人魚姫の旅立ち②
私が巣立たたねばならぬ理由の一つに呼吸の問題というものがありました。私は半分人魚だからでしょうか、他の人魚たちとは違い私は呼吸の為に度々地上に行かねばならず、そのことで仲間内から非難されることが多々ございました。
曰く、度々地上に赴くのは人間だからである、と。しかしそれには国王であるお爺さまの耳にも入ってしまい、一度は公の場で正式に反論してださったのですが、やはり他のものには地上に行くのを廃しておいて、私のみ特別扱いはできかねるということなのでしょう。現に、その扱いは人魚たちの不満を煽るもので、呼吸はカモフラージュで人間たちと通じている、母同様、人間と恋にうつつをぬかしている。私に関するさまざまな憶測が飛びました。
流石に 一応は王族の末席である私を表立って非難するものはおりませんでしたが、 私も15歳の成人を迎え、来年にはお姉様婚礼があるのです。わだかまりは少しでもなくしておきたいと言うのが本音だと思います。
私が故郷を追われることをお姉様は憤慨しておりましたが、私は地上での生活を少し楽しみにもしておりました。
お爺さまがお母様のことがあってから人魚たちが地上に赴くことをよしとしないとしたせいなのでしょうか。
年頃の娘たちは地上への憧れを募らせるばかりで、実はこっそり地上に赴くものも多いと聞きます。
私の母のせいで表立って地上に赴くことのできない年頃の娘たちは 意外にも私のことを嫌っているような様子は、ありませんでした。
むしろ、悲恋でもロマンスは憧れるものなのだそう。きっと私の母は初恋は叶わずとも次の恋を実らせたのではないかというのです。
私としても、そうであって欲しいと信じて地上に赴くのです。母の名誉を信じて。
それに私は半分人間なのです。地上という絶えず呼吸ができるというのは過ごしやすいことかもしれません。お爺さまは楽園からは程遠いとおっしゃったけれども。
「ところであなた様はどちら様なのでしょうか?」
「…それはこちらが是非ともお聞きしたい」
「私は、アクアマリン。アクアマリン=サンタマリアですわ」
「ああそう。ところで君、どうやって入ってきたの?僕が衛兵を呼ぶことに申し開きはあるかな?」
私が名乗ったというのに、名乗りもしないこのかたはなんだかとても不機嫌なご様子です。
「マリンと呼んでくださいな。ここへは水があるから来れたのです、私、水のあるところならどこへでもまいれますのよ。けれどこんなあったかい所初めてです。体がポカポカ致しますわね」
「水?ここがどこかわかっていないのか?普通の御夫人なら見知らぬ男と入るなどあってはならぬことだと思うが」
海では見たことのない、目の前にいる人の美しい黒髪は水が滴り、ツヤツヤと光っていて、それは美しいものでした。
「あら…?あなた男性なの?私、お爺さま以外の男性を見るのって初めて。お髭がないのね」
お爺さまは髪が長くてお髭もとっても長いから、他の男の人もそうなのだと思っていたけれど、この方は髪も長くなければお髭もない。お爺さまとは全然違うのね。お髭のない彼のなにもない頬を思わず撫でました。
「…おい、触るな、寄るな、いい加減離れろ!!」
「きゃ!」
お爺さまとあまりにも何もかもが違うからマジマジと観察してしまった事で怒らせてしまったのでしょうか。私は押しのけられてしまい、後ろに倒れ込んだ拍子に彼の顔にベシャ、と私の尾が直撃してしまいました。
「あらごめんなさい、お顔は大丈夫?」
彼は不機嫌だったのでこれ以上不機嫌にさせてはいけないと、咄嗟に謝ったものの、彼はよほど痛かったのか顔を抑え、もう片方のてで私の尾を掴むと私の顔を見て言いました。
「…お前、精霊か?」
「いいえ、違います。人魚ですわ」
「人魚?…ということはなにか?王子でも探しにきたのか?」
たしかに母の初恋相手である王子に伺えば母のこと、そして、父のことも伺うことが出来るかもしれません
そのためにはまず、王子さまを探さねばならないと思っておりました。
私、先立つものを宝飾品として身につけてはきたものの、人間として暮らしていくにあたって父を頼りにしたいと言うのが本音です。
だって、血の繋がった親子なんですもの。母とは愛があったのだとと出来れば本人の口から伺いたい…。
「そうですわ、私、王子さまにあおいしたい…」
いいえ、私は会わなければなりません 母の名誉のために