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第23話 休息

「まあいいわ、しばらくロム油田の担当は東のカノープル基地が担当してくれるそうよ、連戦続きで貴方の機体も修理が必要だししばらく休みね」


マジで!?やったー!と素直に喜べはしない、なんならボクだけ被弾してるし、整備員には申し訳ない。てかF-35の部品ってあるのかな、本土から空輸ってなるとかなり時間がかかりそうだ。


だがしかし、急に休みと言われても何もやることがない、強いて言うなら藍さんの際どい部屋着を眺めるだけの日がな一日だ。


「いて!なにするんですか!」


「別にー」


また太ももを抓られた!藍さん、ボクの心を読んでいるのか?いやてか、抓るぐらいならそんな際どい服装しなければいいのに、年頃の男の子には刺激的すぎるんだって。


「休みかー、親睦を深めるのもアリ、だよね!」


ウフフフと色っぽく笑うリズさん、嫌な予感、どんな親睦??

でもボクとしてはこれ以上この人たちと仲良くなるのはどうかと思う、このボクだって藍さんを守るのに精一杯だし、むしろ守られてる気がする。

そんな中シャルルとか来てみろ、リズさんたちみんなを信用してない訳じゃないけど絶対に守れないし、誰かしら落とされる。


いや待て、よく考えたらその考えは放漫と言うべきなのかな?


このことをツルギに聞かれたら、守りたい奴は全員守れとか言われそうだ。


実際あの人はやってのける、限界はあるけどね。


シロお兄ちゃんみたいに、は特別すぎるか。


「そうですね、どこか飲みに行ったりします?」


「ソラ!?」


意外だったのかボクの提案にビックリする藍さん、反対されるのも面倒なので、ここで彼女も持ち上げておこう。


「藍さんともまだ1回しか飲んだことなかったんで、ちょうどいいですし」


端島基地に来て初っ端にしてもらった親睦会以来彼女とはまったくそういう事ができていない、藍さんに向かってニコッと笑うと、一瞬で頬を赤く染めて、ソラが言うなら・・・、と人差し指をつんつんしている、かわいいしチョロい。


あ、だけど基地から出る訳にはいかない、ボク命狙われてるっぽいし!なんて理由にするか・・・・・・。


「あ、でも、外出許可は貰ってないんで、基地の中で飲めるとこありますかね?」


エルゲートから作戦に専念するために外出許可は貰ってない、バレたら面倒なので出れない、的な最もそうな理由で伝えると。


「あるよ!」


「陸軍の基地内に大きめのバーがありますね」


ほっ、よかった。ボクは胸を撫で下ろした。



夜、隣接する陸軍基地内のバー。というか、クラブ?


別に今日じゃなくてもいいと言ったのだけど、善は急げ、今日できることは今日やろうとリズさんが張り切ってしまい、パイロットみんなでここに来ていた。


大音量の音楽が室内を包み込む中、今は女性陣と男性陣でテーブルを対にし別れて飲んでいる。とても騒がしい店内なので女性陣は何を話しているのかよく聞こえないが、下は作業パンツに、上着は何とは言わないがピチッとしたグリーンのTシャツから浮かび上がるそれが強調されてて凄く眼福。てか二人とも藍さんより大きいな。


「何見てんだ?」


「いえなにもっ!」


鼻の下伸ばして、って訳でもないが美人さんたちを鑑賞していたら左にいたザファーさんに肩組される。


「サニーには気をつけろ、アイツはマジでやべー」


「へ?」


結構大きな声で耳打ちされるが、どういうこと?この筋肉ダルマがあの人の怪しさに気づいているとは到底思えないけど。


「何を神妙な面持ちで言っている、アタックしたらフラれただけだろ」


「お前!シャリーフ!」


なんだそういう事か、びっくりした。


「ザファーさんはあういう人がタイプなんですね!」


んー、ニッコリ!とちょっと酔ってるのでジャブがてら大胆にいじってみると。


「お前言うじゃねえか」


「ちょちょちょ!冗談ですよ!ギブです、ギブ!」


普通に肩組みのまま首を絞められた、黒歴史なのかな?それなら自分から暴露するようなことしなければいいのに。


「なんならお前でもいいんだぜ、可愛いしよ」


「ぅへ?」


肩組みされてる腕が急にいやらしく感じ、距離間近いのってそういうこと?ボクの理性が警報をけたたましく鳴らしている。


掘られる!と。


「そこら辺にしろ、女に相手されないからって男に目覚めちまったのか?お前は」


「ふんっ、冗談だよ。どうせ俺の恋人はダンベルだけさ」


ボクの右側でソファにもたれ、酒を飲んで澄ました顔のカリムさんに助けられた、憎いやつだが今回はグッジョブ。しかし、なんでザファーさんは自暴自棄になってるのやら。


てか人当たりはキツいが、ボクよりよっぽどカリムさんの方がイケメンだと思うけど、かなりの美形だし、ボクってほらカワイイ系じゃん?(涙)


