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第26話 三番機

自室にて。


「お姉、ちゃん?」


「藍?」


会ったばかりは、本当にこの人が?とキョトンとしていた二人。

しかし、時間が経つとこっちはもう感動の再会でして・・・・・・。



格納庫で後から来た啓さんと水咲さんと合流、初対面だったので簡単に挨拶は済ませてある。


二番機たる水咲さんは写真や噂には聞いていたがめちゃくちゃ美人、三十代後半で結構歳いってるはずなんだけど、二十代と言われても分からない綺麗さだった。それに、よろしくね、とすごい笑顔で頭を撫でられた、恥ずかしい。そして何よりデカい、何がとは言わないけど。


三番機で藍さんのお姉さんの啓さんは、全くの無表情というかジト目?雰囲気は藍さんに全然似てないし、よろしく、と言われただけで終わってしまった。そしてこっちはない、何がとは言わないけど。


そうそう、その時にツルギの眼帯について聞いてみた。ボクが一緒にいた時はしてなかったから。


「そういえばその眼帯って、厨二病とかなんかですか?」


「俺の左目が疼く・・・・・・なわけねーだろ!ちゃんと左目ありません!なんなら見るか?」


「いえ!遠慮しときます」


いくらツルギでも左目が無いなんて、そんなの見たら夢に出そうで見たくない。が面白くはなかったけどボクの冗談にノってくれる、優しい。一応は本当に怪我っぽいな、でもどうして?


「啓を庇って被弾したんだよ、その時の怪我」


「え、よく生きてましたね」


マジで、被弾したの?いつどんな状況かは想像つかないが、最強の彼でも被弾するんだとちょっと安心してしまった。


「その時の啓、必死で周り見えてなかっ、ドホッ!!」


「あっ」


気がついた時には啓さんの右拳がツルギのみぞおちにめり込んでいた。なにこれ、怖いっ!てかここは本当に藍さんそっくり、いや、十倍乱暴にした感じか。


「啓、暴力反対・・・・・・」


「昔のことです、そろそろ忘れてください」


「あーあー、啓ちゃん、人前で殴んないの」


まあでも、隻眼になった原因を忘れろというのも酷な話だと思う、それはツルギに同情しちゃうな。それに、人前じゃなかったら殴っていいのもどうかと思う。



てな事があった!


「藍、とても立派になったね」


啓さん、藍さんの事を小学生ぐらいの時までしか知らないって言うし、そりゃぁ、そうだよね。まさか自分と同じパイロットになってるなんて、って感じだろう。


「ずっと、会いたかった」


震えていた藍さんだったが、ついに我慢できなくなったかわんわんと泣きながら啓さんに飛びつく。優しく頭を撫でてあげている啓さん、いやもう、感動的すぎてもらい泣きしてしまいそうだ。いいな、血の繋がった姉妹って・・・・・・。水咲さんもなぜかうるうるしてるし。


ボクもシロお兄ちゃんと、こんな感じで再開したかった・・・・・・。


叶わないことを思っても仕方ない、ボクが何をする訳にもいかず、一頻り二人で家族の時間を過ごしていると。


「お姉ちゃん、この人が?」


「剣くん、私の大切な人」


傍らでボケっとしていたツルギを睨みつける藍さん、啓さんは笑ってるのか笑ってないのかよく分からない顔で彼女に答えていると、嫌な予感がする。啓さんはツルギにゾッコンで、帰ってこない原因であり、藍さんはそれを結構恨んでいる、そして彼女は啓さんの妹だから・・・・・・。


「ん?ドハッ!!」


考えて気がつくとツルギが腹を抱え悶え苦しんでいた。ん?何が起こった?


「殴っていい?」


えーーーーーっ、もう殴ってるんですけど!!

なんかすごい初めの方にこの光景見た記憶がある!!


「ええ、いいわよ」


「ちょ、啓!?ゴフッ!」


いいんかい!って二発も!?

