第三章 魔法を忘れたおばあちゃん
これはAIが書いたものです
春が近づく頃、次に『しあわせの家』を訪れたのは、ふわふわの銀髪をしたおばあちゃんだった。小柄で、背中を丸めて歩くその姿に、どこかただ者ではない気配を感じた。
「わたくしの名は……ええと……ミレーヌだったかしら」
忘れっぽいのか、名前すら曖昧なその人は、長く薄い指を揃えて、静かに僕に言った。
「あなた、魔法の気配がしますわ。かつて、私も魔導院の長老をしていたような……でも、どうしても思い出せなくて……」
魔導院? 長老?
正直、僕は魔法の世界のことはよくわからない。でも、彼女が何かを忘れてしまったこと、それがずっと心に引っかかっているのはわかった。
「ミレーヌさん、よかったら……昔のお話、少しずつ聞かせてもらえませんか? きっと、大切な何かを思い出せるかもしれません」
「……そうね。お茶でもいただきながら、少しずつ思い出してみましょうか」
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それからの日々、ミレーヌさんは時折つぶやくように、自分の若き日のことを話してくれた。
「……私は、花の魔法を得意としていたの。戦いの魔法じゃない、育てて、癒して、守る魔法」
ある日、彼女は僕の差し出した紅茶を見つめ、ぽつりと言った。
「……彼はね、戦士だったの。私とは違って、いつも前線で命を賭けていた。魔法の花束をあげたあの日が、最後だった」
その手が震えていた。何十年も経って、ようやく言葉にできた想いだったのだろう。
「私の魔法は、もう咲かせることができない……そう思っていたけど、あなたと話していると、胸の奥が少しだけ、暖かくなるの」
その日、ミレーヌさんの部屋の窓辺に、一輪の青い花が咲いた。誰も魔法を使った気配はなかった。でも、確かにそこにあった。