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第69話 無自覚のふり

「それで、なんで子供がいるのにこんなところに来てるんですか?」


待機室で尋問タイム、三児の父が何しに戦時中の国に来てるんだよ、まだ帰ってこないツルギの代わりにボクが問い詰める。


「いやー、ツルギさんに教わるのが手っ取り早いかなって・・・・・・」


へへ〜、じゃないわい!


「答えになってません!ここだって空襲もありますし、スクランブルなんてしょっちゅう、守る人が増えるボクたちの身にもなってください」


「それは、その、ごめんなさい。あ、でも、いざと言う時はっ・・・・・・」


ギロッと睨むと黙ってしまった。


異国の地でグレイニアの戦闘機が迎撃に上がるなんてことしたら、国際問題になりかねないでしょうに。例え、国籍マークを塗り替えたとしてもこの国はF-15を持っていないし、ダメに決まっている。


敵はローレニアの息がかかってるナバジギスタンだよ?わかってる??下手したらローレニアが正式に武力介入しないとも限らないんだ。


まあいい、早いことこの基地に民間人が三人いると思えばいい訳だ、敵戦闘機が来ても飛ばせないし、弾道ミサイルが飛んできてみろ、シェルターに逃げたとして無事かどうかは運だ。


(ソラくん怖くない?)


(王子様より怖いかも・・・・・・)


「何か言いました?」


「なにも!」


「喋ってない!」


ヒソヒソと話してんじゃねぇよ。


「・・・・・・それについては私が説明する、レイは口下手」


空気を読んでレイの膝の上ではなく、隣の席に座っていたルリさんが手を上げる、若干レイをディスりながら。


まあ、言い訳を聞くとしよう。


「・・・・・・グレイニアは情勢が悪化してる、・・・・・・私達もベテランになって後身を育成する立場になった、・・・・・・だからこの国と契約して、ブランクを埋めるためにツルギに指導してもらうって話になったの」


なんとまあ、ボクたちの知らない間にそんな話が決まってたのかよ。


「・・・・・・なかなか資金繰りに困ってたみたいだったから、お金を積んだらすぐオーケーが出た」


いったいグレイニアはいくら積んだんだろう・・・・・・、確かに変なパイロットに教わるよりさ、ツルギに教わる方が確実で手っ取り早いとは思うよ、顔見知りだし。


「でも、戦争中の国ですよ?」


ハイリスク・ハイリターン、賭け事が過ぎる。


「呼んでも今いる国をほっぽり投げてまで来てくれないと思ったから・・・・・・」


レイは黙っててください。


「・・・・・・それについては大丈夫、レイが守ってくれるから」


ルリさんの言葉にニッコリと笑うレイ、そんなんでいいの?てかその自信どっから来るんだよ、昔はそれなりに強かったみたいだけど、ツルギにコテンパンにやられてたのに。


「どうなっても知りませんよ・・・・・・」


死んだら悲しいけど責任は取れない、だけど・・・・・・。


「・・・・・・ソラくんも守ってくれるから」


真顔でボクの目を見てくるルリさん、見透かされてんなぁ、読心術は卑怯だ。


(やっぱ優しいのかな?)


(王子様より?)


「なにか?」


「なんでもない!」


「喋ってない!」


はぁ、なんでこんなハチャメチャな人達と、ツルギは破滅的に仲がいいのかよくわかんなくなってきた。


「まあまあ、何かあったら私がいるし、そんな怒らないでよ。可愛い顔が台無しよ」


呆れていると突然肩を組まれて、ルイさんに頬をツンツンされる。最近好きだね、頬をツンツンムニムニするの。


「ちょっと、どさくさに紛れてなにしてるのよ!」


彼女との間に無理やり割って入ろうとする藍さん、レイが見てるんですけど?


「・・・・・・」


「??」


なんかレイがめっちゃ見てくる?


