転生したら王の暗殺の容疑者として殺されそうでした
兄弟が仲良しな感じの転生物書きたかったので、なんとなく書いてみました。
「被告人。。。お主に王暗殺の疑惑がかけられておる。よって死刑に処す。なにか言い残すことは?」
「んばあ~。あう~。」
ここ裁判所。被告人おれ。おれ転生してすぐ良くわからない預言により殺されそうです。お父さん! 農民の3男坊だからって、食い扶持が減ったぜ。フッ。みたいに見捨てやがって。お前ぜってー許さねえええ!!!!!!!!
お母さまはおれを産んで天に召されたのでお顔も知りません。そうつまりおれを救ってくれるひとは誰もいなさそうだった。
おれ。詰んでね? 誰か助けてーーーーー!! ここに、国王を暗殺するからとまだ無罪の少年がいます! この国は狂ってるのか? 誰か-------!!!!!!
「アウウウウ!ビエエエーーーーー」
法廷に赤子の泣き声がこだまする。
「待て裁判長。」
「ハッ。王よ。」
「預言によればコヤツが将来我に剣をむけると。うむ。その漢気気に入った! よしっお前我の養子になれ!我が自ら骨の髄まで教育してくれようぞ!」
かくして農民の3男坊は一夜にして王子になった。
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12年後
「王子さま起きてください! 今日は待ちに待った”試練”の日ですよ! 起きて下さい!」
メイドのマリアが起こしてくれた。ああそうだった。今日は待ちに待った”試練の日”。今日おれがどのような才能を持って生まれたか明らかになる。
「あと5分・・・。」
おれはベットにダイブした。
「さっさと起きなさいよ! だらしがないわね!」
突然風をきって飛び込んできた金髪の少女がまだ痛い気な少年にヘッドロックをかます。
「ムグググッグ。ギブギブギブ!!!!!!!!」
「やれやれ。はしたないぞ。エリザベス。」
続いて入ってきたのがこの国の王太子のラズモンド。
「お兄さま! こいつ今日大切な日だから夜更かししちゃダメって言ったのに昨日遅くまで起きてたんですよ!」
「ティーダ。お前・・・。まったく。さあ行くぞ。」
ちなみにこのティーダって名前がおれである。残念ながら美少女っぽい名前だが男だ。
兄に首根っこつかまれおれは食卓まで引きずられていく。
「こ、こらは放せ~! 自分で歩ける! 歩けますのでお兄さま。」
「ふん。朝ごはんは早めにすませ。私は今日公務が立て込んでいるので悪いが先にすませた。」
「はい。分かりました。お兄さま。あの。もう食卓に着きましたので離して下さい。あのー。聞こえていらっしゃいますか?」
いつまでおれは野良猫みたいに兄の手でブラブラしてなくてはならないのだ!?
「いつもありがとうございます。お兄さま。い、いや。お兄ちゃん。」
「うむ。」
解放された。ああもうめんどくせえええええ。
「今日も元気があって喜ばしいことだ。息子よ。」
あ、はい。おれがくるの待っててくれたんですか。国王さま。暇なんですか? 席についてどうやらおれのことをこんな時間まで待っていてくれたらしい。
「父上・・・。」
側仕えの者と大臣が懐中時計を爪でたたいている。
「行ってらっしゃいませ。父上。」
「ああ。頑張れよ。息子よ。」
とっても容姿と仕草がイケメンな国王はマントをひるがえしながら退室していった。まったくこの親子ときたらさ! 異世界に転生したらどうしてかどいつもこいつも!
はい。おれ・・・。こんなおれを迎えてくれた王家のことが大好きです。
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急いでおれはお約束とでもいうのか。「いけない遅刻遅刻~~~~~~!!!!!!!!」
と食パンをかじりながら5分前に試練の部屋に入室した。
「ふざけてんのか?お前!」
と誰もが思ったかもしれない。だがおれはうつけっぽく振る舞う必要がある。
姉上は【聖女】。兄上は【牽制】。最高峰の才能をもつ彼らは多少愛が重く変わっていようともああ見えて完璧超人である。
王家の一員であって一員でない、元は卑しい身分であるおれが愚かにふるまうことでその差が浮き彫りになり彼らの評判が上がる。
彼らはけっしておれにそんなことを頼んだりしない。だからうつけ作戦をしているのはおれの独断だ。まったく大多数の思考を操るなんて容易い。
誰も彼もが自分は賢い自分は正しいと信じていやがる。君たちはそのままでいてくれ。おれはあの日。国王に命を救われた日から、なんでもすると自分に誓ったのだ。多少なりとも腹黒い生き方くらい些細なことである。許して欲しい。
「受験番号。0002。【大魔術師】」
会場内がざわつく。今のスキルは宰相の息子だ。イケメン眼鏡。いいなあ~。伝説の級のスキルである。
「受験番号。0181。【雷神の加護】
公爵家の令息のダイアンである。なろう系主人公を思い浮かべる。もみあげイケメン。はい。この人チートです。兄さまの【剣聖】に勝るとも劣らない才能である。
他にも名だたるご令嬢ご令息たちが才能を手にしていった。