「可愛いのは本当だぜ?」


男に言われても全っ然っ嬉しくない!ここは適当に。


「ありがとうございます」


とだけ返しておいた。


「はぁ、本気なのか冗談なのか・・・・・・」


頭を抱えるカリムさん、んー、ちょっと同情するな。


「いつもああなんですか?」


「酒を飲むと男女見境ないな」


「うへー・・・・・・」


そう言ってる側から今度はシャリーフさんを襲おうとして、やめろ馬鹿野郎と顔を両手で押され拒絶されている。


「カリムさんもリズさんとはどうなんですか?」


「あ?なんでお前に言わにゃならん」


別に怒ってはいないようだけど、睨んでくる鋭い目にやべっと萎縮してしまうがここは平常心、黙ったら負けだ。いや別に勝負とかじゃないんだけど。


「あ、つい興味本位で・・・・・・」


へへへー、と酔った勢いでと誤魔化して首元を搔いていると。


「別に、そういう目で見たことはないし、見られた覚えもない」


へぇ、何故かその言葉をカッコイイと思ってしまった。


「それじゃ俺の番な」


あ、やべっ、聞くんじゃなかった。


「お前のエレメントとはどうなんだよ、アイと言ったか」


ですよねー!聞かれますよねー!アワアワと慌てふためいていると。


「リズがキスをしてたのを見たらしいが?」


はへっ!?言っちゃったの、あの人でなし!反射でリズさんを見るとたまたま目が合い、酔いの回ったアホそうな顔でニコッと笑われた。かわいい、じゃなくて、もう!ばかっ!


「いや、えっと、そのー」


「別に基地内に恋愛は禁止されてないしな、しかし、答えるまで俺はお前のグラスに酒を注ぎ続けることになるぞ?」


「ひぃぃ!」


そんなイケた顔でそんな酷いことを言わないで下さい!

しかしボクのそんな願いは届かず、まず早速注がれた一杯目を飲み干す。ちょっと優しいのがギリギリいっぱいまでは入れないところか、だがキツイったらありゃしない、なにこれテキーラ?


「おっと、これじゃパワハラだな、俺も一緒に飲んでやるよ」


自分のグラスにも酒を注いで一瞬で飲み干してしまうカリムさん。えー、なんも文句言えなくなったー。


「そら、さっさと言わねぇと二杯目だそ、どうせ酒は強くないんだろ?」


何このドSッ!!


そりゃリズさんが女として彼を見ないわけだ、納得っ。したけど、ボクの方の問題は何も解決していないし納得できない。


ぐぬぬと我慢し二杯目を飲むと、彼は最早ボクより先に二杯目をグビっと飲み干す。


「いい飲みっぷりだ、ほら、三杯目もあるぞ」


「もう、分かりましたよっ!」


死んでしまう前に降参するしか無かった、完全敗北だ。


「付き合ったりとかはしてませんが、ボクは彼女のことが好きです!でも、端島の基地にも好いてくれる人がいるのでどうしたもんか、って感じなんですよ!」


全部言ったぞ!どうだこの野郎!


「ほう、飛んだ色男だな」


なんちゅー感想だ、ぶん殴ってやろうかな!?

拳に力が入りプルプルしていると。


「カリムが会話なんて珍しい、何んの話してるの!?」


「面白そうな話かしら?」


「あ゛っ!」


うわビックリしたっ、ボクの両側のテーブルの下からリズさんとサニーさんがニョキっと出てきた、藍さんは出遅れた!と歯ぎしりをするように怖い顔で二人を睨んでいるし、左隣に出てきたサニーさんはわざとなのかボクの太ももに両手を乗せて身を乗り出してカリムを見ている。


って、カリム、喋ったら今度こそぶん殴るぞ・・・・・・。


そう念を飛ばしていると。


「なに、他愛もない世間話しさ」


また澄まして酒を啜る。ほっ、理解のある奴で良かった、のか?

それよりもだ。


「リズさーん?」


「え、なにー?」


完全に酔っているのだろう可愛いニコニコしたアホ顔で見上げてくるがボクは元スパイだ、色仕掛けは通用しない。が、首元から見えた胸の谷間に目がいったのは内緒だ、これは男の性。


「カリムさんに言ったらしいですね」


ギクッと目を点にし急によそよそしくなる彼女。


「い、言ったって、なにを?」


鼻歌を歌いボクから目をそらす、挙動不審すぎるだろ、わかりやすい。いや待てよ、これはボクの口からから言わそうとする罠だ、マンツーマンならどうにかなるが人目があるこの場所、どう問いつめてもボクが負ける未来が見える、クソ謀ったな!


