第17話 エヴェリーナの新たな未来――そして“本当の恋”へ
舞踏会は大混乱のまま事実上の“お開き”となった。
シルヴィア令嬢は不正の罪状を問いただされるため宮廷司法官に拘束され、王太子サーシス殿下は国王陛下からの叱責を待つ身となる。
その後、正式な場において**「王太子サーシス殿下とエヴェリーナ・クラールの婚約解消」**が発表されるのは、そう遠くない未来だった。
私の方はというと、思いがけないほど穏やかな日々を迎えている。
もちろん、一時的なスキャンダル扱いは避けられないが、クラール辺境伯家の威光と、私が提示した決定的証拠のおかげで、世間的には“王太子側の不義と裏工作を暴いた英雄的存在”のように認識されているらしい。
前世とは違って、“理不尽に踏み潰されるだけ”ではなく、自分で道を切り開くことができたのだ。
そんな私の元に、エルマー・ベルスティン公爵から手紙が届く。
――「いずれ、貴女を自国の宮廷へ招きたい。私は貴女の力と聡明さを高く買っている」
と、言葉を尽くした文面。
あの舞踏会では、エルマー公爵は事態を面白がるように静観していたが、最後に私を手助けする余地がなかったくらい、私が自力で決着をつけてしまった。
それで余計に彼の興味を惹いたらしい。
(……彼はただの“したたかな外交官”かと思っていたけれど、もしかしたら誠実な面があるのかもしれない)
思えば、私も「今後どう生きていくか」はまだ白紙だ。“王太子妃”という重荷が外れた今こそ、自由に人生を謳歌したい気持ちが強い。
エルマー公爵がもし本心から私と手を取り合いたいと思うのなら、ゆっくりと人柄を見極めてみてもいいかもしれない。
あるいは別の未来もあるだろう。“辺境伯家の令嬢”としての政治的手腕や、魔術師としてのキャリアを極める道も。
いずれにせよ、私はもう誰かに利用されるだけの存在ではない。
前世での教訓を胸に、**「私自身が幸せになるために努力してもいい」**と、素直に思えている。
雨上がりの空のように、胸がすっと晴れ渡る。
もしまた理不尽な権力者が私を翻弄しようとすれば、**“影写しの魔術”**を使って事実を暴き、堂々と“ざまぁ”してやるまでだ。