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Cafe Shelly

Cafe Shelly 父と子と

作者: 日向ひなた

「そうか、わかった。じゃぁヒロトと会えないのは残念だけど。来週は必ず頼むよ」

 そう言って電話を切る。相手は元嫁。私は子供用のランニングシューズの入った袋を胸にギュッと抱いて、それを棚の上に置いた。本当なら、今日息子のヒロトにプレゼントするはずだったものだ。

 今日は息子との月一回の面会日。けれど、元嫁の都合で面会が延期になることを今朝知らされた。もっと早く言ってくれよ、と怒鳴りたくなる衝動をなんとか堪えて、元嫁には静かに来週もう一度会う時間を作ってもらうことをお願いした。

 仕方ない、今日は一人で走りに行くか。私は趣味にしているランニングに出かけることにした。体でも動かしていないと、気が狂いそうになる。楽しみにしている月一回の日なのに。

 この生活が始まって、もうすぐ一年になろうとしている。息子のヒロトは小学三年生。ヒロトは私のことをとても慕ってくれる。男同士にしかわからない、強い絆があると私は思っている。

 が、離婚した時に、いくらヒロトが私についてきたいと思っていても、世間がそれを許さなかった。なぜなら、私は仕事ばかりの日々で、とても親権を取れる状態ではなかったから。このことで離婚調停も長引いた。

 そもそもどうして離婚することになったのか。これはありがちなパターンである。仕事が忙しくて家庭をなかなか省みることがなかった上に、自分が趣味にしているマラソンばかりに目を向けていたから。せめてもの償いにと、息子を小さい頃から私の趣味に付き合わせていたのも原因の一つである。妻だけ置いてけぼりになり、その結果「私がこの家にいる意味なんてないんでしょ」と言い出してしまい、離婚へと発展をしていった。

 これについては何も言えない。私は家のことは何一つ手伝うことなく、仕事か趣味にしか目を向けていなかったから。挙げ句、離婚を言い出されるのはほぼ当たり前と言っていい状況だった。

 一緒に住んでいたマンション、ここは一人では広すぎる。かといって職場にも近いし引っ越すのも面倒。いつか元妻と息子が帰ってきてくれるのではないか、そんな淡い期待を持ちつつ、一人でここに住んでいる。

 昔子供部屋にしていたところ、今は私のトレーニングルームとなっている。そこからランニンググッズを一式取り出し、出てきそうな涙を押さえながら運動公園まで走りに行くことにした。

 外はいい天気。冬だというのに風もなく割と暖かい。走るにはちょうどいい。

 運動公園までは走って二十分程度。いつもならそこで折り返して帰ってくるのだが、今日はやることがなくなったのでひたすら走ることにした。目標はハーフマラソンの距離、約20キロほど。

 運動公園には一周2キロほどの周回コースがある。ここを10周すればよい。あらためてスタートに立ち、呼吸を整えて腕時計のストップウォッチをセット。そしてスタート。

 走っている時は無心になれる。だからこの時間が好き。ひたすら自分との闘いになるため、精神力を鍛えることができる。だから私は息子にもそのことを早くから教えたかった。

 今日もそのつもりでこのコースを走るつもりだった。が、頭の中は悔しさでいっぱい。どうして息子と別れることになったのか、どうして私は一人なんだ、どうして元妻は私のことを理解してくれなかったのか、などなど。

 そもそもどうして元妻と結婚をしてしまったのだろうか。結婚前は私のマラソン出場を見にきてくれたり、トレーニングに自転車で付き合ってくれていたのに。結婚をしてからは全くといっていいほど私の趣味のマラソンには目を向けてくれなくなった。それどころか、いつまでマラソンを続けるのかということまで言い出す始末であった。

「えぇい、こんなことで迷っていてはダメだ。気持ちを切り替えていくぞ!」

 一周目の途中で迷いを断ち切るかのように、ダッシュをする。ちょっとオーバーペースなのはわかっている。けれど、どこかでギヤチェンジしないと、頭の中がいつものようになれない。

 とにかく一心に前を向いて、自分の進べき方向だけを見つめる。汗が流れ始める。心臓の鼓動も強くなってきている。息も荒い。まだ序盤なのにこれはヤバイ。そう思いつつも、一度入れたギヤを落とすことはできない。

 この時、後ろから私に近く気配を感じた。誰かが私を抜き去ろうとしている。

 私はマラソンは素人とはいえ、それなりに速い記録を持っている。その私を抜き去ろうというのは、相当の体力の持ち主だ。ここは負けるわけにはいかない。

 だが、その気配は私を抜こうというのではなく、私をペースメーカーとして利用しようという感じであることに気づいた。わずか後ろの方で私と同じペースで走っている。どんなヤツなのだ?