これ以上何も言ってこないボクを背に、ニヤニヤしているのが分かる、悔しい!!


「あらー、何か秘密でもあるのかしら?」


ちょちょちょちょ!これはマズイ!

完全に目が座っているサニーさん、わざとらしくたわわな胸をボクの左腕に押し当てて体重をかけてくる。


ゴンッ!


「いて!」


脛に激痛が走り慌てて藍さんをみると、震える手を必死に抑えて人をも殺せそうな鋭い目で睨まれる、足で蹴られたのだろう、帰る!とか言い出さないだけ成長したけど、これは不可抗力、ボクにはどうすることも出来ないんですよ!


「ハニフさん!どうにかしてくださいって!」


バディの責任は隊長の責任、ここは今の今まで静かにしていた彼女の隊長のハニフさんに助けをって。


「ハニフなら寝てるわよぉ」


ソファーに持たれ天井を見上げて寝ていた、なんてこったい、ボクより酒弱いってマジかよ、これはいよいよマズイぞ、シャリーフさんとザファーさんも気がつけば店の奥の丸テーブルで陸軍の人と腕相撲をしているし、カリムは我関せずで助けてくれそうにない。


「色男はつれーな」


ふんっ、と澄まして酒を嗜んでいる、ムカつくー!


「サニーさん、近いですってもうっ!」


変なところ触ってしまいそれを口実に殺られてしまいそうで、押し返す訳にもいかない状況だが、このままだと藍さんに殺されてしまう。こんなところで死ぬ訳にはいかない。いや、彼女たちに殺されるなら本望・・・・・・、ではない!!


「どうしてーぇ?いいじゃない、これからも仲良くしたいでしょ?」


どどどど、どういうこと!?わけわかんないよ!?

こうなったらボクもテーブルの下から逃げようかと思ったが、行動する前に股の間に手を置いて完全に逃げ道を塞がれるし、なんだか赤い瞳で見られると身動きが取れない。


するとどんどん目の座った彼女のおっとりした顔が近づいてくる。


待てまて!何する気!?


逃げようにも肩を掴まれて逃げれないし、状況を理解したリズさんに背中を押されている!やめ!ダメぇ!!


ガタッ!


お?


「私のソラから、離れなさいっ!」


テーブルを力ずくで手前に引っ張り、テーブルとボクの座るソファの間に入った藍さんがサニーさんの首根っこを掴みボクから引き剥がした。


ふぅ、間一髪だ(残念)


「あらーん、もう少しだったのに、残念っ」


ンフフフと人差し指を自分のプルップルな唇にやり悪そうに笑うサニーさん、こりゃ完全に魔性の女と言うかもはや美人局だろ!


「何よもう、ソラも満更でもない顔してっ!」


「してません!むしろ困ってました!」


矛先がボクに向く、満更でもない顔はしてないはちょっとだけ嘘になるかもしれないが、困っていたのは本当だ。サニーさん色っぽさが別次元だよねー、さっきの色仕掛けは通用しないは、人による、に訂正しておこう。


「ほんとに?」


腕を組んで懐疑的なジト目を向けられるが、ここまで来ると引き下がれない。

両掌を顔の前で合わせて懇願する。


「ホントです!神に誓います!」


「ならいいけど・・・・・・」


本当に藍さん?マジで許してくれるとは思わなかった。


「それにしても”私の”ソラ、ね、ふふふふ」


彼女も脚を組み、長い銀髪を耳にかけながら悪そうに笑う、そこは掘り下げないで頂きたかったっ、その一見おしとやかそうなおっとりした笑顔が凄く恐ろしい。


「事実だもん!」


ふんっ!と彼女からそっぽ向いてボクの隣にドスッと荒々しく座ると、グラスを手に取りグビっと酒を進める。


藍さんが、強い!


あの、ちょっとでも不利とわかると逃げていた藍さんが・・・・・・。ボク泣きそう。


チュッ。


「へ!?」


「なっ!?」


ボクの右頬に柔らかく暖かいものがぴとっと当たった。頬を擦りながら恐る恐る見てみると、酔ってるのであろう顔を真っ赤にしてニコニコのリズさんが自分の唇を触っている。まさかキス上戸とか??


「あ、バレちゃった」


「何してんのよ!あんた!」


「隙だらけなんだもーん」


親友(笑)の裏切りにキーッ!と激昂し拳を振り上げる藍さんにボクの後ろに隠れるリズさん、なんでボクを巻き込むの?まあこればっかりは仕方ない。


「藍さん!暴力は良くないです!」


「なんでこいつを庇うのよ!ソラも顔赤くして!」


「してないです気のせいです酒のせいです!」


「いいから、そこをどいて!これは戦争よ」


あーもうめちゃくちゃだよ!


「・・・・・・色男ってつれーな」


そんなボクたちを横目に、カリムは静かに晩酌を続けていた。

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