第二章 最初の入居者と、赤いマフラーの思い出
これはAIが書いたものです
廃屋を修理して作った介護施設『しあわせの家』に、最初に入居してきたのは、元・剣士の老人、ガルドさんだった。
「若いの、ワシの話など退屈だろう」
「そんなことありません。昔の話、ぜひ聞かせてください」
夜、暖炉の前でガルドさんは語りはじめた。
「……あれは、まだワシが十八の頃じゃった。大雪の夜、旅の途中で倒れてな……目を覚ますと、小さな村の娘がワシを看病してくれていた」
「……」
「その娘がくれた、赤いマフラー。それが、ワシの宝物だった」
皺だらけの手で、ガルドさんは古びた赤い布を取り出した。かすかに薬草の香りが残っていた。
「ワシは戦ってばかりだった。だが、あの娘だけは……ワシの剣じゃなく、ワシの心を見てくれていた」
涙をこらえるガルドさんの横顔は、まるで少年のように輝いていた。
その夜、ガルドさんは眠れないのか、窓辺でじっと空を見つめていた。僕は静かに隣に座る。
「……その娘さんとは、再会できたんですか?」
ガルドさんは小さく首を横に振った。
「あの戦争で、村は焼かれてしまってな。何日も探したが、結局……誰一人見つからなかった」
寂しそうに、けれどどこか安らかな顔だった。
「だが、ワシは今でも思うんじゃ。あの娘が、ワシに“生きてほしい”と思ってマフラーを渡したなら……ワシが戦いをやめて、生きて語ることも、意味があると」
震える声に、僕はうなずくしかできなかった。
介護というのは、ただ身体の世話をすることじゃない。心の奥に寄り添い、その人の人生の続きを一緒に歩くことだ。
「ガルドさん、そのマフラー、今でもきっと温かいですね」
ガルドさんは微笑んだ。そして、僕の肩をぽんと軽く叩いて言った。
「ありがとう、若いの。ワシは、ここに来てよかった」
窓の外、夜明けの空に、星がひとつ流れていった。