 気になって後ろを振り向こうかと思ったが、ここで振り向くとペースが乱れる。私のマラソンは常に自分のとの闘いである。他の人と競い合うつもりはない。が、やはり後ろの存在は気になる。

 ここからは我慢比べだ。私は後ろにいる見えない影にペースを乱されないように走った。だが、知らず知らずのうちにペースが上がっている。このままだととてもではないが20キロなんて走りきることができない。どこかでペースを落とさねば。

 だが、ペースを落とそうとすると後ろの影が私を抜き去ろうとする。それは気持ちの上では許されない。なんとかして後ろの影に先にギブアップしてもらわねば。

 こんな感じで気がつけばラスト一周。ここで私は賭けに出た。人差し指を突き出し、残り一周であることを後ろの影にアピールしてみた。そして最後の力を振り絞り、今までにないペースで走り始めた。そのペースに食らいつく後ろの影。抜かされるもんか。ここは男の意地がある。

 そして残り100メートル。後ろの影が私に近く。私はそれを察知し、もうダッシュをかけた。が、足が思ったように動いてくれない。この時始めて後ろの影が私に並んだ。私はその影をチラ見して、負けじと足を動かす。

 そして、ほぼ同時にゴール。

「はぁ、はぁ、はぁ」

 息を切らして、公園の芝生に転げ込んだ。そして時計を止める。数秒の計測ロスがあったとはいえ、今までにない大記録を出すことができた。

 同時にゴールに転がり込んだ人も、同じように芝生に転がっている。そこでようやく後ろの影の人物を拝見することができた。

「あ、あなたは…」

「はぁ、はぁ、こんにちは。毎朝お目にかかっています」

 なんと、その人は私が朝のランニングをするときに必ずすれ違う人。私より少し年上の、渋い中年男性である。

「いやぁ、まさかこんなにお速いとは。驚きです。あなたを公園で見かけて、一緒にジョギングを楽しもうかと思ったら、本格的に走るんだもん。私も意地になって追いつこうとしたら、気がついたら勝負になっていましたからね」

「いやいや、お恥ずかしい。私の方こそ勝手に勝負を仕掛けられたと思って意地になってしまいましたよ。それにしても、私に追いつくなんてすごいですね。私、市民ランナーとしてずっとトレーニングをしているんです。フルマラソンも3時間で走りますから」

 つい自分の記録を自慢したくなった。素人でフルマラソン3時間はかなり速い方である。

「それはすごい。私はハーフマラソンが限度です。といっても、大会とかには出場したことはないんですが」

「どうしてですか?それだけの脚をお持ちなのに」

「仕事柄、年に三回くらいしか休まないもので」

「えっ、じゃぁいつも働いているのですか?何をされているんです?」

 驚いた。まさか年に三日しか休まないような人がいるだなんて。

「私、喫茶店をやっているんです。まぁ半分は趣味みたいなものですから。毎朝のジョギングは健康のためにやってまして。だから年中趣味で暮らしているようなものですよ」

 世の中には変わった人もいるものだ。この人の喫茶店にぜひ足を運んでみたいものだ。

「せっかくのご縁ですから、ぜひお店に行かせてください。どのあたりにあるのですか?」

「あ、財布に案内が入っていますから。ちょっと待っててくださいね」

 そう言って彼は私に名刺サイズのお店の案内を渡してくれた。

「カフェ・シェリーですか。あ、この場所ならわかります。ほぼ年中無休ってのがいいですね」

「ははは、まぁ私の気まぐれで休みの日を設定しています。もしこのあとご予定がなければ、ぜひいらしてください」

「えっ、今日は休みじゃないんですか?」

「まぁ家にいても本を読むくらいしかしませんから。どうせならあなたのような方と語り合うのもいいかなと思って」

 これはラッキーだ。本当ならヒロトと過ごすはずの一日だったが、その予定もなくなってしまったからな。

「では、家でシャワーを浴びてから伺います。一時間後くらいでいいですか?」

「はい、ではお待ちしています」

 私は一旦帰路についた。

 一時間後だとちょうどお昼くらいだ。喫茶店なら食べ物もあるかな。あ、でも今日は元々休みの日だから仕込みとかしていないんじゃないかな。それを聞いておけばよかった。

 シャワーを浴びて着替えて、それから車で出かければちょうどいい時間になる。それにしても、あれだけ必死になって走ったのに思ったより疲労感がない。今まで一人でハーフマラソンの距離を走った後は、疲れ果ててしまっていたのに。気持ちが高揚しているせいかな?

