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第53話 民間軍事企業

あの後何とか誤魔化そうとするも、藍さんの監視の元メッセージの返信をする。


《また明日から忙しくなるので、いつになるか分かりませんが》


藍さんには舌打ちをされたが変に拒絶するのも悪いし、遠ざけようとするのも逆に怪しまれるし、経験上少しは相手の手のひらの上で転がされた方が逆にやりやすかったりする。


大丈夫、ヘマをしないように細心の注意をはらい、いざという時はツルギを頼ろう。


ピコン♪


早いなー、もっと時間を空けて欲しい。


《いえ!パイロットは忙しいですもんね!良ければなので気にしないでください♡》


「ぶっ殺すっ」


「まあまあ」


ステイステイ。


自分で見て自分で傷ついてどうすんのさ。人のスマホを見るのは自己責任です!


全くもう、とりあえずこれにまた返事を返すとやり取りが終わりそうにないのでメッセージはこれで終わり。


ネットサーフィンを続ける。


ダラダラとネット新聞や動画配信サイトを見ていると、ボクらには知らされていないことばかりが綴られている。


首都で反戦デモがあったり、爆発事件があったら国同士の責任の擦り付け合い、昔からそうだがなんで人間はそんなに姑息なのだろうか。


正義と正義のぶつかり合い。


勝った方が正義で負けた方が悪、だから負ける訳にはいかないんだけどこれは戦争。


何があるか分からない、ウイジクランであったような核攻撃が行われたら最悪だ。


「あー、頭が痛くなりますね」


つい考えてたことが口から出てしまう。


「やれって言われたことをやればいいだけでしょ」


何を警戒してるのかずっとボクの肩からスマホ画面を見ていた藍さん。


「気楽でいいですねぇ」


「喧嘩売ってる?」


「う、売ってませんよ」


ナチュラルに首を絞められる。


口喧嘩では勝てそうだけど、普通に殴り合いは勝てそうにないから誤魔化しとく。まあね、彼女の言うとおり、何事も考えすぎないことが大切だけど、ボクにはそんなこと出来ない。


「ソラは考えすぎなんだって、いちパイロットにできることなんて限られるじゃん」


なことはわかってる。


「あなたと違って背負うものが違いすぎるのよ」


フォローを入れてくれるのはルイさん、この中でボクのことをちゃんと理解してるのは彼女だろう、ロロウは幼少期の頃しか知らないし、藍さんは⋯⋯。


「なに、ぽっと出がソラの何を知ってるのよ」


と言ってますが口ではいろいろ説明したけど理解してるかは怪しい、それと喧嘩はやめて頂きたい。


「えぇ、いろいろね」


ニヤニヤしてる!シリアスな場面で頼むからぶっ込まないで!


「私は二番機よ!隠し事はなし!」


「ちょっ!」


後ろから肩を掴まれて前後にブンブン振られる、むち打ちになる前に止めて!


「男には隠し事の一つや二つあるわよね」


「ロロウ!」


お前が言うな!隠し事しかない奴が!


「何隠してんのよ!!」


「か、隠してません!」


「私の事、信用してないの!?」


「してます!!」


もう何が何だか。


「藍ちゃんいじりがいがあるわね」


「んなっ!」


やっといじられていることに気がついたのか、ハッ!として固まっている。ルイさんと藍さんは仲が良いのか悪いのかさっぱり分からない。


「四番機の癖にぃ!」


「まあまあ」


仲は、良くないかな?キー!と怒ってルイさんに殴りかかろうとするのを後ろから羽交い締めにするも、バタバタと暴れて抵抗する。


「ゴッ!」


イッタ!!暴れる藍さんの頭が顎にダイレクトヒット、舌を噛みちぎるかと思った!普通に痛い!


羽交い締めにする力も無くなり、口を押さえてベッドで悶絶する。


「え、なに、どうしたの?」


「ーーーっ!」


涙目になって喋ることも出来ない。


「あ、泣かせた」


「ちがっ!」


ここぞとばかりに藍さんをいじるルイさん、ボクは悶絶することしか今はできませんので助けれませんよ?


