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第9話 シルヴィア派の陰謀

婚約式を終え、その日のうちに辺境伯家へ戻る道すがら、私はつかの間の休息のように馬車の窓から外を見つめていた。


 ——と、そのとき。城下町の大通りを進む馬車の中で、ふと嫌な視線を感じた。


 (誰かが……私を見張っている?)


 何気なく窓を開き、外を覗いてみても、そこには通行人が行き交っているだけで特に怪しい人物の姿は見えない。


 (気のせい……? でも、ゾクッとする感じがあったのに)


 私は周囲を注意深く観察する。


すると、あからさまにこちらを伺うように歩いている数人組を見つけた。


紺色の外套にフードを深くかぶっていて、顔がよく見えない。


普通の通行人というには不自然な雰囲気だ。


 (……あの人たち、誰? まさかシルヴィア令嬢が早速何か仕込んでいる?)


 そんな可能性が脳裏をよぎる。


彼女なら平然と私を脅すために手下を送り込むことだってやりそうだ。


あるいは王太子殿下が私を監視しているとも考えられる。


 いずれにせよ、あまり気分の良いものではない。


 これから先、私は常に誰かの監視や干渉を受けながら生活することになるのかもしれない。


自由もない、愛もない、形だけの婚約者……。


 それでも、私は諦めない。


 (絶対に、こんな状況から抜け出す。前世のように、理不尽に押しつぶされたまま終わるなんて御免だ)


 自分を鼓舞するように心の中で繰り返す。


もし、シルヴィア令嬢や王太子殿下が私を利用するだけ利用して捨てようとするなら、そのときは逆に私が“とっておきの一手”を使う。


 私の秘密の魔術を使えば、彼らがよほどの準備をしていない限り、痛い目を見るだろう。


 ただし、使いどころを間違えれば私も危険を伴う。だからこそ、慎重に時を待つ必要があるのだ。


 こうして、私の“形だけの婚約”という不本意な状況がスタートした。


 周囲には暗雲が漂い、私を陥れようとする敵もいる。


 けれど、私を大切に思ってくれる家族や友人たちのためにも、前世からのやり直し人生を無駄にはできない。


 これは、転生令嬢・エヴェリーナが未来を掴み取るまでの、ほんの始まりに過ぎなかった——。

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