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第24話 悪酒

いやー、マジなんなの?人生で一番疲れたんですけど。


あれから会話も途切れることなく更に二時間ほど飲み続け、バーの閉店とともに退店、完全に泥酔している女子三人をかろうじて生き残った男で連れて帰る、と言ってもその生き残った男ってのがボクとカリムとシャリーフさんなのだが、ちなみにザファーさんは腕相撲で負けるとショットを飲む罰ゲームのし過ぎで昇天しシャリーフさんが肩組して介抱しているし。ハニフさんは早々に轟沈、カリムさんがおぶっている。


そんなこんななのでボクが女子たちの面倒を見ているのだが、泥酔と言っても元気百倍の奴もいる、足元はフラフラしているが、どこかへ行こうとするのを必死に手を引っ張って止める。


藍さんはボクの左腕にくっついて体重を預けてくるし、その彼女に抱きついているサニーさん、そして元気百倍のリズさんがボクの右手を引っ張ってどこかへ連れていこうとしているのだが。


ハハハ、どこへ行こうと言うのかね。


「まだ飲むぅ」


「今日は飲み明かしますわよぉ」


まったく、さっきまで三人でバチバチしてたのに、仲良いのか悪いのか、女ってわかんね。


「ダメですよ、そんなにフラフラなんですから」


ダメダメ、帰って寝る!おーけー?


「まだ酔ってませんっ!」


急にビシッと姿勢を正す藍さんとサニーさん、しかし正したのは一瞬で目をパチパチさせフラフラよろよろしている。何この二人面白い、けどダメなものはダメだ。


「ほーらー、はやくー」


だからリズさん、さっきからどこに行こうとしてるの?めっちゃボクを引っ張るけど。


「ちょっとリズさん、力強いですって、どこ行くんですか」


「え?ソラたちの部屋?」


まさか。


「二次会、とかです?」


「もちのろん!」


いつの時代の言い方だよ!そんなツッコミも出来ず、ええー、マジでぇ?引っ張る彼女を引き止めつつ、顔を引き攣らせてカリムに助けを求める眼差しを向けると。


「色男ってつれーな」


お前それしか言わねぇな!自分に関係ないからって!

せめて止めてくれ、隊内禁酒はダメだって。


「いや、常識的に考えて部屋で飲むのはまずくないです?」


「隊長権限で許可する、どうせパイロットは俺らしかいないしな」


なんでー!?あ、少々騒いでもボクたちしかいないから大丈夫ってこと?こっちとしては全然だいじょばないんですけど!


「ほら、諦めてさっさと行け、俺としてはそっちの方が助かる」


この野郎、酔ったバディの相手は面倒くさい、そう言いたいのか、行け行けと厄介払いされる。


「ちょ、カリムさーーーん!」


文句を言う前に、隊長の許可を得たリズさんに強制連行されたのであった。


「そうだ、明日の朝10番格納庫へ行け、わかったなー」


そんな声が聞こえたような聞こえなかったような。



女子三人でボクの部屋に入る、こんなところに来てもただの寝室、酒もないのにどうするつもりだ?


するとフラフラな藍さんが、自分のベッドの下に頭を突っ込んでゴソゴソと漁り始めた。おい、まさか・・・・・・。


テテーン!


じゃねえよ、あります、ドヤー、な顔をして、なんだあれウイスキー?茶色い高そうな瓶を掲げている。


「え、藍さんどこでそれを・・・・・・」


「え?持ってきたの」


端島から?なんてこった、よくバレなかったな。

はぁ、もういいや。とため息を吐いているうちにどこから持ってきたのかパイプ椅子を広げ、グラスに氷を入れて三人でロックにして飲み始めた。酔ってるよね?早すぎんだろ。


「うん!これ美味しいねぇ」


「甘くて飲みやすいわね」


「でしょー?エルゲートのウイスキーが有名な所からわざわざ取り寄せて大事にしてたんだっ!」


はぁ、楽しそうでなにより。


「ソラも飲もうよー」


「いえ、ボクはもう・・・・・・」


部屋について安心したのか頭ガンガンでやばいんです、店でも結構飲まされたし。正直目を開けとくのもやっとで、三人の顔が霞んで見える。


「フラフラですよ?大丈夫ですか?」


フラフラな貴女に言われたくない、わざわざベッドに座るボクの隣に我先にと座り両肩を持って支えてくれる。大きく柔らかい何かが当たってる気がするが、気にする余裕がない。


「はい、お水」


ボクの前に藍さんがしゃがみこんで赤く火照ったその顔で心配そうに見上げ、無色透明な液体の入ったコップを渡される、ウイスキーじゃないのは確かか。遠のきそうな意識を保ちそれを受け取り一口。


「ゴホッゴホッ!!・・・・・・酒じゃないですか!!」

「へへー、引っかかったー。学習しないなぁもう」


くっそ、一度ならず二度までも!