 そんなことを思いながら、お店に到着した。お店のある通りは休日のせいか人で賑わっている。いつかヒロトと買い物にも出かけてみたいものだ。そう思いつつお店のあるビルの二階へと上がっていった。

 お店の扉には「Close」の札が下がっていたが、彼がいると信じて扉を開く。

カラン・コロン・カラン

 心地よいカウベルの音が鳴り響く。

「ようこそ、いらっしゃませ」

 さっきまで一緒に走っていた彼がお店のカウンターの中で私を出迎えてくれた。これが実にしっくりとくる。ここが本来の彼の居場所なんだな。

「わざわざお店を開けていただいてすいません」

「いえいえ、さぁ、こちらにどうぞ」

 彼は私をカウンター席、つまり彼の目の前に案内してくれた。

「お店は一人でやっているのですか?」

「いえ、妻と二人で。妻は今日は実家に戻っているので一人ではありますが。あ、お昼ご飯はまだですよね?」

「えぇ」

「うちは純喫茶なもので、こんなものしかご用意できませんが」

 そう言って彼はホットサンドを出してくれた。これはありがたい。

「今からコーヒーを淹れますので、しばらくお待ちください」

 すると、彼は手際良くコーヒーの準備を始めた。私は黙ってそれを見つめる。私もコーヒーは飲むが、やはりプロは違う。一つひとつの動作が様になっている。

「どうぞ。このコーヒーには魔法がかかっているんです」

 そう言って淹れてくれたコーヒーを私に差し出す。

「魔法?」

「はい。このオリジナルブレンド、シェリー・ブレンドは飲んだ人が今欲しいと思っているものの味がします」

「欲しいと思っているものの味?」

 言っている意味がよくわからない。コーヒーはコーヒーだろう。そう思ったのだが、どんなものなのか興味も湧いてくる。

「何はともあれ、コーヒーを一口お召し上がりください」

 ともかく、騙されたと思って飲んでみるか。早速差し出されたコーヒーを手に取り口に近づける。

 んっ、いい香りだ。私はコーヒー通ではないが、このコーヒーは普通ではないというのがわかる。これは期待できるぞ。

 そしていよいよ、コーヒーを口に含む。なかなかパンチの効いた味だな。これぞコーヒーという感じ。まさに男の味というところだ。そう、男らしさを感じるんだ。この男らしさを、私の息子のヒロトにも知ってもらいたい。だから面会の時にはマラソンを通じて、この男らしさを伝えている。そして、ヒロトには強い男になってもらいたい。

 別れたとはいえ、元妻を支えてもらえる息子になって欲しい。それが私の、元妻への最大限の償いである。ヒロト自身が強い男になるとともに、元妻を私の代わりに守れる、そんな男に育って欲しい。それが私の願いだ。そんな思いが頭の中で駆け巡っていた。

「お味はいかがでしたか?」

 その言葉でハッと我に返った。そうだった、ここは喫茶店だった。ほんの少しだけ、意識がトリップしていた感じがしたな。

「いやいや、なんだか力強い、男らしいって感じの味がしました。これ、濃いめの味がするんですね」

「なるほど、男らしい味か」

 カウンターで私の話を聴いていた彼は「男らしい味」というところに興味を持ったようだ。でも、どういうことだ?そもそもこのコーヒーはそういう味ではないのか?

「ということは、あなたは今、男らしさを求めているということなのですか?」

「いえ、私ではなく私の息子に男らしさを身に付けてもらいたいのです」

「息子さんに?」

「はい。実は私、離婚をしてしまいまして。息子は元妻が引き取っています。月に一度は面会をさせてもらっているのですが、本当なら今日がその日だったんです」

「本当なら、ということはそれが叶わなかったと?」

「えぇ、それを今朝告げられました。今日は息子に、ランニングシューズをプレゼントするはずだったのですが」

「息子さんにもマラソンをして欲しいと思っているんですね」

「はい。マラソンを通じて精神力を鍛えることを教えたかったんです。そして、父として男らしさも息子に教えたかった。そして元妻を守って欲しい。そのことをこのコーヒーを飲んだ時に気づかされましたよ」

「なるほど、それで男らしい味という表現になったのですね。それが今あなたが欲しがっていることなんですね」

 確かに、言われた通り今私が欲しいものである。

「ひょっとしたら、このコーヒーって本当に今その人が望んでいるものを味として感じさせてくれるのですか?」

「はい。それがシェリー・ブレンドの魔法です。人によっては、欲しいものをイメージで描かせてくれることもあります」

 私の場合、それに近いものを感じた。力強い味から、力強い男のイメージが頭の中で浮かび、そこからヒロトに対して伝えたいことの思いがどんどん湧いてきた。

「でも、その力強さを息子に伝えたくても。今日のような状況が続くのであれば上手く伝えることができません。月に一度の面会もいつまで続けられるのか。子供を取られるって、思ったよりも辛いものなんですね」

