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第20話 怪しい

作戦を終了し基地に帰投した。


戦果はスパイダー隊と、スコーピオン隊、サンド隊が一機づつ撃墜だがいずれもヴァジュラ隊ではなかったらしい。ボクと藍さんも一機づつ撃墜、突然現れたルイさんことスカイレインが二機撃墜し、お礼を言う間もなく気がついたら消えていた。


神出鬼没すぎるだろ、カッコイイ。


「よっと」


コックピットから降りて藍さんとハイタッチ。一応は戦果を上げてるからね、労わないと。


「へへぇ、どうだった?」


いや、どうだった?じゃないって。撫でてほしそうに子犬のようなキラキラとした目でボクを見てくるが、そんなにボクは優しくない、素直にすごいとは思ったけど。


「へてっ!!何すんの!!」


おでこにデコピンをお見舞いしてやった。全く想像してなかったのだろう、一瞬だ目を点にしてイテテとおでこを擦っている。


「ボクの指示はちゃんと聞いてください、下手したらやられてましたよ」


腕組みをして呆れ顔で彼女を見てやる、完全に予定狂ったもん、ルイさんこなかったらやられてたよ、割とマジで。


「だって・・・・・・」


「だってじゃないです!」


「・・・・・・ごめん」


めちゃ不服そうだけど謝ってはくれる、てかこのやり取り何回目だよと。


まあいいや。


「へ?」


「お疲れ様です、凄かったですよ」


ボクは彼女にハグして背中をポンポンと叩くと、「へへへ」とめちゃくちゃ嬉しそうな声にならない声で喜んでいた。可愛いなぁもう。


そして、ずっとハグしてるのも変なので直ぐに離れると。


「えっち」


両手でそんなに無い胸を隠す藍さん。


「違いますっ!もうしませんよ!」


「ごーめーんー」


両肩を掴まれてブンブンと前後に振られる、ふぅ、いつもの藍さんだ。


「でも、ソラも凄すぎだよ〜、三機も落とすなんて」


あれ?


「いやあれはですねーー」


「お前すげぇな!」


「とわ!」


全部言い切る前にザファーさんに肩を組まれ、ヘッドロックみたいな感じにガッチリ決まってしまう。あれ、これってもしかして・・・・・・。


「あの悪天候の中三機も落とすなんてな、しかもソールの奴らだろ?俺にはできん」


えーーーー、ボクが落としたことになってるぅぅぅ。


「いやあの」


「謙遜すんなって」


「いててててて!」


容赦ない力で頭をグリグリしてくる、この人筋肉で会話してくるタイプだ!


「素直に凄いわね」


「ここまでとはな」


無表情だが長い銀髪を耳にかけながら褒めてくれるサニーさんと、うんうんと頷くハニフさん


「驚きだ」


シャリーフさんも同意見。


ヤバい、ルイさんの戦果がボクに上乗せされちゃってる!訂正しようにもそんな空気じゃないし隙もない。


「わ、私は強いと思ってたよ!」


どこの古参追っかけだよ、昔から応援してました、みたいなリズワンさんの言葉にはうっかり笑ってしまいそうになった。


「俺はちょっとは信頼してもいいと思うが、どうだ、カリム」


なぁ、と少し遠くからボクらを見ているカリムさんに問いかけるザファーさん。おっ、この誤解は利用した方がいいのでは?


少しの間の後。


「・・・・・・好きにしろ」


チョロかったー、良かったー。

まさかその日のうちに凝りが解消するとは思ってなかった。ボクのためになるかは怪しいけど、ルイさんの戦果をちょっとだけ利用させてもらうことにしよう、ここでの生活に困るよりかは、少しでも相手してもらう方がやりやすいから。


「ありがとうございます」


ザファーさんに首を締められそうになりながら、ボクはカリムさんにお辞儀をした。



今日の当直?夜勤?スクランブル要員?はスパイダー隊らしく、その二人を待機室に残してあとは部屋に帰った。


いやー、まさか初日に戦闘に繰り出されるとは思ってなかったが結果オーライ、多少は信頼されたようで良かった。


またいつスクランブルがかかるか分からないので飛行服のままベッドに横になると。


僕のベッドの縁に藍さんが座る。どうしたのかな?あ、そうだ、その前に。


「藍さん、さっきも言いましたけど指示は聞いてくださいね。奥の手は最後に出してこそ奥の手です、一発でけちらせるなら話は別ですが、警戒されるとなにもで、き・・・・・・?」


藍さんがそのままゆっくり倒れ込んできて、ボクの腕に頭を乗せ添い寝の状態になる。


「藍、さん?」


急にどうしたの!?自分の心臓の鼓動が自分の耳から聞こえてくる。


「ごめん」


ボソッとボクの胸元で呟く、ヤバい、かわいい、守ってあげたくなるけどどうしたんだろう?さっきの戦闘が思いのほか怖かったとか?無きにしも非ずだが、こういう時は優しく彼女の肩を擦るに限るだろう。


どう対応するのが正解なのか分からないし。


「ソラ、強いね」


ん?