やばい、頭ガンガンを通り越してクラクラしてきた。うっぷ、気持ち悪い・・・・・・。


「え、アイちゃんって結構酷いね・・・・・・」


彼女の行動にドン引きするリズさん、もっと言ってやってください。


「ちょっと気持ち悪いんで横になります・・・・・・」


「大丈夫?吐きそうなら言ってよ?」


「大丈夫、です。うっ」


「あーあー、弱いのに無理するからぁ」


「リズさん、桶か袋あります?」


「とってくる!」


いや、誰のせいだと思ってんだ。遠のく意識、もはや誰に背中を擦られているのかも分からない、暖かい手の平が気持ちいいなと思いつつ、込み上げてくる気持ち悪さを落ち着かせるために大きく深呼吸すると、そこから意識が無くなった。



「ねぇ、ソラ?」


「ふぇ!?」


呼ばれて目を開けるとボクの両手をつかんで馬乗りになっている藍さんの姿が目の前にあった、ちょっと待ってどういう状況?


「えっと、これはー・・・・・・」


さっきまで頭がガンガンしていたのに、酔いも一瞬で冷めてしまう。

どうしようどうしようと左右を見ると、スヤスヤと寝息をたてて寝ているリズさんとサニーさんらしい後ろ姿が。


ん??


「ねぇ、ソラ」


「な、なんでしょう?」


薄暗くてハッキリとは見えないが、酔ってはいるっぽそうだがいつにもない真面目な顔を藍さんはボクに向ける。それよりも身動きが取れないのがいちばん怖い、完全にロックされている。


「私のこと、好き?」


へ!?なんで今!?

震えるボクの手、更に強く握ってくる彼女の手。


「好き?」


顔を当たるか当たらないかまで近づけ、藍さんらしからぬすごい魅惑の顔で迫ってくる。どう返すのが正解なんだ!考えろボク!頭をフル回転させて導き出した答えが。


「もちろん、好きですよ!」


へへへー、じゃないわい!もっとなんかあっただろボクのバカ!いやしかし、逃げれる状態にないしもはやこれまで、そう言うしか無かった。別に本心じゃないって訳じゃない、ちゃんと彼女のことは好きだ、この状況は理解できないけど。


「じゃあ、いいよね?」


「え、いいよね?ーーッ!?」


ヤバい気がして彼女をよく見ると、何も着てないし履いてない!なんて思ってたらボクもいつの間にか脱がされてる!


待てまてまてまて!こんな状況不本意です!!


「いくよ」


「ちょ!藍さん!・・・・・・くっぁ」


「んっ・・・・・・」



「ダメです!!」


あれ?

息を荒らげて押し返そうとすると、今の今までボクに乗っかっていた彼女はいなくなっていた。


「夢?」


なんちゅー夢だ、欲求不満かよボク!

しかし、良かったー焦るー、と安堵のため息を吐いてふと顔を左側に倒すと。


「ソラぁぁ・・・・・・」


「!!!!」


藍さんがスヤスヤとボクに抱きついて眠っていた。

寝てる?寝てるよね?はぁ、心臓止まるかと思った。と思っていると彼女のスベスベな左脚がボクの大事なところに当たっているのに気がついた、なんだこいつのせいか。起こさないように柔らかい脚を持ち上げてボクの大事なところから下ろす。


「出てない、セーフ」


やらかしてたら恥ずかしいじゃ済まされない、一生笑われる。


はぁ、心臓に悪いっ、と反対側を向くと。


「私にもソラを分けなさいよぉ・・・・・・」


リズさんが寝言を言っている、困るなぁこんなところに寝られちゃ。ってことは、サニーさんは!?慌てて藍さんを起こさないように首をあげると、藍さんのベッドにそれっぽい人影が見えた。良くないけどよかった。


美女に挟まれちゃいくらボクでも理性を保てない、藍さんは仕方ないとして、リズさんをどうにか反対を向けさせようと試行錯誤するが。


「もうなにぃ・・・・・・」


腕を捕まれ、脚を絡められた、なぜか状況が悪化している。


「何してるのかしら」


「んな!」


サニーさん!?