綺麗な右フックがツルギの左脇腹を捉える。


「ストップ!死ぬ!俺死んじゃう!ドフッ!!」


なんか可哀想になってきたな。

しかし、三発目の渾身の右ストレートが見事に入ったのか、床に膝から倒れ伸びてしまった。あらららー。


「・・・・・・マ、マジの姉妹じゃん、そっくりすぎでしょ、うぐっ!どっ!!」


ゴスゴスと倒れてるツルギさんに蹴りをお見舞いしてる藍さん、さすがにやりすぎ、そろそろ止めよう。


「藍さん、やりすぎですよっ」


「こんなんじゃ足りない!」


「ダメです!」


どんだけ殴ると気が済むの?先にボクが殴らなくてよかったよ。怒りに任せてふんふんと暴れる藍さんを、羽交い締めにして止める。


「おっ、ニグルムは俺と違って制御できてるみたいだな・・・・・・」


殴られたところを擦りながら、何を言い出すかと思ったら。


「私が制御できてないみたいな言い方ですね?」


「なんでもないです!」


「まったく、まだ足りないんですか?剣くんも好きですね」


「ごめんなさいっ!」


言わんこっちゃない、そりゃツルギはどっちかと言うと尻に敷かれているって表現が正しいからね。ボクは飴と鞭をちゃんと使い分けてるから、飴ばっかだけど。


「ボクはツルギとは違いますから」


「なんか腹立つー」


そんなやり取りを聞いてか、みんなを見守るように太陽みたいな笑顔で笑う水咲さん、実に平和だ(棒)。


「もうなんです、さっきからドタバタと・・・・・・」


騒ぎを聞きつけたロロウ?サニーさん?どっちで呼んだら?まあ、その人が不機嫌そうに部屋に入ってくるとツルギと目が合ったのか固まってしまう。


「んっとー、その雰囲気は・・・・・・ロロウ?」


へ!?なんで知ってるの!?


「あらー、ツルギさんはニグくんと違って覚えてくれてたんですね、嬉しいです」


ボクにも見せたことないニッコニコな笑顔。って、遠回しにバカにされた!悪かったって謝ったでしょうに!


「うそっ!何でこんな所にいるの!?しかも、もっとお転婆な感じじゃなかったっけ!?俺も何度手を焼いたこと・・・・・・」


シュッ!


「待て!話せばわかる!」


他の人には見えないようにまた掌に小さなナイフを握るロロウ、やっぱり下手するとプスッとやられてしまいそうだ。


「昔の話です」


ンフフフフと一段と悪そうに笑う彼女、学校を卒業した後何してたんだ?ツルギと知り合いってことは王家関係?


「なんで彼女と知り合いなんですか?」


「え、お前らこそどういう関係?」


ボクとロロウの顔をブンブンと繰り返し見るツルギ。


「いや、ボクが聞いてるんですよ」


周りにいる水咲さん、啓さん、藍さんは置いてけぼりな状況だ。


「立ち話もなんですので座りましょう」


ボクの部屋なんですけど?終始主導権をロロウに握られたまま、ボクのベッドにツルギたちが座り、藍さんのベッドにボク右に藍さん、左にロロウが座った。


「で?」


首を傾げるツルギ、ボクから話すの?まあいいや。


「昔の学校時代の同期です、ボクが早くて、彼女が遅めの入学だったので歳は離れてますけど」


「あー、なるほど」


ここに居る理由もそれとなく説明したら、なるほどそれなら納得と言った感じのツルギ、ボクの事情は知ってるし理解は早い、両側の二人は分かってないけど。


「で、ツルギは?」


「あー、ロロウとは王家直轄部隊で少しの間一緒だった、あの時はショートだったしお転婆だったし一瞬気が付かなかったよ」


そんなこと言って気づくのも凄いけどね、普通わかんないって。それでも、なるほどなるほど、王家直轄ってやっぱりエリートだったんだな。ツルギも中学生ぐらいの時には戦闘機乗ってたって言ってたし、一、二年ぐらい被っててもおかしくないか・・・・・・。


ん?王家直轄?


「あの、ロロウ?」


「何かしら?」


ニコッと笑いつつわざとらしくボクの太ももを擦ってきて、藍さんに手の甲を叩かれている。


「もしかしてですけど、・・・・・・赤翼?」


「さぁ、どうでしょう。ご想像にお任せします」


「マジで、お前が!?」


赤翼だー、ボクより強いじゃん!だからヒナのこと呼び捨てにしてたのか!ちょいちょい小ネタを散りばめやがって、全部わかってやってやがる。


ツルギも、自分がいなくなってから彼女が赤翼になっていたようで、結構驚いている。


ちなみに「赤翼」というのは、「ローレニア王家直轄近衛飛行隊」の略というか通称で、その由来は機体主翼の両端が赤く塗られているから。近衛といいつつもその赤翼のトップには、サヤ陛下自らが隊長を務めるランスロット隊がいる。このランスロット隊もしばらく目撃情報がないので専ら引退したのでは?って噂だ。さすがに、国王が自ら戦闘機に乗って最前線にって訳にもいかなそうだしね、昔してたけど。


「ちょっと待って、さっきからサニーをロロウって呼んでなんの話ししてるの?」


あそうだ、藍さん達になんの説明もしてなかった。話に置いてけぼりにされてぷんぷんと腕組みして怒っている。


「私が言いましょうか?」


「ボクが説明しますっ」


ロロウに説明されたら根も葉もないことを藍さんに吹き込みそうだ、ボクの生い立ちもだいたい知っている彼女に、ここはボクが懇切丁寧に教えると。


「ソラとスパイ学校の同級生で、ツルギが王家直轄部隊にいた時の後輩で、現ローレニアの工作員!?」


「もっ!」


シュバッ!と藍さんに抱きつかれて庇わられる。

工作員って伝えるのは失敗だったかな?でも、嘘じゃないしいっか!


「1ミリも信用出来ないでしょ、こんな人!」


ガルルと威嚇する彼女、ですよねー、ごもっともな反応です。と藍さんの胸の中で言い訳を考える。


「無理に貴女に信用してとは言わないわ、ニグルム・・・・・・、ソラに信用してもらえればそれで」


ずっとガルルと威嚇する藍さんをよそに澄まし顔のロロウ、いや君はそれでいいかもしれないけど、ボクは困りますと更に考える。


「ところでニグルム」


「はい?」


今度はツルギか、なんだろう?


