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第49話 報復

翌日、7月2日早朝、0530。


日の出前にパレン基地を出撃し、レバノバジギスタン上空を出て、ナバジギスタン防空識別圏(シルシアン海峡中央部)まで20マイル高度を位置を北西に向けて400ノットにて飛行中。なお、今作戦は隠密重視のためAWACSは参加していない。


《フライトリーダースパイダー1から各機、目標まで三分だ、作戦を確認する》


既に敵地は目前、陸地は見えているし無線封止も意味は無いだろう。


編隊先頭に編隊長のスパイダー隊、スパイダー1のカリム、右後ろにスパイダー2のリズさん。少し離れてその右後方編隊右翼に空対空ミサイルをガン積みにしたF-35のブルー隊ブルー1のツルギ、右後方にブルー2の水咲さん、反対にブルー3の啓さん。編隊左翼にアルフレート隊1番機シューレことボク、右後方にラズリの藍さん、その右後方にスカイレインのルイさん、ボクの左後方にレシルのロロウ。そして、編隊中央に爆弾を満載にした南方サニタス基地所属のF-15SEストライクイーグル四機サンドストーム隊という編成。


横から見るには非常に壮観だ。


《我々戦闘機隊の任務はサンドストーム隊の護衛、余裕があれば対空火器の攻撃をしても構わんが、迎撃機の対処が優先だ。サンドストーム隊は先に指定された敵工業地帯及び軍事施設への爆撃、優先目標は兵器関連施設、ブリーフィングの通りだ》


主任務はナバジギスタン南岸の工業地帯への爆撃、近くには小さな空軍基地もあるし、重要な施設、防空陣地も多数存在すると情報を得ている、敵機の対応にもよるが臨機応変にいこう。ルイさんのYF-23はミサイル搭載数がボクらより少ないし、温存したいけどいつものように急に消えたりしないよな?


《シューレからスカイレイン、スカイレインはミサイルの搭載数が少ないので基本的には敵機の撹乱および温存でいきます》


ボクたちF-35はビーストモードと言って、ステルス性能を犠牲に普段の倍ぐらい搭載数を増やすことが可能だが、YF-23にはそれが出来ずウェポンベイにミサイルを四発のみ搭載可能、機銃はあるが最初から全力だと直ぐに使い切ってしまうだろう。


《うん、スカイレイン、ウィルコ。元からそのつもり、でもやる時はやるから》


彼女もあのシロお兄ちゃんと飛んでたんだ、技量はツルギとほぼ同等、変に心配しない方がいいか。それに、温存と言っても機関砲も使えるし臨機応変にかな。


藍さんが不貞腐れてそうな気がするが、多分気のせいだろう。


《俺が口出しするのも変だが敵機の対処はブルー隊に任せる、爆撃機の護衛は俺たちスパイダー隊が担当する、アルフレート隊は好きにしろ》


好きにしろ!?めちゃ困るんですけど!


《シュ、シューレ、ウィルコ》


とりあえず返事はしておこう、さてさて、ツルギの出方を伺いつつその後で色々決めるかな。


《バルセル南岸の爆撃を思い出すな!》


というのはツルギ、そんなこともあったなー、バルセル・グレイニア戦争において停滞する北部戦線を打開するために、わざわざ海を越えてバルセル南岸の爆撃、でも確かそれって⋯⋯。


《待ち伏せされて》


《大損害出たやつじゃない》


ボクは詳しくは知らないが爆撃機も結構落とされ、護衛の戦闘機も半分近く落とされ、戦術的に成功と言っていいのか怪しい作戦だったはず。


《でもあの時は俺たち先鋒だったし⋯⋯》


普段フラグがどうのこうの言っておいて自らフラグを立てるツルギ、何か感じることがあるのかな?でも、罪悪感はあるのか変な言い訳をしてモゴモゴしている。


《ま、まあ、あの時のレイはカッコよかった、ソラはどうかな》


《レイと比べないでください!》


全くもう、何が言いたいのやら。


《来たよ》


おっと、お喋りはここまで、ルイさんが前方に敵機を探知、ボクたちもカメラで確認した。


いきなりレーダーに現れたそれ、恐らく以前もいたコンテナ射出型の無人機だろう。数は十数機と言ったところか、海岸に配備されていたものと思われる。コンテナで移動式だから、事前情報が中々得られないのが厄介だな。


