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第62話 欠け始めたピース

ボクたちアルフレート隊は、基地から距離が近かった無人機と思われる編隊を先行して迎撃に向かい、遅れて離陸したレッドクロー隊と対処の予定。


スパイダー隊とブルー隊は不明機の対処に向かい、敵が高速で工場地帯に近づいているため、足の速いスパイダー隊が先行して向かった。


《シューレより各機、無人機とは思われますが慎重に、ランスロットの亡霊が紛れ込んでいる可能性もあります》


レッドクロー隊はまだ合流できそうに無いが、フライトリーダーとして状況の確認をする。ただの無人機の編隊と思わせて、あいつが出てくると厄介だ、夜で目視による識別は無理だがボクたちF-35は赤外線カメラがある、もちろんSu-57にもあるだろうから余計な心配は無用かもしれないが、一応彼女らはローレニア属国の軍事企業、もし万が一裏切りがあってみろ、目も当てられないぞ。


《ソルーダよりシューレ、ランスロットってあの?》


ああ、まだ言ってなかったか。


《いや、Su-47ですが無人機なのでボクが勝手にランスロットの亡霊と呼んでます》


実際に操作してるのは二番機だったヒナだし誇張してる訳では無い、この前はなんとかルイさんが撃墜してくれたけど、無人機だし替えはいくらでもありそうなのは厄介だし、一番問題なのは今日はルイさんが居ない。


出ないことを祈るしかない。


《なるほどねぇ、こっちも無人機がいるし数は多いけど、なるべく当たりたくは無いかな》


ソルーダって元ローレニア空軍所属だしね、気持ちはわからんでもない。


《ボクたちはまもなく会敵です、先に対処するのでレッドクロー隊はボクたちが漏らした無人機の対処をお願いします》


《そうしようか、ソルーダ、ウィルコ》


合流できるとしても会敵から4〜5分はかかるだろう、さすがに数は圧倒的不利、ツルギみたいに意味不明な機動が出来れば話は別だが、まだそんな領域には達していない。


焦らず確実にいこう。


カリムの方も心配だが、あっちには無敵のツルギがいるし、さっさと済ませて支援に向かうとしよう。


《ラズリ、今回はボクのカバーよりも無人機の迎撃を優先してください。それと、自爆する可能性もあるので近距離でのドッグファイトはしないように》


簡単に撃墜されるなら一矢報いてやろうと思うのは当然で、ツルギたちも悩まされたと言っていた。でも、継戦能力は下がるので考えもの、警戒するに越したことはないけど。


《ラズリ、ウィルコ》


さて、レーダーに機影捉えた。


無人機はどんな戦術をしてくるか全く分からない、全機がボクらに対処してくるのか、無視して突き進むか、半分半分で対処してくるのか、とりあえずは行き当たりばったりかな。


《上昇して敵機の背面を取ります》


《ウィルコ》


ビーストモードでは無いし、恐らくボクたちの位置はまだバレてないだろう、一撃離脱を心がけ戦闘を行おう。



赤外線カメラに捉えた、垂直尾翼二枚で全翼タイプの無人機が十機、ボクたちの下方を基地に向かって飛行している。


今の所他に目標は探知なし、警戒はしつつも無人機に専念しよう、撃ち漏らしてもレッドクロー隊がいるが、撃ち漏らしすぎると基地に被害が出るかもしれない。


《ダイブ!》


《いくよー!》


ボクの合図にクルッと機体を反転させながら二人で急降下。


《シューレ、フォックス2!》


《ラズリ、フォックス2!》


すぐさま敵機を補足しミサイルを各二発発射、そのまま急降下するが敵機が散開、無理やり機体を捻りながら機銃掃射。


ババーーン!!