コンコン。


あ!このタイミングで来るのはツルギだな、さすが分かってらっしゃる!どうせならもっと早く来て欲しかったがしかたない、声にならない声で返事をして出迎えると。


「相変わらず騒がしいな」


隻眼のイケメンが立っていたが、なんか呆れてる?別にいっか。


「大変です」


藍さんの鋭い視線を感じた気がするが気のせいだろう。


「ところでどうしたんですか?」


わざわざ何しにここへ?なんか重要な話かな?


「レイから電話が来た」


とてもタイムリーな話だ、ボクと視線を合わせようとしないので深刻な話だろう、ツルギの話を黙って聴く。


「多くは話せないが、信じてくれ、だそうだ。一応ニグルムにも伝えて欲しいってな」


「そうですか⋯⋯」


彼の何を信じろというのか。


ひとつ分かるのはこれから何かが始まるのだろう。


「信じるに決まってるじゃないですかね」


「だよな」


ボクの返事にツルギは口に手をやりクスッと笑う。


「でも、何が始まるんでしょうか?」


「んー、わからねぇなぁ、ネットで見たのは在り来りな利権争いの縺れとか、派閥争いだし、元々立地的に争いの多いところだしな」


ツルギが若干饒舌だ、何か知ってるな。


でも、それを指摘するほどボクも馬鹿じゃない、ツルギもレイも何か考えがあるのだろう、二人にボクは口出しできる立場では無い。


「ツルギはグレイニアには行かないんですか?」


やっと彼はボクの目を見てくれる。


一度自分の手で救った国だ、何も思わないわけが無いし、お人好しのツルギの事だ、今すぐ文字通り飛んでいきたいだろう。


「傭兵だからな、条件がここより良ければ行くかもな」


真面目に言ってるのか冗談なのか、条件なんて今ままで考えたことなかったろうに。


「戦闘機の整備の代わりにほとんど無給なの知ってるんですからね」


「さすが、白崎の弟子だな」


知ってんのかよと言わんばかりに頭をポリポリ掻く、F-35なんてエルゲートぐらいでしか扱ってないし部品の調達なんて普通はほぼ困難。この国は避行先を探していたツルギたちブルー隊を抑止力として雇い、高い金積んで戦闘機を整備するかわわりにツルギ達には最低限ギリギリの給料を支給、まあどちらもwin-winな条件だったのだろうけどさ。


「何してるのー?中で話したらいいのに」


ボクの隣からひょこっと頭を出す藍さん、確かに立ち話もなんだ。


「いや、怖い人がいるから俺は帰るよ、話も終わったから」


「誰のこと?」


ルイさんがニヤニヤと藍さんの後ろから顔を出す、この人意外と人をいじるの好きだな。来た当初は初見で殺しに来てたのに、人って案外変わるなぁ。


「じゃ!スクランブル待機だから!」


まさに脱兎のごとく、話は終わってないんだけどピュー!といなくなってしまった。


「怖がってるじゃないですか」


「もう殺さないって言ったのに」


「第一印象が最悪でしょ」


それな。


《搭乗員集合、搭乗員待機室》


何だ何だ、スクランブルでは無いんだろうけど久しぶりの集合だ、さて準備して行こうとすると。


「はにゃ!」


タンクトップにショートパンツのまま、藍さんが待機室に向かおうとするので首根っこを掴んで止めた。端島なら許される(許されては無い)だろうけどさすがにここではダメだ。


「何があるか分からないのでちゃんと着替えてください」


「えー、めんどくさいぃ」


「着替えない方がめんどくさいと思いますけど⋯⋯」


「むー」


まったく、ボクはお母さんじゃない、ルイさんもロロウも部屋着を脱いで飛行服に一応着替えてるでしょ⋯⋯、脱いでる?


「ちょ!脱ぐの早すぎですよ!」


慌てて目を隠して部屋から飛び出す、なんか見えてはいけないものを見てしまった気がする、ロロウは薄ピンクの下着に、ルイさんはなんか黒色のセクシーな下着だった、いやしっかり見てるなボク。


「ソラも早く着替えないと遅くなるわよ」


うっすら笑ってるロロウ、パーテーションがあればまだマシだが面と向かって着替えるのはさすがに気が引ける。


「ダメですよ!倫理的に!」


部屋着に着替える時はたまたまタイミンがズレたから気にしなかったけど、これは考えものだなー、カーテンとかつけるか?