「藍さんも十分強いですよ」


「私は全然・・・・・・」


ここでもあの手柄はボクのじゃないとは言えない、言ったところでルイさんの事を見てない様だし信じて貰えない気もするし、なんて説明していいのかもわからない。


「でも、ありがとう」


そしたらギューッと強く抱きしめてきた。どうしたの、今日はえらく積極的だね。


コンコン。


タイミング悪いなー、誰だよ。


藍さんはシュバッと僕から離れ急によそよそしくなり、自分のベッドに座ると、ボクも起き上がりノックされたドアを見て


「はーい、どうぞ」


返事をするとサンド隊の褐色肌の銀髪ロングヘアの美女、サニーさんがやや緊張した面持ちで入ってきた。


「夜分に失礼します、貴方にお話が」


「え?ボク?」


貴方と言われて目と目が合う、なんだろう?と首を傾げつつ嫌な感じがして藍さんをみると、いつものように狼のごとく彼女を睨んでいた。ダメだなこりゃ。


「まあその、立ち話もなんなんで座ってください」


そう手招きすると、「それでは」と少しお辞儀をしてスっと座った、ボクの隣に。いやー、冷や汗が止まんないね、幸いなことにボクとの間は人一人分は空いているけどさ。


「で、その、話ってのは・・・?」


藍さんの強烈な眼差しに怯えながら早速本題に入る。


「ソラさん・・・・・・」


「あ、呼び捨てでいいですよ」


待機室でのドッシリとした態度とは裏腹に、何故か緊張してる感じなので紛らわしてあげようと気を使うと、頬をピクピクさせている藍さんに一層睨まれる、取って食われたりしないって、落ち着けっての。


「では、ソラ、失礼かもしれませんが、貴方の出身はどこですか?」


「ふえっ」


おっと、これは・・・・・・。


違う冷や汗が垂れてきて返事に困り再び藍さんを見ると睨むのをやめて、心配そうな顔をしてくれている、事の重大さは分かってるみたい。彼女、リュウお姉ちゃんから全部聞いてるし。


「エルゲートですけど?」


「本当の出身地です」


おっとりした表情だが手厳しく修正される、あれまー、誤魔化すのは無駄か?


「・・・・・・いやだなぁ、ホントですよ」


へへへと首元を搔くが冷や汗ダラダラ、あからさまに挙動不審になってしまうが、これも長いことスパイ活動をしてなかったからか、鈍ったものだ。


「そう、それでは本当の名前は?」


まずい、この人なんなの!?全部知っててわざわざ聞いてるんじゃないかと疑ってしまう。言うべきなのかどうなのか頭をフル回転させて考えていると。


「もう!さっきから黙って聞いてれば!ソラの事そんなに知ってどうするのよ!」


ついに噛み付いてしまった藍さん、ものすごい勢いでボクとサニーさんの間に入り、ふんっ!と不機嫌そうにそっぽを向いてしまう。


「あら、ごめんなさい」


フフフと、いろいろ悟ったように笑われてしまった。

藍さんとサニーさんじゃ勝負にならないと思うけど・・・・・・。どっちが負けるのかと言うと文句なしで藍さんだ。


「そうね・・・・・・、前置きが無かったわね、ソラ、私と髪色と肌の色が一緒でしょ?もしかしたらってね」


あー、そういう事か、マジ焦る。


「同じ出身地かも、て感じですか?」


「まあ、そんなところね」


ちょっと歯切れが悪いが、確かにこの世界では褐色肌に銀髪とかかなり珍しい、だからよくいじめとか、迫害の対象とかなったりするんだけど、ボクは生まれつき銀髪な訳じゃない。


しかし、その説明を聞いてもガルルと威嚇する藍さん。


「ところで、貴女はソラのなんなの?」


おい!ここでおっぱじめるな!!


「エレメントっ!!」


ふふんっ!と胸を張る藍さん、そういうことを聞いているんじゃないと思うんだけど。


「あら、それだけ?それならもう少しソラと話がしたいからそこをどいてくれるかしら?」


「へ!?あ、いや、ダメ!」


「どうして?ただのエレメントの貴女に、私と彼の会話を妨害される筋合いはあまり感じないけど?」


「あ、う・・・・・・」


やばい!このままでは藍さんが論破されてしまう!言葉でダメなら暴力での解決も辞さない彼女だ、早く止めないと!


「ボクの大切なエレメントにそんなこと言わないでください」


ボクの助太刀にペカーッ!と顔をキラキラさせてくる藍さん、余程嬉しかったのだろう、尻尾があればブンブン振っていそうだ。


「あらあら、ごめんなさい、そんなつもりは無かったのよ。・・・・・・エレメント、ね」


ちょいちょい意味深なことを言ってくるな、なんなんだこの人?美人局か?


「今日は遅いんで、また今度話しましょう」


まあまあ、と二人を落ち着かせる。ボクにも対処する時間が欲しい、こんな状況を一瞬で対処出来る頭は流石に無い、素直に引き下がってくれるか?