 コーヒーカップを両手で包み込み、その温かさを感じながらそう言葉にした。この辛さ、人に話したのは初めてだ。

「よかったらもう少し詳しく教えていただけませんか。そもそもどうして奥さまと別れることになったのか」

「はい。私はずっと仕事人間でした。家族のためと思って、とにかくお金を稼がないと。そう思って必死に働いてきたんです。そして休みの日になると、自分の趣味であるマラソンに没頭しました。これは仕事のストレスから解放されるために始めたものだったんです」

 私は別れる前の家庭の状況を思い出しながら彼に語った。

「実は、その頃から元妻とはあまり関係が良くなかったんです。あんなに好きで結婚したのに、なんだかその存在が疎ましく感じ初めて。マラソンも自由にさせてもらえない、そんなこともストレスになっていました」

「自由にさせてもらえなかったんですか?」

「まぁ、今考えると私のワガママではあったのですが。地域だけでなく、遠くの大きな大会にのエントリーしていたせいで、最低でも一ヶ月に一度はどこかのマラソン大会に出ていました。だから、家族サービスなんてできていなかったんです。元妻はそれが不満で。最初の頃は応援に来てくれていたのですが、息子ができてからはそれもなくなりました」

「そうなんですね。それが離婚の直接の原因なんですか?」

「ははは、実はそれだけならまだなんとか関係性が修復できたのでしょうが。まぁこんな夫ですから。元妻も私へのストレスを発散したくなったのでしょう。私が仕事やマラソンで家にいない間に、どうやら浮気をしていたようで。けれど、それはどうでもいいんです。私の夫としての甲斐性がなかっただけですから」

「じゃぁ、それで離婚を切り出したのですか?」

「私は再構築を願ったのですが。けれど、向こうのほうから離婚してくれと言われまして。おかげでなんだかんだと調停で揉めましてね。私としては親権は仕方ないとしても、息子には自由に会わせて欲しい。それを願ったのですが、結局月一回の面会で落ち着きました。こういう場合はどうしても母親側の方の意見が通っちゃうんですね」

 今更ではあるが、やはり私が息子のヒロトをみたかった。けれど、仕事もあるし昼間面倒を見てくれるような人もいないし。それは叶わぬ想いであることは十分承知している。

「離婚の理由はどうあれ、あなたが息子さんに対して強い思いを抱いているのはよく伝わりました」

「ありがとうございます。私は今でも再構築を願っています。あんな元妻ですが、やはり愛した人ですから。だから、せめて息子には元妻を守って欲しい。そのための男らしさを身に付けて欲しい。そう願っているんです」

「その気持ちはとても素晴らしいと思います。あ、ホットサンドすっかり冷めちゃいましたね」

「はははっ、話するのに夢中になってしまいました。せっかくなのでいただきます」

 冷めたとはいえ、ホットサンドはとても美味しい。かなりお腹も空いていたからな。

「ところであなたは結婚はされているのですか?」

 唐突ではあるが、ホットサンドを食べながらカウンターの向こうにいる彼に聞いてみた。

「はい、妻と一緒にこのお店をやっています。見ての通り小さな喫茶店ですから、二人もいれば十分まかなえますから」

「じゃぁ、いつも奥さんと一緒なんですね。私とは正反対だ。うらやましいな」

「いえいえ、いつも一緒だと逆に難しいところもありますよ。小さな口論は絶えませんから。特にうちの場合、妻がまだ若いもので。考え方や価値観の違いは常に感じています」

「へぇ、若いってどのくらいなんですか?」

「実は年の差が二十歳ほどありまして。まだ二十代なんですよ」

「えっ!?それは驚きですね。じゃぁ、話が合わないことが多いんじゃないですか?私も会社で若い女性社員と話をしますけど、なんか話を合わせるのが難しくて」

「そうなんですよ。だからといって、それをそのままにしておくと一緒には暮らせませんからね。その都度きちんと話し合って、お互いの考え方を合わせるように努力はしていますよ。でも、私の健康オタクだけは理解してもらえないようで。妻はどちらかというとぐうたらですからね。今日もゆっくり寝てるはずです」

「でも、奥さんとはうまくいっているんでしょう?どうすればそうなれるんですか?」

 これは素朴な疑問だ。性格が正反対な上に、年齢差まであるわけだから。

「同じ志があるから、かな」

「同じ志?どんな志なんですか?」

「それは、このお店を通じて人の笑顔をつくり出すというものです。私はシェリー・ブレンドを通して。妻は自分の焼いたクッキーを通して。このお店に来た人をどうやって笑顔にしていくのかを常に考えています」

 なるほど、それで納得できた。この人と話をしていると、なんだか気持ちが軽くなる感じがしていた。それはこの人が常に笑顔で接してくれているから。だから私も次第に笑顔になれるんだ。

