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制御なきオブザーバー  作者: ひろすけ
7/24

7.苦悩

また、ひとりの日々が続く…

11月になり肌寒くなってきた。

相変わらず周りの目は冷たい。


もう許してほしい…

高校1年の時や中学の時のように

友達がいなくても全く相手に

されていない時の方がはるかに楽だ。


今は違う…

軽蔑されている。

他の3人もひとりで耐えてるんだって

思っても何もならない。

今は自分の事しか考えられない。

今は冬休みを待ってるだけだ。


そんな事を考えながら

次の授業の教科書を机の中から

取り出そうとした時、

白い髪が出てきた。


ゾッとする…

見る勇気もないが、

見ない勇気はもっとない…

恐る恐る紙を開く…


「次はお前にしようかな」


目の前が真っ暗になる…

犯人探しはやめたのに…

許してもらえないのか。

ひとりでいて

大人しくしてるのに。

次のターゲットは僕なのか。


怖い…

逃げ出したい。

ひとりでは無理だ。

やっぱりみんなに会いたい。


そう思い、

携帯を見てみると

メールが来ていた。

片瀬からだ。

「大野が最近学校にきていない。

メールをしても返信がない。

今日みんなで家に行ってみよう。」


そ、そんな…

まさか、大野まで…

大野もいじめられるのか。

大野までそうなったら。

何も考えられない…


その後の授業は全く頭に入らない。

早く放課後になってほしい。

いや、なってほしくない…


僕は大野の家を知らないので

近くの公園で落ち合った。

「まだ2日間だが、

メールの返信がないのが気になる。」


片瀬は大野と同じクラスのため

頻繁にメールしてるようだった。


足早に大野の自宅に向かった。

向井の病院に行った時と

同じ気持だ。

気持ちが悪い…

何もなければいいが…


片瀬がインターホンを押す。

応答がない…

再度押すが返答がない…


「あいつの母親は遅くまで働いてるんだよ!

だからあいつしかいないと思うんだけど…」


みんなの気持ちが焦る。

片瀬が玄関を離れて

大野の部屋らしき窓を

確認しようとした時、

インターホンから

声が聞こえた。


「はい…」

元気のない声だが大野だ。


「お前何してるんだよ!、俺たちだよ!

早く出てこい!」


「えっ?」

インターホンが切れた。

しばらくすると

大野がでてきた。

パジャマ姿だ。

明らかに疲れ切ってる様子だ。


「どうしたんだよ!

どうしてメールよこさないんだよ!」


「ご、ごめん…

とにかく入って…」


疲れ切ってる様子には

驚いたが生きている。

よかった…


階段を登り大野の部屋に

招かれる。

大野の部屋はとても整頓されていた。

大野の部屋に入るのは初めてだが

これは流石に不自然に感じた。


「メールは本当にごめん。

ちょっと疲れてて。」


「大野?」


「何?」


「言いにくいけど…

何時もこんなに部屋きれいじゃないだろう…

お前…、まさか!」

片瀬の質問に

みんなで大野を見る。


大野は微笑みながら言った。

「そうじゃないよ。

ずっと部屋にいても

する事はないからさ。

気晴らしにしただけだよ。」

みんなで安堵する。


「でも…

考えた事はあるよ…」


河原が大野の顔を覗き込む。

「いじめられてるのか?」


「そうじゃないけど…

手紙とかが多くて…

机の中、下駄箱、教室のロッカーとか。

段々、怖くなっちゃって。

俺もいつ、始まるのかなって…」


「そうだよな。

俺も参っちゃってるよ…」

河原が同調する。


「俺、思ったんだけど…」

片瀬は全員が注目してから

更に続けた。


「いじめてる奴らは

初めから俺たち5人が

ターゲットだったんじゃないか?

たまたま向井が初めで、

ひとりずつ追い込んで

行くんじゃないか!」


「…」

どういう事だ。

全員が自殺するまで

続くって事なのか!


「なんで俺達なんだよ!」


「分からないけど、

いじめに理由なんかないだろ?

いけてない5人が

楽しんでんじゃねえよって

感じなんじゃないか!」


「普通向井が死んだ時点でやめるだろ?」


「知らねえよ!俺に当たるなよ!」

片瀬と河原の口論が響き渡る!

その後、静寂が続く。


このままだったらみんなバラバラになる。

それだけは嫌だ。

やっぱりみんなが心の支えだ。

いじめてる奴に立ち向かうのは無理だけど、

みんながバラバラになる事は

避けないと!


「僕も今日、机の中に入ってた!」

誰も聞いていないが勇気を持って

続けた!


「とにかくもうすぐ冬休みだし、

年が明ければすぐ卒業だし。

たまに学校以外でこうやって会ってさ!

乗り切ろうよ!」

僕はみんな同調すると思ってた。

しかし、片瀬からは想像とは違った

言葉が帰ってきた!


「お前、何もわかってないな!

今はこうやって、仲間がいるから耐えられるが、

卒業したらひとりぼっちだぞ。

仲間がいたら言いたい事言えるが、

バラバラになったら俺達には何もできない!」

最悪な未来が待ってるだけだ!


「…」

何も言えない…

確かにそうだ。

卒業したって何も変わらない…

びくびくして生きていくんだ。

自分自身で変わっていくしかない。

そんな事は分かっている。


でも今はみんなで乗り越えたい…

そんな未来が待っていたとしても…

今は仲間がいるんだから…



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