《作戦開始だ、スパイダー隊交戦》


《アルフレート隊、交戦!》


スパイダー隊は少し位置を下げ爆撃機の前に横並びになり、ボクたちアルフレート隊は頭を取られないように高度をあげる。


《ブルー隊、交戦》


ツルギたちはエンジン全開、速度を上げ一目散に敵機の中へと突っ込んでいく。一見作戦なんて無いように見えるがあれでいつも無双している、本当に恐ろしい人だよ。


《無鉄砲と言うかなんというかね》


それを見てルイさんは呆れている。


《アレがツルギの戦法です》


わかったような口効いてるけど、多分ボクでも対処できないと思う。それほどまでに理不尽極まりない。


《あんなその場の流れで戦ってたってのがわかると、本当腹が立ってくるね》


《す、すみません⋯⋯》


《なんでソラくんが謝るのよ》


なんでだろう、ボクにも分からない。


《私語厳禁!!》


おっと、珍しく藍さんに怒られてしまう、ただ単に私語について怒った訳じゃないだろうけど素直に従おう。


《で、好きにしろって言われたけどどうするの》


なんだかオコな藍さん、でも指示待ちは良くないよぉ。よく言うでしょ、聞く前に提案しろって、でも勝手なことされたら困るのボクだし指示はしとく⋯⋯。


《じゃ、私は行くね》


ほら、ルイさんみたいに自発的に⋯⋯。


《ちょ!ルイさん!》


止めるまもなく彼女はクルクルと無駄にカッコよくロールし編隊を離脱急上昇、単独行動を開始して雲の中へと消えていき、レーダーからも消失。彼女は1人でも大丈夫だろうけど統率ってのが!!てか、敵味方識別も切ったの!?


自分で考えては欲しいが単独行動はして欲しくない!


《自由人ねぇ》


《帰ったらとっちめてやる》


本当、どの口がツルギのこと無鉄砲と言えるのやら。


《まあまあ、さっ、とにかくボクたちはツルギたちが撃ち漏らした無人機の迎撃に専念します、スパイダー1は有人機の接近に注意してください》


《んなこと分かってるよ!俺に指示すんな!》


大丈夫そうだ、いつもより荒れてる気がするが気のせいだろう。そうこうしている間にツルギたちは戦闘を開始、所々で爆炎が漂っている。


敵無人機は小型故にレーダーに移りづらい、と言ってもF-35の赤外線カメラからは逃れられない、カメラが自動的にツルギたちが撃ち漏らした敵機を補足し表示してくれる。ちなみにこの機能はF-16には無いので、よくカリムに卑怯だと妬まれる。


捕捉した無人機を藍さんとロロウに共有、近い敵機から順に対処していこう。


《行きます》


《ラズリ、ウィルコ》


《レシル、ウィルコ》


無人機もさすがにバカでは無い、爆撃機を狙うもの、こちらを狙うもので別れるが個々に対処。ツルギたちが馬鹿みたいに落としてるから、落ち着いてやればなんてことは無い。


《爆撃機を守ります》


敵機の背面を取り迎撃を開始する。



迎撃を初めて3分、爆撃機は予定通り指定ポイントへ到着した。


《サンドストーム隊、爆撃を開始する!》


無誘導爆弾を先に指示されたポイントへと順次投下していく、ここまでは予定通りだがさすがに有人機が来てもおかしくないだろう、それにルイさんはどこに行ったのかな?