「我が家には同じ志というのがなかった。私は私、妻は妻、そんな感じで生きてきたから、こうなっちゃったんですね」

「おそらく、多くのご家庭がそうじゃないかと思います。けれど、お子さんがいらっしゃれば、お子さんを通じて志を一つにすることができる場合も多いんじゃないでしょうか。子どもをどのように育てたいか、これが同じ志になっていく場合も多いですよね」

 そう言われるとそうだな。けれど、そこを十分に元妻と話し合わなかったことが私の問題点なのだ。

「私は子どもを強い子に育てたい。けれど、妻はどうだったんだろう。そしてヒロトはどう思っているんだろう…」

「それを確かめることも必要ではないでしょうか。ひょっとしたら元奥様は、あなたが考えている方向とは違うように育てたいのかもしれない。可哀想なのはその間にいるお子さんですよ」

「そうですね。父親の一方的な思いで育てるのは危険かもしれませんね。でも、どうやってそれを確かめればいいのか…」

「その答えを、シェリー・ブレンドに聞いてみるといいですよ」

「えっ、このコーヒーに?」

「はい、シェリー・ブレンドは飲んだ人が今欲しがっているものを味として伝えてくれます。もうその答えはあなたの中にありますから。それに気づかせてくれるのか、このシェリー・ブレンドの魔法なんです」

 私は少し覚めてしまったコーヒーカップを、再び両手で包み込んだ。このコーヒーが私を救ってくれるかもしれない。その期待を込めて、両手で包み込んだままコーヒーを口元へと運んだ。

 さっきよりも冷めてしまったコーヒー。だが、先ほどの男らしい味わいよりも、さらに深いコクが感じられる。深み、か。もっと相手の心の奥の、深いところを知らないと話は進まないな。

 そもそも私は、元妻の気持ちをわかってあげようとしていただろうか。そして息子のヒロトの気持ち、これを汲み取ってあげようとしているだろうか。

 力強い男に育ってほしい。これは父親のエゴかもしれない。自分の思いを押し付けるのではなく、相手の言葉をしっかりと聴く。今度ヒロトと面会をしたときには、これをやらないといけないな。

「今度はいかがでしたか?」

 その言葉で我に返った。

「はい、おかげさまで自分に足りないところに気づきました。私は今まで一方的に父親としての思いを押し付けすぎていました。もっと奥の深い思い、これをしっかり聴くことをしないといけない。今度息子と面会をしたときに、それをやろうと思います」

「本当に今度でいいのですか?」

「えっ、どういうことですか?」

「その、今度というときがいつ来るのか。確実に来るのか。ひょっとしたら永遠に来ないかもしれませんよ」

「そ、そんな。脅さないでくださいよ」

「いえ、実はこれは脅しじゃないんです。私の知っている人にあなたと似たような境遇の方がいまして。毎月お子さんと面会をするはずだったのが、相手の都合で延び延びにされてしまい、ついには連絡すら来なくなってしまったんです」

「その方は今、どうなっているんですか?お子さんとは会えていないのですか?」

「はい、残念ながら。どうやら向こう側になんらかの出来事があったのでしょう。元奥さんの実家に連絡をしてもつながらない状況だということです。結局何があったか分からずじまいで」

 そ、そんな。もしヒロトにそんな事が起きたら。私は後悔しかできなくなるかもしれない。そんなのは嫌だ。

「でも、こちらから連絡をするのは…」

「調停で禁じられているのですか?」

「そういうわけではないのですが。なんだか気が引けてしまって。でも、行動を起こさないと何も始まりませんよね」

「そう思います」

 善は急げ。私はスマホを取り出し、元妻に電話をかけようとした。その時、信じられないことが起きた。

「電話だ。あいつからだ…」

 なんと、元妻の名前がそこに表示されている。電話は呼び出し音を鳴らしている。カウンターにいる彼を見る。彼は黙ってうなずく。意を決して電話に出る。

「もしもし」

「あ、私。今日は突然ごめんなさい。今ちょっといいかしら?」

「なんだい?」

「実はヒロトがどうしてもあなたに会いたいってごねてるの。それで暴れだしちゃって、手に負えなくなったのよ。助けてくれる?」

 ヒロトが私に会いたいと言ってくれている。その言葉だけで胸が熱くなった。

「わかった、どこに行けばいいんだ?」

「場所は…」

 元妻が指定してきたのは、とあるホテルのロビー。そこは一流ホテルと言われているところ。どうしてそんなところに、という疑問はあるがとりあえずその場所に急いで移動することにした。

「今日はありがとうございます。おかげで私のやるべきことが見えてきました」

「いえ、こちらこそ。ぜひまたいらしてください。今日のこれからのことも気になりますし」

「はい、ぜひ寄らせていただきます」

 彼にお礼を言って、私はホテルへと急いだ。ここからタクシーで行けば10分とかからないところだ。タクシーの中で私はソワソワしはじめた。まず、ヒロトがどうして私に会いたいとごねたのか。元妻は何をしようとしていたのか。気になることがたくさんある。それをどのようにして聞き出すといいのか。

 ホテルについてロビーに足を踏み入れたその時、

「パパーっ!」

 一心に私に駆け寄ってくるヒロトの姿が目に入った。私は腰を下ろして、ヒロトを迎え入れた。

「ヒロトっ!」

 私の胸に飛び込んでくるヒロト。そのヒロトをギュッと抱きしめる。強く、とても強く。

「ヒロト、どうしたんだ?なにかあったのか?」

「あのね、あのね、パパに会いたかったの。パパと一緒がいいの」

 健気にそんなことを言ってくれるヒロト。やはりヒロトを手放したくない。でも、一体何があったんだ?