「最後の受験者です。受験者。0255。【推しの狂愛】」
【推しの狂愛】なんだそれは? 会場が悪い意味でざわつきだした。
手にした才能がおれに語りかけてくる。あなたは【クレオパトラver2.2】に変幻することが出来ます。なんだって!? おいおいおい。その名前はダメだ。おれに刺さる。
*解説**【クレオパトラver2.2】とはゲームのキャラクターでそのキャラを入手するためには1万時間のプレイ時間とアカウントLv200の達成などコストがかかりすぎ最難関入手のキャラと言われている。その分キャラの強さは折り紙つきで圧倒的な美貌とチート性能を誇る。
おれの時代キタ-------!!!!!! と普通の異世界転生だったら思えたのだろう。だがおれは素直には喜べなかった。おれの父上は紛れもなく最強だった。おれがどうしたって殺せるわけがなかったのだ。今までは。
だがおれがこのチートスキルを手に入れたことで話が変わってくる。おれがやろうと思えば父上は倒すのはかなり現実味を帯びてきてしまうのだ。
それほどまでにチート。おれには過ぎた力である。
その日おれは失望を禁じえず帰路についた。
鏡の前で変幻する。踊り子風のよく見たコスチューム。額には繊細な金細工のコブラの王冠が控えめにひかっている。
はあ・・・。おれこの国に平和を持たさせるような能力が欲しかった。戦闘力なんて要らなかったのに。
「コンコンっ。入るぞ弟よ。はっ!? 誰だお前は? まさかっ。女難の相!?」
誰が女難だ死にさらせえええええ! ちょいとばかり気が立っていたおれは顔面に思いっきり拳を兄上に叩き込んだ。
バシンと容易く受け止められたおれは戦慄した。
諭すように冷静な視線がおれを貫く。たったこの一瞬でおれの変幻後の戦闘力を見抜き、そしてその速度に対応して受け止めてみせたのだ。
これが兄上の戦場での顔か。いつもの飄々とした雰囲気はそこにはなく。ただ真摯におれに向き合っている。この国の盾。さすが最強の一角たらしめる兄上。
強者の風格が威圧してくる。
「ティーダよ。それがお前の才能か!? ふむ初めて目にするな。」
どうやら一目でおれだと見抜いたらしい。まったく敵わないな。兄上。
「お、お兄ちゃん。」
なぜか感極まってひしっと抱き着いてしまった。不審者扱いしないでくれてありがとう。信じていたぜ。あと殴りかかってごめん。
扉の向こうからひょこっと顔を出してきたのはエリザベス。ま、まずい。これは流石に誤解されるよな?
「何してるんですの? ティーダとお兄さま?」
お前もかーい。
「な、なんでおれと分かったのです。姉上。」
「さあね? ただ・・・。他のひとがあなたの姿になったとしても分からないわ。でもティーダがあなたの姿になったことなら分かるのよ。」
なんでもお見通しってわけか。まったく敵わないな。姉さま。
「さあ行くわよ!? お父さまにティーダが物凄い美女に変身できるってこと説明しなくては!」
「ああ。善は急げだ。」
いやだから。あの。おれ自分であるけるんだが。なぜ引きずられて行くの? 両肩をがっしりガードされおれは廊下を滑って行く。ああ推しキャラのこんな情けない姿みたくなかった。
「入りますわ。お父さま。」
「ああ。おや誰だ貴様は?」
「お父さま?」
「父上?(怒)}
「・・・。」
「冗談だ。ずいぶんと美女になったなティーダよ。驚いたなジョセフィーヌ?」
「あらあら。」
ニコニコしたお母さまのヒールが近づいてくる。このひととても優しいんだけどいつも笑顔でちょっと怒らさせたら怖そうなんだよなあ。
「ではこちらにおいでなさい。ドレスアップのアドバイザーをお呼びしますわ。」
「あの。お母さま。おれ変幻しているだけなので。この姿は解除するというか。元に戻りたいというか。」
「あらあらそうでしたか。ティーダ。その美貌はもはや才能よ。私のためを思って。時々変幻して欲しいですの。エリザベスと3人で新しいドレス選びに行きましょう。もちろんあなたの分も!」
うーん。やっぱりこのひとたちの反応いつも斜め上で面白い。
「あ。はいお母さま。」
思わず有無を言わさぬ雰囲気に飲み込まれてしまった。
驚いたことにこの国の美的感覚においてもクレオパトラの美貌は特別らしい。いやあ。お母さまもエリザベス姉さま2人とも圧倒的美女なんですが。流石というべきか。おれの推しキャラである。
家族円満で行けそうなのでおれこの能力で良かったんだとそう思えた。
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3年後この国はこの国の歴史上最大規模の戦争に巻き込まれ、その戦場には圧倒的な美貌を誇る無敵の将軍とそれ勝るとも劣らない獅子奮迅の働きをする司令官が各国の兵を蹴散らしていたという。
そして今晩もまた戦いのあとの祝杯を上げる賑やかな声が弾幕の中からあがっていた。
「雪の雫さまいける口ですね! ほらもっとぐぐっと!」
「なんだ貴様ら馴れ馴れしいぞ。」
やれやれ。兄上のブラコンには困ったものである。
読んでくれてありがとう♪