〈よう、また会ったな〉


来たぞ、敵パイロットの混線。この声、そしてわざわざ自分たちの居場所をさらけ出してくれるってことは。


《出たなストーカー!待ってたぜ》


シャルル隊のお出ましだ、混線と同時にレーダー探知機。彼らが来たということは、ナバジギスタンお抱えの傭兵ヴァジュラ隊も来てもおかしくないか。


〈おっと、両思いだったか。少し遅れたがイエローラインらを落とせば報酬上乗せだ。やられっぱなしも面白くない、全機かかれ〉


くー、ボクたちを落として地上施設の被害による減俸をなかったことにしようとしてるな。流石は傭兵、ツルギに比べたらただいぶ現金な奴らだ。


〈俺らは青薔薇をやる〉


やっぱりヴァジュラ隊もいるか、シャルル隊の後方にレーダー探知、聞き覚えのある声だ、海峡突破作戦以来か?


にしても完全に嵌められた格好だ、こっちの主要基地を攻撃して反撃をしに来た部隊を待ち構える、単純だけど誰も気づかなかったのは悲しいというか失態と言うか。いや、ツルギは気づいていただろうけど自分がどうにかするって感じだろうな。


まったく⋯⋯。


《無人機が増えたぞ》


カリムが下方を指す。


爆撃させるのは許容の範囲内なのか、ここぞとばかりに地上から無人機が射出されている様子が見える。攻撃目標の範囲外の民間施設付近から射出されているのが腹立たしい。


しかし、爆撃はまもなく終わる、とっとと逃げ帰るのが得策か?でもF-35はこの中で一番足が遅いし、逆にここでシャルル隊を落とせば今後が楽になる。


《ミッションコンプリートだ、全機RTB。敵機は俺が引きつける》


《フライトリーダーは俺だっての!》


カリムは不満がっているが、ツルギの判断は逃げるが勝ちか。


《サンドストーム隊ウィルコ、帰投する》


全弾落としたストライクイーグルは旋回を開始、帰投進路に機首を向ける。


〈ーー逃がさないよーー〉


シャルル隊でもヴァジュラ隊でも無い声が無線から聞こえた、若干幼く聞こえたその声の主はツルギがすぐに分かった。


《ヒナか》


マジかよ、どうすんだ?


新たにレーダー探知はしていない、どこにいるかも分からない赤翼のエースのヒナを相手するとなるとさすがにツルギ一人では骨が折れる。


しかしだ、ヒナは昔、ボクの手によって戦闘機には乗れないぐらいの怪我はしているはず、何故ここに?ローレニアの技術でサイボーグにでもなったのか?いや、考えても仕方ない、現実問題奴はどこかにいる。


〈っち⋯⋯〉


色々考えていると、何やらヒナが舌打ちをしたような気がする。


〈あの時ついでに殺しておけばよかったよ!シロのお嫁さん!!〉


《殺す》


今まで聞いたことの無い、冷たく殺気立ったルイさんの声。


刹那、編隊のど真ん中を両翼を赤く塗った暗灰色のSu-47が急降下で翔けて行き、直後YF-23が奴を猛スピードで追って行く。


《ルイさん!》


ボクは無我夢中で急旋回し彼女を追う。



《ちょっと!ソラ!》


《あーもう、無茶苦茶ね》


アイツのエレメントは迷うことなくアイツを援護するため旋回し後ろに付く。


《あのバカ⋯⋯、スパイダー隊はサンドストーム隊をエスコートして帰投しろ》


この状態でカリムに統率は出来ないだろう、俺だってごめんだ。爆撃機を連れて安全に基地に帰ってもらう他ない。


《んな事できるか俺も残る!》


《邪魔なんだよ!さっさと帰れ!》


《ーーっ!!あーあ、そうかよ!帰ってこなかったらぶっ殺すからな!》


《お互い様だ。ブルー3、レシルの護衛に付け》


《ウィルコ》


啓は編隊から離れ、アルフレート隊三番機のレシルことロロウの後ろに着く。


ソラは流れ星を守ろうと必死、そうこうしてたらロロウがなにかするかもしれないし、されるかもしれない。


最悪シャルルは俺と水咲さんでどうにかすればいいし、ヴァジュラは啓たちがどうにかするだろう。


考えることがいっぱいだがやることはただ一つ。


《ブルー隊、敵を殲滅する》


《ブルー2ウィルコ》


《ブルー3ウィルコ》


ここで死ぬ訳にはいかねーからな。

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