 すると、遅れて元妻が私の方へとやってきた。

「あなた、わざわざすいません」

「おい、一体何があったんだ?どうしてこんなところにいるんだ?」

「どうしてって…」

 ちょっと言いづらそうな感じである。が、それについてはヒロトが教えてくれた。

「あのね、ママ、新しいパパに会いに来たんだよ。でも、ボクにとってパパはパパしかいないんだ。あんな人、パパじゃない」

 なるほど、元妻は再婚をしようとしているのか。それでその人とヒロトを会わせるために、今日はこのホテルにやってきたということか。

「お前、結婚するのか?」

「そうしようと思っていたの。だからヒロトをあの人に会わせるために。でも、ヒロトがどうしてもあの人になつかなくて。あなたじゃなきゃ嫌だって、そう言い出して」

 うれしいことではある。が、正直なところ複雑な気持ちでもある。できることなら再構築したいと思っている。しかし、元妻には幸せな人生を送ってほしいという気持ちもある。

「ヒロト、どうしてパパじゃないとダメなんだ?新しいパパはイヤなのか?」

「だって、ボクにとってパパはパパだけだもん。他にパパなんていらない。ボク、パパと一緒にいたい」

 これはヒロトの本音なのは間違いない。けれど、私にヒロトを育てる権利はない。実際にヒロトを迎え入れても、仕事ばかりでそれどころじゃないのも事実だし。

「ヒロト、わがまま言うんじゃありません。あなたからも何か言ってあげて下さい」

 自分の幸せのためにヒロトの思いを犠牲にするのか。元妻は自分のことしか考えていない。そう感じた。

 そこで、思い切ってこんな提案をしてみた。

「君が再婚しようとしている相手。その人に会わせてくれないか」

「えっ、どうしてよ?あなたには関係のないことでしょ」

「確かに、君とその人の間に対することは関係ない。しかし、ヒロトとその人となると話しは別だ。本当にその人にヒロトを育ててくれる意思があるのか。それを自分の目で確かめたいんだ」

「そんなこと言われても…もし、あなたがダメだって判断したら、私はどうなるのよ?再婚できないってこと?」

「君の再婚を邪魔するつもりはない。その時はそのときで考えよう。とにかく会わせてくれないか?」

 私の勢いに負けたのか、元妻は電話をし始めた。当然、相手は再婚しようとする相手だろう。その間、私はヒロトと一緒にソファに座り、話を始めた。

「ヒロト、お前は将来どんな大人になりたいと思っているかな?」

「ボク、パパみたいな大人になりたい。マラソンが早くて、お仕事もできて、そしてやさしくて」

 なんだか泣けてくる。こんな私でも憧れてくれるのか。今までの人生、ヒロトと向き合う時間というのはそんなには多くなかった。その時間の中で私の良い面しか見えていないんだろう。私もヒロトの前では、良い父親しか演じていなかったからな。

「いいか、ヒロトには大きな役目があるんだ」

「どんな?」

「それはね、ママを守ってもらうという役目だ。残念ながらそれはもうパパにはできない。だから、パパの代わりになってママを守って欲しい。わかるか?」

 だが、その言葉でヒロトは下を向いてしまった。

「どうした?」

「だって、ママはボクのこといらないって」

「えっ!?」

 その言葉には驚いた。ひょっとしてあいつ、そんなことをヒロトに言ったのか?

「そんなことはないだろう。ママがそんなこと言ったのか?」

 黙り込むヒロト。一体なにがあったんだ?とても気になる。

「あなた、あの人が会ってくれるって。もうそこにいるわ」

 元妻がロビーの奥に坐っている人物を指差す。

「やけに早かったな」

「本当ならこの後、彼とヒロトと一緒に食事をする予定だったから。でも、まさかこんなにヒロトが反抗をするだなんて」

 彼女に確認をしなければいけない。本当にヒロトをいらないと言ったのかを。けれど、ストレートに聞けるものではない。どうやって探りを入れようか。

 ともあれ、例の彼に会って、ヒロトのことを確認せねば。元妻の誘導で、彼氏を紹介してもらう。

「こちらが元旦那。そしてこちらが今お付き合いしている方」

 今の彼を見てみる。見た感じは誠実そうである。だが、笑顔がない。ふとあの喫茶店の彼のことを思い出した。あの彼は笑顔が素敵だったな。あんな人だったらヒロトをまかせられるのだが。目の前の彼は、緊張からなのか、それとももともとの性格なのか、なんだか明るさを感じられない。