ミサイルは二発命中、二機の無人機が木の葉のように黒煙を吐きながらヒラヒラと落ちていくが、機銃掃射は当たったようで撃墜までは至らなかった。


《散開、自由戦闘》


ボクは右にバンクしシャンデルにて旋回、ラズりも同じように反対向きに旋回し上昇している。無人機の方は奇襲が効いたのか、残った八機がぐちゃぐちゃな動きをしていた。


しかし、それも直ぐに収まる。各機が直ぐに僚機の位置を確認し立て直し、追撃を行おうとしたボクに向かってヘッドオン、さすがにこのまま交差する訳には行かないので急旋回して離脱した。


《一筋縄じゃ行きませんね》


《数多すぎ、って何機か離脱してくよ!》


無人機は半数がボクたちの対処、半数が進撃を選んだようだ。ボク的にはそっちの方がありがたい、数が減るのはやりやすくなるし、レッドクロー隊と負担分さんが出来る。


《シューレからソルーダ、無人機四機が離脱、任せますね》


《ソルーダ、ウィルコ。まもなくこっちも会敵するから、安心して》


よし、大丈夫そうだ。ボクたちも体勢を建て直して、さっさと無人機を殲滅しよう。



《おい!スパイダー2応答しろ!!》


俺のはるか斜め上方の真っ暗な空を、明るくも赤黒い炎を吹きながら墜落していく機体。


それを興味無さそうに高速で追い越す、Su-47が二機。


《リズ!ベイルアウトしろ!はやくっ!》


バァンッ!


無情にも俺の言葉は届くことなく、爆破四散してしまう僚機。


どうしてだ、どうしてこうなった・・・・・・。


《殺してやる・・・・・・、この俺が・・・・・・》


闇夜に溶け込んでしまいそうな暗灰色のSu-47、俺はそいつを睨みつけエンジン出力全開、悠々と飛んでいる敵機を攻撃するが、敵は無人機、この怒りは誰に当てたらいいんだ。


しかし、力の差は歴然で機体性能もSu-47とF-16では違いすぎる、意味不明な機動でクルッと背後に付かれてしまう。


無理だな・・・・・・。


こんな急に死ってくるものなのか?来るんだよな、現にリズは死んだ。


でもいい、すぐにリズに会える。


《すぐそっちに行くから・・・・・・》


覚悟を決めて目を閉じると、ソラのなんとも言えない悲しそうな顔が瞼に写った。


そんな顔すんなよ。


《クソッタレが、許さんぞヒナ・・・・・・》


この声は、ツルギか?


《ブルー隊、交戦許可。敵を排除する、ブルー1、交戦》


《ブルー2、交戦っ》


《ブルー3、交戦します》


気がつくと俺の背後にいた敵機は離脱し、二機の編隊飛行をし始めたと思うと、どこから出てきたのか小型の無人機のような機体が各二機、Su-47の周囲を周囲を飛んでいる。


《遅せぇよ・・・・・・》


泣いている場合じゃない、泣いている場合じゃない、泣いている場合じゃないんだ。


《・・・・・・すまん》


でも、目の前は雨が弾かない車のフロントガラスのように視界が滲んでいた。



ボクたちは少してこずったが、無人機を全機撃墜。ツルギとカリムたちか対処した不明機はツルギが参戦したと同時に撤退したため支援に行くことはなく、先に基地に帰投し格納庫で帰りを待っていた。


あ、点滅するナビゲーションライトが滑走路の向こうに見えた。


その数は四つ。


え・・・・・・、管制からは何も聞いてないんだけど・・・・・・。


いても立っても居られなくなって駆け出そうとすると、後ろにいたリルスさんに腕を掴まれた。


「狙撃されたいの?」


「・・・・・・いえ」


でも、こんなのってない・・・・・・。


ボクたちが相手していた無人機は、陽動だったてことになる。


最悪だ・・・・・・。


三機のF-35と一機のF-16が滑走路に降りてきて格納庫へと誘導されていく、機番号を確認すると帰ってきたのはカリムだった。


下唇を噛んでいると、いつの間にか隣に佇んでいた藍さんが、ボクの袖をギュッと掴んでいる。


機体が格納庫に駐められエンジンが停止されると、少ししてみんなが降りてきた。


ボクはカリムに駆け寄る。


「カリム、あの・・・・・・」


駆け寄ったはいいが、なんて声をかけていいか分からない。なんでもいい、何か言わないと、と彼女の顔を見ようとすると。


当然だが見たことの無い、生気の感じられない顔をしていた。


すると。


「どけ」


「っと!」


思いっきり肩を押され、尻もちを着いて倒れてしまうと

、カリムはチラッとボクを見て兵舎の方にスタスタと足早に行ってしまった。


「ソラ、大丈夫?」


「・・・・・・はい」


藍さんがすかさずボクの手を取って、引き起こしてくれる。


「・・・・・・すまん」


振り返ると俯いているツルギ、一体全体何があったというのか。


「間に合わなかった・・・・・・」


間に合わなかった?そんな一瞬で?