「話は変わるけど、なんでソラって呼ばれてんだ?」


ツルギに会った時の言い訳を全く考えてなかった!え、ソラはソラでしょ?ってボクを庇ってる藍さんも眉間に皺を寄せている。いや、あなたは知ってるでしょうに。


「今は伊波宙って名前です!」


「ほーーーん、可愛いヤツめ」


余程嬉しかったのかニコニコのツルギ、ボクはなんだかものすごく恥ずかしくなって、彼から目を逸らし。


「うるさい、です」


顔を赤くしてしまった。


(かわいい)


なんか横で言われた気がするけど。



「だから貴女に信用されなくてもいいって言ってるじゃない」


「ダメ!私はソラの二番機よ、私が信用出来ない人がソラの近くに居るわけにはいかないの!」


まあ、言ってることは一言一句その通りなんだけどさ、別に藍さんはボクのお母さんじゃないよ?と、とても不毛なそんな話が続いていた。


シュッ!


「ロロウっ」


睨み気味に彼女をみ見ると、出したナイフをまたどこかへ隠した、こういうところは昔と変わってない。邪魔者と分かれば作戦に関係なくても即プスッ、元々そんな性格だったと思う。だから、問題が絶えなかったのかな?今思えば。


「では、どうしたら信用してもらえるのかしら?」


おっ、大人な対応ができるようになってる。さっき殺ろうとしてたけど。


「ソラに手を出さないって約束して」


え、藍さんがそんな心配してくれてたの?ボクが狙われてるかもって思って?泣きそう!


「それは俺からも頼む、ニグルムを殺したらさすがの俺もお前を殺さないとならない」


みんなボクの心配を・・・・・・。

うるうると目を潤わせていると。はぁー、とロロウが大きなため息を吐いた、観念したか?


「その程度でしたら、元々私がソラに手を出す気なんて毛頭ありませんし」


嘘じゃないよね?逆にめちゃ怪しい。


「約束します、ソラに手は出しません」


ホント?めちゃくちゃあっさりだったけど?

それを聞いた藍さんもまさか約束されるとは思ってなかったのか、少しの間アワアワしていると。


「じゃあ・・・・・・信用する・・・・・・」


なんか不服そうだけど、こちらが提案した条件を飲まれるとさすがに信用するみたいだ、当のボクは全く信用してないけどね!ちょいちょい出してくる隠す気もない暗器は一体何なの?


「ですってソラ、良かったですね!」


「とわっ!!」


信用するという言葉を聞いた瞬間、ロロウにものすごい勢いで抱きつかれ、そのままベッドに押し倒された。へ!?ちょ!当たってる!


「ちょっと!手を出さないって約束したでしょ!」


「手は出しませんよ、交流してるだけ」


「バッ!!・・・・・・なんなのよもう!!」


こりゃロロウの方が一枚上手だったか、条件が抽象的すぎるんだよ藍さん、そりゃそうなるは。ボクに触れない位にしとかないとね、こんな迷惑な状況になっちゃうんだよ。

てか、手を出さないってそっちの意味だったのか、感動して損した。


「なんだコイツら、ラブラブかよ」


「人前で、慎んで欲しいものですね」


二人にもみくちゃにされてそれどころでは無いが、ボクはちゃんと見てたぞ。それをツルギが指摘する。


「啓もずっと俺の手握ってるけどね」


「なにか?」


ギュッと拳を握る音が聞こえる。


「いえなにも!」


て、それよりも。


「啓さん、藍さんをどうにかしてください!」


ボクまで引っかかれそうなんです!


「そういう性分ですので」


「どんな性分!?ちょわ!痛いですって!」


チラッと見たが彼女無表情で怖い、この状況は別としてボクは藍さんでよかった、表情豊かだし感情表現が荒っぽいけど。て、いてててて!!


「もう、痛がってるでしょ」


「にゃ!」


「あらー」


見かねたみんなのお母さん的存在らしい水咲さんが、二人を持ち上げてポイッと離してくれた。すご、さすがはツルギの二番機、あの二人を軽々と持ち上げるなんて。


「「ふんっ」」


信用するって言った五秒後にはこれって、先が思いやられすぎる。はぁー、ヤバい、面倒くさいと頭を抱えため息を吐くと。


「あ、そうそう、言うのが遅くなりましたが、私、明日からアルフレート隊の三番機ですので」


「は??」


彼女が何を言ったのか理解が出来ずに、藍さんと二人して彼女を見て固まる。ボクの三番機?ボクの許可無しに?


「新しいTACネーム、よろしくお願いしますね」


ニコッと星が出るぐらいウインクされてしまった。

これもまた、彼女の手のひらの上で転がされているのだろうか。


ボクは藍さんと再び目を合わせ。


「「えーーーーっ!?」」


と、とにかく叫ぶしか無かった。

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