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制御なきオブザーバー  作者: ひろすけ
3/24

3.それぞれの思い

葬儀は向井の両親の意向で密葬となった。

僕らも参列する事は許されず、

49日を過ぎて落ち着いた頃自宅の方に

伺う事になった。

 学校では全校集会が開かれた。

校長先生は向井の死は自殺ではなく事故として発表した。


そういうものなのだろうか。

それとも向井の両親の意思なのだろうか。

学校は追求はしないのだろうか。

よくわからない。


ただなんとなくだけど周りの生徒はいつも通り

なんの動揺もなく話を聞いてるように思える。


事故って聞いたからか?

やはり真実通り発表した方がいいと思うけど。


向井の死から数日たったがいまだに胸の気持ち悪さが

取れないでいる。

向井の事を考えれば考える程わからなくなる。


向井が生きてた頃は昼休みはいつも5人で会って

色んな話をしていたが、

今はそんな気分にならない。

みんなも同じだろう。

しばらくは集まらないんだと思う。


ひとりには慣れている。

みんなも同じだ。

元々、ひとりでいた者同士が

集まっているようなものだった。


 最後にみんなに会ったのは病院だったが、

みんな一言も話さずに別れてしまった。

みんなも僕と同じように向井の事を

考えてるんだろう。

これに関して、みんなで集まって勝手に

解釈してはいけないと思う。

それぞれがそれぞれで考えないと。

最後には答えがほしい。

もう手遅れかもしれないけど…


 みんなで集まらなくなってからは

昼食もとらない。

購買でパンを買って5人で集まってた頃が懐かしい。

僕ほどではないが向井は大人しい

タイプだった。

でもみんなでいる時は本当に楽しそうだった。


向井はどんな気持ちだったんだろう。

残された4人がどんな気持ちになるか

少しでも考えてくれたら

とどまれたんじゃないだろうか。

そんな事も考えられない程の

悩みがあったのかもしれないけど…


家庭の事か、いじめ、学力不足?

理由は沢山あるけど。


向井は勉強もできたし、

いじめはないだろうし。

家庭の事か?


向井の家族には会った事がないから

よくわからない。


最近の昼休みはこんな事を考えながら

窓の外を眺めている。

そんな中、渡り廊下を歩いている

片瀬を見つけた。


そういえば、向井を最初に

発見したのが片瀬だった。

きっと目に焼き付いてるはずだ。

僕なんかより相当辛い思いを

してるんだろうな。


声をかけようにも

何も言葉が生まれてこない。

片瀬もそんな事をしてもらいたくない

だろうし。


 僕は高校1年の終わりまで友達が

いなかった。学校ではいつもひとり。

小さい頃から嫌われるのが怖かった。

友達が出来そうな時期もあったが、

誘われてもすぐに断ってしまい、

誘われなくなる。

そんな事の繰り返し。

自分でも普通ではない事はわかっていた。

中学生の頃は親も心配して色々

声をかけてきたが、僕が嫌がる態度をすると

しだいになのも言わなくなった。


それでもこれでいいとは思わなかった。

何かを変えたいって…もがいてた。


 でも高校2年生の時に最初に隣の席になった

河原が声をかけてきてくれた。

すごく嬉しかった。

大事にしようと思った。

河原も友達を作るのが苦手だったようで、

僕らはすぐに意気投合する事ができた。

休み時間はいつも二人でいた。

僕は話すのが苦手だから河原が

一方的に話してくれた。

僕はそれだけでよかった。

河原もつまらない奴って思ってたかも

しれないけど、楽しそうだった。


2ヶ月程、二人でいたが、河原には

そこまで親しくないらしいが、

1年生の時に同じクラスだった大野という

友達がいて、休み時間には河原の席に

遊びに来るようになっていた。

しだいに僕にも話しかけてくれるようになり

また友達ができた。


夜、家にいる時も本当に楽しい。

こんなに簡単に友達が出来るなら

もっと早くから努力すればよかった。


河原と大野は土日もよく会っているようだった。


僕も初めの頃誘われたが、一度断ってしまった。

その後全く誘われなくなりすごく不安だったが

二人は理解してくれてるようだった。


 3ヶ月ほど休み時間は3人で会っていたが、

大野が中学校時代に知り合いだった片瀬と

また話すようになり、そこに向井も

付いてきていた。

知らない間に5人で集まるようになっていた。


昼休みと帰り道。

最初の頃は話すのはほとんど河原と片瀬で

たまに大野だった。

僕と向井は聞いてるだけだった。

だけど、少しずつ慣れてくると

向井はよく話すようになっていた。

向かいが話すと笑いもおきていた。

話すのが上手ですごく羨ましかった。

向井は僕の方にも目を配ってくれて

仲間はずれにはしないでいてくれた。


たまに周りの目が気になっていた。

少し大声で盛り上がると周りは見てくる。

僕らはイケてないグループなんだろうなと

思っていた。


でもその輪にいるのは本当に楽しかった。

この一年間は本当に楽しかった。


だから向井の死は本当に悲しいが、

みんながバラバラになった今

少しだけ恨んでしまう。

もちろん、それは不謹慎だが、この気持ちを

解決するにはやはり自殺の真相を知るしかないと思う。

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