「クソッタレが!」


やり場のない怒りを眼帯を握って勢いのまま振り上げると、地面に叩きつけるツルギ、慌てて水咲さんが彼をなだめている。


「何が、あったんですか・・・・・・」


「ヒナだよ、あの野郎、絶対に許さない」


その言葉に全てを察した。


「カリムのところに行ってきます、藍さんはルイさんと一緒にいてください」


「う、うん・・・・・・」


慰めたところでどうにかなるかなんて分からない、でも一人にする訳にはいかない、何かあってからでは遅い。


ボクは既にいなくなっていたカリムを追って、兵舎に急いだ。



「カリム、入りますよ?」


軽くノックをしても返事がない、待機室にはいなかったし、報告に行った様子もないから部屋にいるのだとは思うけど。


「入ります」


もう一度断って中に入ると、部屋は真っ暗でよく分からない。


「豆電球つけますね」


さすがに全灯はダメだろう、スイッチを暗闇の中手探りで探して操作、豆電球を付けると床にパイプ椅子が散乱し、飛行服やブーツが脱ぎ散らかされベッドにうずくまっている人影があった。


「カリム・・・・・・」


「・・・・・・鍵閉めろ」


「え、あ、はい」


ボソッと聞こえるか聞こえないこの声で言われ、困惑するが言われたとおりに部屋の扉の鍵を閉めた。


うずくまったまま顔は動かさないカリム、ボクは慰めの言葉が浮かばす、彼女のいるベッドの縁に座る。


「すまんな」


「いえ・・・・・・」


なんで謝るんだよ。


「お前もロロウを失ったのにな、失礼なのは分かってる・・・・・・」


失礼だなんて、そんなことこれっぽっちも思っていない。ボクはうずくまっているカリムの背中を、掛け布団越しに優しく擦る。


「でもな、でもな・・・・・・、リズと何年一緒にいたと思う・・・・・・、三年だ。枯れたはずの涙が止まらねぇ」


ボクは藍さんとでもまだ二ヶ月程度しか一緒にいない、その喪失感は計り知れない。だから、彼女の言葉には何も言えない。


「ついに俺だけになっちまった・・・・・・」


震えるカリム、ボクはただ背中を擦ることしか出来ない。ボクもロロウを失ったが、藍さん、ルイさん、ツルギに水咲さん、啓さんを全員失ったと思うと立ち直れない、いや、それどころでは無いだろう。


「皆に、会いたい・・・・・・」


ルイさんもこんな感じだったのだろう、嗚咽混じりになるカリム。


「生きてるんですから、死んじゃダメです」


気がつけば無責任なことを口走ってしまった。


言うのは簡単だ、それが簡単にできないのは重々承知しているけど、他になんて言えばいいんだよ。


あーーもう!と頭をガシガシ掻いていると。


「なぁ、ソラ」


「はい、え・・・・・・?」


薄暗くてよく分からなかったが、後ろ髪を解き肩まであるサラサラな髪を指先で耳にかけ、下着姿のカリムがベッドに斜め座りになり、虚ろな目でボクのことを見ていた。普段は男っぽいから全く気にならないが、体は華奢で、女性だけど女性のような艶やかな肌、それに意外とある胸・・・・・・。


「えっと・・・・・・」


状況を理解しないように思考停止してしまうボクの脳みそ、それに構わずカリムはボクに四つん這いになりながら近づき続ける。


「私を慰めてよ」


そのままカリムに押し倒され、ゆっくりと顔が近づいてくると、彼女の意外と薄く柔らかい唇がボクの固まった唇に重なった。

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