彼女たちが着替え終わるのを待ち、秒で早着替えして待機室に急いだ。



搭乗員待機室


「遅いぞ」


缶コーヒーを片手に、椅子にふんぞり返り返ったカリムに怒られた。ちょっとは遅れたがほんの数分、そんなに怒らなくても。


「すみません、タイミングが悪くてですね」


謝罪はしておこう、嘘は言っていない。


「ソラが童貞でさー」


藍さん何を思ってそう言ったのか、男は女の着替えを簡単に見たらいけないんですよ、それに。


「童貞じゃないですよ!」


「は?」


「あっ」


やってしまった!!!


ルイさんはニヤけてるし、ロロウは額に手をやり呆れてるし、藍さんは拳を握り震えてるし、何故かカリムは持ってた缶コーヒーを落とした。


「その例えで童貞云々ってのは違うと思いますってことです!」


「⋯⋯もっと詳しく言って?」


あ、殺される、直感でそう思ったね。


彼女でもないのに過去のことをとやかく言われる筋合いはないけど、なんでこんなにボクに執着するのだろうか、過保護が過ぎる。


と、言ってしまうと本当に殺される、何故かは知らないけど。


「違います!誤解です!」


必死に誤魔化すが、むしろこの年でそれを期待するのもどうなの?


「だってソラはーーーっ」


とびきりの笑顔でここぞとばかりにぶっこみそうなルイさんの口を慌てて塞ぐ、唇がとても柔らかくてあの日のことを、じゃなくて!


「息できないでしょ!」


「わ!すみません!」


「二人が怪しい!!」


まさにカオス、今すぐ逃げ出して一人になりたい。


「仲がいいのは結構だが騒がしいぞ」


飛行長のビラン中佐のお出ましだ、タイミングが良くて良かった、各搭乗員がワタワタと自分の席に付く。


ボクの前にカリムとリズさん、ボクの左にルイさん藍さん、右にロロウ、後ろの角席にツルギと啓さん、水咲さんが座る。


「慌てちゃって、やっぱりソラのこと⋯⋯」


「ち、違うっつってんだろうがよ!」


カリムたちが、いつものようにコソコソ話してて微笑ましい。


「とりあえず話を始める」


痺れを切らした中佐が話を遮り、持ってきた書類をパラパラ捲り本題を始める。


「えー、我らレバノバジギスタン空軍はタワナ自治国に新規設立された民間軍事企業『クロウ・カンパニー』と契約に至った。早速、戦闘機部門の戦闘機隊1チームが当基地に派遣される予定だ。スコーピオン隊の復帰も見込めないし、他の基地もいっぱいいっぱい、藁をも掴む思いだ」


聞かない会社だ、新規設立って言ってたし仕方ないか。でも、タワナってローレニアの属国だろ?そんなこと許されるの?それにひよっこの戦闘機隊だろうし、多分相手も訓練目的だろう、こっちにメリットってあるのか?


「これについて質問は?」


「何人来る」


お、よそ者アンチのカリムが声を上げる、人数は気になるよね。


「パイロットの人数については三人だ、女二人に男一人と聞いている」


また女!どんどん増えるな。


「たった三人か、ひよっこが早々に死ななければいいがな」


それは完全に同意だが、大人数が来たところで整備員が足りないし、整備員もつれてくるにしてもこの人数が現実的な数なのかな。


「お前らは仲がいいから特段心配はしとらんが、一応はローレニア人だ、いざこざを起こすなよ。特にカリム」


「わぁかってるよ」


ボクらのいざこざより国家間のいざこざが心配なんですけど、民間軍事企業のやってる事だから国家は不干渉を貫く気なのか?


「大丈夫ですかね」


「私たちが心配することじゃないでしょ」


藍さんみたいに気楽になりたい。


とりあえずどんな人が明日来るのか楽しみにしておこう。

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