薄暗くてよく見えないが、藍さんのベッドで寝ているはずの彼女がボクを頭上から覗き込んでいた。


「絶賛困惑中です」


「とてもそうは見えないけど?」


ちらっと見られたくないところを見られた気がする、いや、まぁ、これでも男ですので。


「どうかこのことは内密にお願いしたいです」


「ふふふ、どうしようかしら」


ボクの頬をその柔らかい指でゆっくりと撫でてくる、出たな魔性の女め!何が目的なんだ、言ってみろ!


「もう、何が言いたいんですか」


ボクとしては言われたら困る、蔑んだ目で見られるならまだしも絶交とかされたらたまったもんじゃない。


「なんだと思う?」


ふふふ、と言うなれば魔女のようにまた笑う彼女。

え、なに、どういうこと?と頭を巡らせていると。


「あっ」


「ふふふ、思い出したかしら?」


「え?」


「・・・・・・そうでもないみたいね、まあいいわ」


そういえば彼女、一番怪しいんだった!藍さんと仲良くしてたから完全に忘れてた!言葉の内容は理解できないけど、あーー、スパイ失格だぁ、今はスパイじゃないけどー。これじゃ、完全に美人局に引っかかった能無し工作員、シロお兄ちゃんに笑われる、いや、バカにされる!


「そんな貴方が・・・・・・、いえ、なんでもないわ」


「えっ、ちょっ」


スリスリとボクの頬をいやらしく撫でていた彼女の手はボクの両頬を優しく包み、銀髪ロングヘアのいい匂いのする中、否応もする暇なく彼女の唇がボクの唇に重なりそうなほどギリギリまで近づく。動いたら当たりそうなので全く動くことができないし、その代わりに、彼女の鼻息がボクの頬に当たっている。


「んふ、今日はこの辺にしてあげるわ、おやすみなさい」


今日は?いったい何に満足したのか、そう言うと彼女は藍さんのベッドに戻り布団を被って寝てしまった。


え、こんな事してここで寝るの?


えぇ、彼女の意図が全く読めない、怖い!全然興奮もしないしむしろ萎んでしまった。

今すぐボクをどうこうしようって話ではないっぽいけど、ここで騒ぐとプスッと殺られても何らおかしくない。


まあでも、単純にボクのことが好きって可能性も微レ存・・・・・・なわけないか、自意識過剰だ、これも藍さんに過保護にされてるせい。


恐怖を通り越して、ま、いいか、て感じになってしまう自分がいた。



日の光を浴びて目が覚めた、これが朝チュン、いい気分だ。


夜中のことは何が本当で何が嘘なのか全く分からない、確かなのは今現在、下着姿で藍さんとリズさんがボクの両脇で寝ていること。サニーさんもさすがに下着ではなかったが、藍さんのベッドでちゃんと寝ている。


本当にボク何もやってないよね?自分のパンツを触ってもそのような形跡はない。


「ほら起きて下さい、朝ですよ。ってなんで下着なんですか!」


わざとらしく今気がづいたフリをして、スヤスヤと眠る二人を起こす。


「「ふぇ?」」


と同じ反応で起きた二人は。白くスベスベそうな脚を斜めにして座り、目を擦りながら今の状況を確認。

もう完全に下着見えちゃってますから、藍さんが薄紫で、リズさんがクリーム色ね分かりました!パンツにリボンまで付いちゃって、かわいい。


「「えっち!」」


ものすごいスピードで布団で体を隠す、いや、知らないって、脱いだのは貴女たちです。


その騒ぎでサニーさんも起き、布団を肩にかけたまま目を擦りながらボクを見ると。


「おはようございます。夜中は酷くうなされてましたけど、お体は大丈夫ですか?」


ん?いつものサニーさんだ。え?あれも夢?何が何だかわからず、自分の顔をあれ?とペタペタ触っていると、彼女はいつものように、ンフフフ、と口元に手をやりなんだかいやらしく笑っていた。


全くわからん!怖い!


「大丈夫です、ご心配お掛けしました、お酒って怖いですね」


とりあえず、混乱してる自分を隠すように無難に話を合わせると。


「ええ、ほどほどにしてくださいね」


またとびきりの顔でニコッとウインクし笑われた。

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