第五章 剣を置いた日と、最後の誓い
これはAIが書いたものです
春風の吹くある朝、一人の老人が『しあわせの家』にやってきた。
背筋はまっすぐ、白銀の髪をなびかせて、まるで今でも戦場に立てそうな気配すらある。
「……フレイア・リオーネ。元《白獅子騎士団》団長。ま、今はただの年寄りだがね」
そう言って彼女は、僕に真っ直ぐな眼差しを向けた。
その瞳に映るのは、かつて幾千の戦場を駆け抜けた誇り。だが、そこには深い疲れと、何かを抱えた影もあった。
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彼女は夜、よく一人で外の木刀を握っていた。けれど、振ることはしなかった。ただ、手の中で握りしめるだけ。
ある夜、僕は思い切って声をかけた。
「フレイアさん、もしよければ……昔のお話、聞かせてもらえませんか?」
しばらくの沈黙のあと、彼女は静かに語り始めた。
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「私は……“負けなかった”の。
数えきれない戦いで、どんな敵にも、一度も膝をつかなかった。
でも、それは……ずっと、誰かを失い続ける人生だったのよ」
言葉は静かだった。でも、その一言に込められた想いは、重く、深く、胸に響いた。
「団の仲間も、民も、愛した人も……私は守ると誓って、それでも、みんな……」
フレイアさんは、震える指で、首元のペンダントを握った。そこには、小さな銀の指輪が通されていた。
「これは、あの人がくれた最後の贈り物。戦が終わったら、畑を耕して、子どもを育てて、笑って老いようって……でも、その日なんて、来なかった」
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しばらくして、彼女はぽつりとこう言った。
「……私ね、もう剣を振る力はない。でも、この場所でなら、ようやく“負けてもいい”って思えるの」
彼女が初めて見せた、戦士ではない表情だった。
「優斗、あなたは不思議な人だね。老いを、弱さだとは思わない。
誰かの話を聞いて、その命を尊ぶ。それは……どんな剣より強い力だよ」
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その日の夜、フレイアさんは久しぶりに木刀を振った。
鋭い音はしなかったけれど、動きは静かで、優しかった。
「これはね、守るためじゃない。ただ、風と踊る剣。誰も傷つけない、“最後の剣舞”なんだよ」
僕は見惚れていた。老いた身体が、それでも美しく動く姿に。
“強さ”って、力のことじゃない。
どんなに傷ついても、人を想い続ける心のことなんだ――そう思った。
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翌朝、フレイアさんの部屋には、彼女の手で書かれた小さなメモがあった。
「戦いの中で守れなかった人たちに、今ようやく“おかえり”と言える。
この家で、生きててよかったと思えたから。ありがとう。」
僕はその言葉を胸に刻んだ。