「付き合ってる??」


「なんでそうなるんですか!?」


唐突にそんなこと言うから、思わずむせそうになってしまった。


「え、だって」


「だってじゃないです!」


「あててててて!」


今度はボクがレイに肩組して彼の頭をグリグリとする。


「えぇぇぇ、てっきりそうなのかと思ってたのにぃぃ!!」


ナナリスもここぞとばかりにレイに乗ってくる、藍さんはワタワタしているし、ルイさんはクスクスと笑っているし、カリムはハァとなんというか呆れている。


「違います!」


キッパリ否定するも。


「・・・・・・ソラくんはヒドイ」


「えっ!?」


なんで!?


ルリさんが藍さんに目をやるので恐る恐るボクも藍さんを見ると、この世の終わりのような絶望した顔をしていた。


どして!?


「お前マジでアホだな」


カリムに罵られる始末。


「いやですが、告白した訳でもされた訳でもないですし・・・・・・ヘボッ!!」


みぞおちに一閃、痛いとかそういうのは特に無く、遠のく意識の中。


「泣くな泣くな、俺がきつく叱ってやるから、よっ」


「ミッ!!」


そう聞こえたと思うと、強烈な肘落としを背中に食らい気を失ってしまった。



数時間後。


「ふぅ、しんどっ、・・・・・・なんでソラ伸びてんの?」


啓と水咲さんに襲われてやる事やって帰ってくると、ソラが自分の椅子で寝てるというか気絶していた。


すると何かを察したのか、啓がシュババと藍の所に駆け寄って何やらコソコソと話している。


嫌な予感。


「お前の弟はよく人を泣かせるな」


カリムが泣かされた?なことは無いか、どっちかと言うとソラの方を泣かせそうだし。


んー?と考えていると。


「いででででで!!なんですかどうしたんですか!?」


気絶してる奴を叩き起こして、なんかよくわからん体勢で啓がソラに絞め技をかけていた、気絶してるのを起こして更に気絶させようとしてるんだから何かの拷問かな?


「容赦は無しです」


怒ってる??


「ごごごご誤解ですぅぅぅーー・・・・・・」


と言い残しソラはまた気絶してしまった、生きてるよね?


「大丈夫?」


「殺しはしません、あと三回します」


「おう、ほどほどにな」


何もしてない俺が冷や汗ダラダラだ、普段啓に殴られている俺でもここまでされたことは無い、こいつ何したんだ?


すると部屋の隅で、ムスッとしている藍の姿が目に入った。


何となくわかった気がする。


お兄ちゃんが弟の尻拭い?たまには仕方ねーか。


負の結界の中を重たい足で踏み込み、とりあえず藍の隣の席に座る。


「何があったかは何となくわかったけどさ、あいつの性格わかってるだろ?許してやってくれよ」


どうせ色恋沙汰というか痴話喧嘩というかそんな感じだろ、のらりくらりとしてきた俺がとやかく言えたもんじゃないけど、できる限りの火消しはしないとな。


「・・・・・・」


俺の問いかけに藍は答えない、構わず続ける。


「俺は十年以上あんな感じだった、まだあいつはどうにかしようとしているんだ。それだけでも良しとしてくれ」


「・・・・・・はい」


わかってくれたかな??それなら良かったけど。


「剣くんは焦らしすぎです、危うく結婚適齢期を過ぎるところでした、と言うか過ぎてます」


冷や汗ダラダラだ、気がついたら俺の後ろに腕を組んで立っている。


「私はどうなるのかなぁ」


目は笑ってるけど口元は笑ってない水咲さん。それについては本当に申し訳ないけど、今も昔もその美貌はほとんど変わっていない、それはそれですごいと思うけど・・・・・・、そんなこと言い訳にしかならないか。


ついでに俺も殴られる、そんな未来がハッキリと見えたね。


笑ってない二人に詰め寄られてオドオドしていると。


「はっ!ここは誰!ボクはどこ!?」


「こんな時にふざけるんじゃねぇ!!」


「もっ!!ーー・・・・・・」


失神状態から飛び起きたソラの脳天を、思いっきりぶち殴っていた。

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