「単刀直入にお聞きします。あなたは彼女と結婚をしたら、ヒロトを自分の息子として育てていくだけの自信がおありですか?」

 少し間をおいて、彼はこう答えた。

「ヒロトくん、私になついてくれないんですよ。ヒロトくんはどうしてあなたがいいって」

 相手のその言葉に、私の怒りが高まった。

「それはどういうことですか?つまりヒロトがあなたになつかなければ、ヒロトはいらないということなのですか?」

 つい感情をむき出しにして、相手にそう詰め寄ってしまった。

「そうは言っていないでしょう。私だってヒロトくんのことを自分の子供のように思いたいですよ。でもね、ヒロトくんが心をひらいてくれなければ、私にはどうしようもないでしょう?」

 どうしようもないだと?それがこれから親子として暮らそうとする人の言い方なのか?

「あなたは人の親になったことがないのでしょう?」

「えぇ、まぁ。これまで独り身でしたから」

「わかりました。あなたのような人にヒロトを預けることはできません。ヒロト、パパと暮らすか?」

 ヒロトの方を向いてそう伝えると、ヒロトは満面の笑みを浮かべて私に駆け寄ってくれた。

「パパと暮らせるの?だったらボク、パパのほうがいい!」

「ちょ、ちょっと待ってよ。親権は私にあるのよ。あなたは仕事が忙しくてヒロトと暮らすなんてできないでしょ?」

「ヒロトと暮らせるのなら、今の仕事を辞めてもいい。今の世の中、働こうと思えばなんとでもなるだろう」

「ちょっと、それ本気?」

 元妻は慌てて私に言い寄る。

「お前もこの人と結婚をするのなら、ヒロトがじゃまになるんじゃないのか?」

「そ、そんなことはないわよ」

 今ひとつ歯切れの悪い返事。しかも、目線は私ではなく彼氏の方を向いている。どうやらヒロトが言ったことは本当のことのようだ。

「私はそうしていただけたほうが助かります。これから彼女と一緒に新しい生活を送るのに、あなたの影がちらつくのが私には苦痛なんです。この先、定期的にヒロトくんをあなたに会わせるとなると、どうしてもあなたのことが話になってしまう。私にはそれが嫌なんです」

 それがこいつの本音か。なおさらヒロトと一緒に暮らさせることはできない。

「これで決定だな。悪いが親権は取り戻す。そのためにヒロトをきちんと見守っていける環境を整える。これは本気だ。明日にでも会社に相談をして、部署を移動させてもらう手続きをする」

 これはとっさに考えたことではない。以前、元妻と親権のことで調停で揉めた時に一度会社に掛け合ったことがあった。結果的に親権を持っていかれたため、前からの仕事をそのままにしておいただけだ。

「私からヒロトを奪うっていうの?」

「じゃぁ、お前にとってヒロトとはなんなんだ?」

「ヒロトは私がお腹を痛めて産んだ子よ」

「それだけか?」

「それだけって…じゃぁ、あなたにとってヒロトはなんなの?」

 そうくると思った。その質問、調停の時に私が調停員にしっかりと伝えている。だが、元妻には伝わっていなかったようだ。だから今、はっきりと伝える。

「私にとってヒロトとは生きがいだ。ヒロトを立派に育て上げ、一人前の男としてどんな人に対しても恥ずかしくない、そして世の中のお役に立てるような人間として、さらにこの先ヒロトに愛する人ができたときには、その人に対しても愛を注げるような、そんな大人に育てること。それが私のこれからの生きがいであり、やるべきことだ」

 このとき思い出した。カフェ・シェリーで飲んだあのコーヒー、シェリー・ブレンドを最初の味を。これこそが本当の男らしさであり、私が失敗をしたところなのだ。私には真の男らしさが身についていなかった。その失敗を繰り返さないためにも、ヒロトにはきちんとした男らしさを身につけてもらいたい。それが私の願望だ。

「おい、こいつに何を言っても無駄みたいだ。子供をこいつにくれてやればお前と結婚できるんだろう。もうそうしろよ」

 元妻の彼氏がそう言い放った。

「あなたには親としての気持ちがわからないの!?」

 今度は元妻が彼氏に言い寄った。

「なんだよ、お前は俺と結婚したくないのか?」

 やはり、こいつの本音はこれだったか。狙いは元妻であり、ヒロトのことはどうでもいいということか。こうなったら元妻とこいつを結婚させるわけにはいかない。このままだと元妻も不幸になってしまう。

