」

コーンは結構大きい上に数も多くて、前は見えないしフラフラする。それでも持っていくのが遅くなるとトレーニングに支障が出るから急いで走って持っていく。

「わっ!」

木の根っこが地面にむき出しになっていることに気が付かず、転んでしまった。

「痛…」

右足首がとてつもなく痛い。捻っちゃったみたい。でも急がないと。痛みを堪えながら立ち上がり、できるだけ右足に負担をかけないように走る。

「監督!お待たせしました」

「ああ、ありがとう。どうしたお前。転けたのか?」

服が泥だらけの私を心配してくれる。

「はい、木の根っこに引っかかって転けちゃったんですけど、怪我はないので大丈夫です」

余計な心配をかけたくなくてつい嘘をついてしまった。

「そうか」

しばらくは突っ立って練習の様子を見ているだけだから何ともなかったけど、休憩時間になると選手にドリンクやタオルを渡すため動き回らないといけない。しばらくはできるだけ見た目にも出ないように我慢していたけど…どんどん痛みが増して、歩けなくなってしまった。

「いたい……」

座り込んで足を押さえていると、修斗くんが様子のおかしい私に気づいて来てくれた。

「月穂ちゃん、大丈夫?足が痛いの?」

「あ、修斗くん…大したことないよ、気にしないで」

「本当に?でもずっと顔しかめたり、さっきも足引きずってたよね…ちょっと見せて」

「あ…」

修斗くんは座っている私のそばにしゃがみ、靴を脱がせようと足首に触れる。すると、痺れるような痛みが走った。

「痛っ!」

「ごめん、今のでも痛かった?」

修斗くんは足首に触れないようにしながら靴を脱がせると、そのまま靴下も脱がせた。

「めっちゃ腫れてるよ!これは痛いなあ」

私の右足首は青紫色に腫れ上がっていた。

「監督!!マネージャーが怪我してます!」

「ほんとに大丈夫だから…」

「大丈夫じゃないよ!この足でみんなの為に走り回ってたの?無理しすぎ。捻挫は侮っちゃダメだよ。治療してもらわないと」

「佐伯、どこを怪我したんだ?」

「右の足首です。捻ったみたいで腫れ上がってます」

修斗くんが代わりに答える。

「こりゃ痛いなあ。ドクター!佐伯が足を捻った。見てやってくれ」

監督がチームドクターの山川さんを呼ぶ。どんどん大事になっちゃった…どうしよう…。

「はいはい、おお、これは大変だ。とりあえず応急処置をするから、この後近くの病院に行こう。骨折している可能性もあるからね」

「ご迷惑おかけしてすみません…」

「いいって。これが俺の仕事なんだから」

そう言って優しく微笑む山川さん。そうは言っても山川さんは選手の為にいる訳だから私のせいでこんなことになってしまって本当に申し訳ない。

「監督も、すみません」

「いいよ、コーン取りに行った時に転けたんだろ?じゃあ俺のせいだ。お前は気にすんな」

監督もそう声をかけてくれる。みんな優しいからこそ、申し訳なさすぎる…!

「よし、できたよ。じゃあ病院に行こう。タクシー呼ぶから」

そうして私は山川さんと一緒にタクシーに乗り、病院に行った。


幸い骨折は無く、捻挫で済んでいた。でも全治2週間で、しばらくは運動ができない。選手の手伝いもできることが減るから私のせいでみんなに迷惑をかけてしまう…。落ち込みながら合宿所に帰ると、すでに練習が終わっていてみんなが待っていた。

「月穂!」「月穂ちゃん大丈夫?」「骨折してなかった?」

「皆さん、ご心配おかけしてすみません。怪我は捻挫なんですけど…全治2週間で、しばらくは運動もできないんです。本当にすみません」

そう言って頭を下げる。

「いいよいいよ、気にすんなって」「月穂ちゃんにはいつも世話になってるからね」「夏休みだと思ってゆっくりしなよ」

「皆さん…ありがとうございます……!」

私は本当に素晴らしい仲間に恵まれた。


7月28日(月)

今日、怪我をしてしまいました。迷惑をかけてしまったのに監督も、山川さんも、選手達も本当に優しくて泣きそうになりました。早く治してチームの役に立てるようにします!

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