「ええ、そうね。夜遅くにごめんなさい」


「いえいえ」


年上お姉さんの余裕といった感じか、素直に引いてくれた。弱みを握られている訳では無いのに、なんだか生きた心地がしない。


「それじゃ、また明日」


ニコッとウインクして部屋を出ていった。それにドキッとしたのは内緒だ。


「もう!何なのあいつ!」


「まあまあ」


両手をブンブン振って不満爆発な藍さん、わからんでもないけどさ。


「この基地にはソラを狙ってるやつしかいない」


そっち?


「そうじゃないと思いますけど・・・・・・」


「大丈夫!ソラは私が守るから!」


「あ、ありがとうございます?」


これには苦笑い、頬を搔くしかない。まあ、そういうことにしとこう、なんかやる気満々だし。ボクとしては彼女たちに手を出さなければそれでいい。


「ちょっと旧友に電話していいですか?」


「誰?レイ?」


「レイより旧友です」


「いいけど、どうして?」


「サニーさんをちょっと調べます」


「スパイモード!!」


また目をキラキラさせる藍さん、他の人に言ったりしないよなぁ、そこら辺が不安だけど言う人もいないし大丈夫そうかな。


ボクは枕元に置いていたスマホを手に取り電話をかける。


《ーー誰だ?》


お、出たでた。


《パパ?お久しぶりです!》


この言葉には「?」と藍さんが二度見してくる。

さすがにこの人のことは知らないか。


《パ・・・・・・、ニグルムか!?》


《そう、連絡できなくてすみません》


《よかった、生きてたんだな。・・・・・・それならお前やばいぞ!》


《ええ、探されてるのは知ってます》


《それならいいが、どうした?その事で電話か?》


パパこと元同僚で元バディ、ヒナの仕返しの時に手伝ってくれたあの人だ。やっぱりボクがヒナに探されてるってことは知ってるみたいだな、だがそれよりも先に知りたいことがある。


《いえ、ちょっとこの人の素性を知りたくて》


リズワンさんから貰ったサニーさんの写真をメールに添付して彼に送る。


《ん、こいつか。この容姿なら難しくはなさそうだが》


さすが元バディ、頼りになるぅ。

しかも、何故かとか聞いてこない、分かってるぅ。


《なるべく急ぎめで調べれますか?》


サニーさんが先手をうってくる前に、多少の情報は掴んでおきたい。


《ああ、努力はするが、俺も今点々としててな》


そっか、ボクが探されてるとなると彼も探されるのは必然か。


《すみません》


《何いいってことよ、可愛い息子のためだからな》


歳が離れてるだけで、血は繋がってないのにいつも可愛い息子のためと無理を聞いてくれる、感謝してもしきれない。


《くれぐれも気をつけて》


《ああ、望んで渡った橋だ、見つかった時は素直に死んでやるよ。お前も気をつけろよ》


《・・・・・・はい、でわ》


持つべきは友と言うが、毎回毎回危ない橋を渡らせてしまっている、本当に申し訳ない。


ふー、とため息を吐いてスマホを閉じ藍さんを見ると。


「カッコイイ!!」


目を更にキラッキラさせていた。眩しいっ!


「そんなことないですよ、意外とキツイですから」


「?」


はぁ、一難去ってまた一難、これからどうするべきなのか俯きながら考え事をしていると藍さんがボクの隣に座る。太ももと肩が当たっていてめちゃ近い。


「ソラは凄いよ」


彼女はボクの肩を抱き寄せ、手の甲を擦りながら耳元でそう呟く。


「凄くないですよ」


まだ誰も助けたことなんて無い。殺してばっかり、死なせてばっかりだ。


「ううん、私は尊敬してるしそんなソラが大好き」


え?あまりに素直に言われるものだから驚いて彼女のに向くとそのまま。


チュッ。


頬を優しく両手で包まれ、彼女の柔らかい唇がボクの唇に重なった。それを拒絶する理由はない、その口付けを受け入れていると。


「ソラぁ!言い忘れてたことがあったんだけど!・・・・・・あっ」


バァン!と、ものすごい勢いで扉が開き、そこには目を点にしているグリーンカラーのTシャツ姿のリズワンさんの姿が。


あれま、今日はことごとくタイミング悪すぎ。


「なんだ、やっぱりそういう関係なんじゃん。あ、みんなには内緒にしとくから!・・・・・・ごめんなさいっ!」


脱兎のごとく逃げようとするリズワンさんを音速を超えた勢いでとっ捕まえる藍さん、彼女をヘッドロックで確保し、部屋に連れ込み鍵を閉める。はっや、ボクじゃないと見逃してたね。


「何か見た?」


「見てません!」


「しばらく私とお話しましょう」


「ひぃ!!」


変に敬語になってる、見たことない藍さんの恐ろしい顔に敬語になるリズワンさん、ノックしない彼女がいけないのだけど、鍵をしてないボクたちも悪い、のか?まあ、別にボクの方は何も害がないので彼女がやりすぎないように優しく見守っていると、これを期に藍さんとリズワンさんがなぜが仲良しになってしまった。

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