「待てっ、ここで騒ぎ立てるのもなんだから落ち着け。そちらのことはヒロト抜きでゆっくりと考えてくれないか。ヒロトの前でそんな二人を見せるのもちょっと」

「お前には関係ない話だろう。元旦那だからといって、口出しをするなっ!」

「あぁ、たしかに関係のない話だ。夫婦ではないのだからな。けれど、ヒロトの父親ではある。だから、ヒロトのためにもゆっくりと考えてほしい。ともかく、今日は一旦解散したほうがいいんじゃないか。お互いに頭を冷やして考え直してみるといい」

「わかった、私はそうするわ。あなた、悪いけど今日はヒロトをあなたに預けていいかしら?ちょっと一人で考えてみたいの」

「わかった」

 この会話の最中、ヒロトはずっと私に抱きついたままだった。子供としても、母親のあんな姿を見たくなかったのだろう。

 この日はヒロトを預かることになった。幸い明日は休日なので、一泊しても問題ない。私はヒロトにプレゼントするはずだったランニングシューズをあらためて渡した。この時のヒロトの目の輝きは、私の心を和ませるには十分すぎるものだった。

 そしてヒロトと一緒にお風呂に入り、ここで父親として伝えたいこと、強い男になってほしいということを話した。

「この先、パパとママはどうなるのかはわからない。パパはヒロトと暮らしていきたい。けれど、結局はママとあの人と暮らすことになるかもしれない。その時はパパの代わりにヒロトがママを守って欲しい。わかったか」

 だが、ヒロトは納得していない。

「どうしてパパと暮らすことはできないの?ボク、あの人イヤだ。ぜんぜんボクのことを見てくれていないもん」

 やはりそうか。あの彼氏の目的は元妻であって、ヒロトと一緒に暮らすことはあまり考えていないようだ。そうなると虐待に発展しかねない。やはりヒロトは私が育てていく方がいいのか。

 ヒロトを寝かしつけた時、元妻からLINEが届いていた。

「明日、そっちに行ってもいいかな?あなたと話したいことがあるの」

 話したいこと、ヒロトのことなのは間違いない。

「わかった、待ってる」

 私は元妻の提案を受け入れた。そして次の日、思ったより早い時間に元妻がやってきた。

「早速だけど、私が出した結論を聞いてくれるかな?ヒロトも一緒に聞いてね」

 元妻が持ってきたケーキをヒロトも一緒に食べながら、話が始まった。

「あのね、私、あの人との結婚はやめようと思う。昨日あなたに会うまでは、どうにかしてあの人と結婚したいと思っていたの。でもね、昨日のあの人の態度、そして私にとってのヒロトの存在をあらためて考えてみたら、やっぱり私にとってもヒロトは必要なの。あなたが生きがいだって言ったのと同じくらい、私にとってもヒロトは生きがいなの」

 そうか、そういう気持ちになってくれたか。もしかしたらヒロトをないがしろにしてあの彼と結婚をするのではないかと思っていたが。それは杞憂に終わったな。

「そしてもう一つ気づいたの。あなたがヒロトに対して注いでいる愛情。あなたと離婚をした時、私はそう思っていなかった。仕事第一で家庭のことなんか見向きもしない人だとばかり思ってた。でも違ったのね」

「あぁ、家庭を大事にしたいからこそ、仕事を一生懸命やってた。でもそれが間違いだってことに気づいたんだ」

「だから私、あなたにお願いがあるの。もう一度やり直さない?」

 まさか、元妻の方からその提案があるとは驚いた。これは願ってもないことだ。

「それはすごくうれしいことだよ。ヒロトのためにもそうしたい。もちろん、君のためにも」

「でも、前のような生活はしたくないの。あなたもヒロトのために、私のために努力してくれない?」

「それは考えている。部署異動の願いも出そうと思うし、それが無理なら転職も考えている」

 そう言うと、彼女は安心した表情を浮かべた。

「ねぇ、パパとママ、仲直りしたの?」

 ヒロトは二人の顔を覗き込みながらそんな質問をしてきた。

「そうだよ。これでまた一緒に暮らせるぞ。ヒロトのためにもパパ頑張るからな。前よりももっと一緒に、たくさんマラソンができるぞ」

「やったー!じゃぁ、これから一緒に走りに行こうよ。ママも一緒に」

「えぇっ、ママは走る準備してきてないよ」

「まだ君のランニングシューズとジャージ、ちゃんととってあるよ」

「じゃぁ決まりだね。行こう!」

 ヒロトの強引な誘いで、いつもの公園にみんなで走りに行くことになった。親子三人でマラソン、これが私の思い描いていた理想の姿。これが今私が欲しい味なんだな。


<父と子と 完>

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